開催時間 |
11時00分 - 19時00分
※6日は18:00レセプションよりオープン |
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休み |
月曜
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入場料 |
無料 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
ARTFRONT GALLERY
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒150-0033 東京都
渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラス A 棟 |
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最寄り駅 | 代官山 |
電話番号 | 03-3476-4869 |
この度アートフロントギャラリーでは、椛田ちひろの個展を開催致します。
表情豊かな線の絡み合ったボールペンで描かれた線の作品で知られる椛田ですが、展覧会の度にこれまでも鏡、水など新たな素材を支持体に取り込んだインスタレーションも発表してきました。2015年の展示ではコイル状に大きな弧を描いて丸まった鉄板が空間一杯に置かれていたのを記憶されているかもしれません。弾かれたようなコイルと緻密に描かれた線が緊張感を作り出した展示でした。またこの展覧会では本来紙の上に置かれていた筈のものの影をなぞることで不在を辿る試みでした。
そこには見えない何かをどのように作品のうちに取り込んでゆくか、この2年間、椛田は展覧会活動を控えめにすることで、新たな可能性を探求してきたようです。今回、椛田は転がってゆきそうな巨大な球を支持体として選び、インスタレーションを試みます。同時にこの2年間、日記のように日々描き溜めてきたドローイングで展示空間を埋める予定です。見えない何処かにどのように移り変わってゆくか、その足跡を辿りながら、見知らぬ惑星をめがけて飛んでゆく作家の姿が見えてきます。
これまで椛田は、つかみどころのない自分のイメージを求めて真っ白な空間である紙の上にどこまでもどこまでも追い続けるような手数で空間を埋めていくことを中心に作品を展開してきました。
しかし、前回の渦巻き状のトタンの上に描いた巨大な作品で、どこまでも埋め尽くすという意味での創り方には一度休符が打たれた感があり、そこからは何か描かれた形の違いのみで本当の意味での椛田の作品が生まれにくい状況に至ってしまった様子でした。
そこで椛田は、これまで自分の感覚を頼りに自由に描いてきたボールペンの抽象的な形から離れ、これまでとは全く異なる方法にて描く試みを行ったように見えます。
作家は自らの自由度を限定するために、実在する形ある物の影を紙の上に写し取ることで、その出来上がりは依然として抽象的でありながらその絵の必然性を見つけようとしました。
Following shadowのシリーズは四方八方に伸びた物の影を追って作家がぐるぐる回りながら描いたもので、結果的に紙の上に現れた花弁のような影の姿が、まるで花をモチーフに描いた具象のように見える作品でした。
これまで数回のアートフロントの個展の中では、作家の作風として変化の少ない展示でありましたが、椛田にとっては塗りつぶすことで追い求めてきたものが、石が置かれ描けなかった空間自体を考えさせるという意味で大きな違いがあったようです。
これまでと同じように見知らぬ惑星には、まだ見ぬものを追い求めその存在を問う椛田の基本的な姿勢が見て取れます。
しかし、よく見るとその絵の中心に近い部分は円状に切り取られた白い部分があります。
過去の作品にもあった余白や前回のシリーズであらわれた描けなかった部分とは違い、この形は意図的に描かれなかったことが一目でわかります。
この絵の空白はこれまでの椛田自身がわかりえぬがあると信じているものを闇雲に追い続けることの結果として見えてくる存在とは違い
予め、在るという事、無いという事を考えながらその仮定を明示しようという意思の表れに見えるのです。
そのことは、ただ単にボールペンを走らせ無意識に創られる物とは違い、より思考され美しく立ち現れる空白の空間を際立たせています。
これにより、単なる平面だった作品を空間的な奥行きを感じるものへと変化させより見ごたえのあるものにしているようです。
また今回のタイトルにつけられた惑星のひとつにポアンカレという言葉が見て取れます。
これは、ポアンカレ予想という数学の定理のひとつからつけられた名前であり、椛田が追い求めているもの自体が宇宙のようにとらえどころのないものであることを示していると同時に、それを理解する糸口を仮定することで導き出そうという作家の心理が表れているのかもしれません。
レセプション 2017年10月6日(金)18:00 - 20:00