開催時間 |
12時00分 - 19時00分
土日11時00分 - 17時00分 |
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休み |
月曜日,火曜日
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入場料 |
無料 |
展覧会の撮影 |
可 |
子連れ |
可 |
この情報のお問合せ |
アートフロントギャラリー
03-3476-4869 |
情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒150-0033 東京都
渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラス A 棟 |
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最寄り駅 | 代官山 |
電話番号 | 03-3476-4869 |
この度アートフロントギャラリーでは、2年ぶりとなる大岩オスカールの個展、《大岩オスカール:My Ring》を開催いたします。
今回の新作では、以前描いた絵画に現れた風景、主に都市の風景をコラージュし、画面中心を流れる川によって展示空間が輪を描くように繋がっていきます。これまでも《隔離生活》のように様々な場所を舞台にした連作が生み出されてきましたが、近年特に「時間」がこれに加わり、一画面の中に異なった時間が存在する方向へと向かっています。
会期中、アートフロントギャラリーは台湾で開かれる《Taipei Dangdai》(5/12-14) に参加し、個展や台湾ランタンフェスティバルを通じて広く注目されているオスカールの活動が連動的にご覧いただけます。
ギャラリーでは河や光をテーマにした近作も展示予定です。人生の航路を思わせるオスカールの力作をぜひ、ご高覧ください。
川、あるいは時間と場所を超えたはなし
神谷幸江(美術評論)
「ひょっとすると、とアウステルリッツは語った。過去何百年、何千年にわたって、じつは時間には同時性がなかった、そうは言えないでしょうか? 時間がどこにもかしこにも延び拡がったのは、そう遠い昔のことではないのです。地域によっては今でも、時間よりも、天候のような計量不可能な次元を基準に生活を営んでいるところがあるのではありませんか。そうした次元は、線的な均一性とは無縁で、先へ先へと進みつづけるのではなく、渦巻き、澱み、堰を切り、たえずかたちを変えながら還り来て、またいずこかへ拡がっていくのです。」
『アウステルリッツ』W・G・ゼーバルト
大岩オスカールが日本を離れる前年、2001年に描いた一双の大作《戦争と平和》(東京都現代美術館蔵)がある。東京・北千住に暮らしていた大岩が、その一帯の戦前・戦中のたたずまいを昼と夜の風景にして描き出した。陽光差す穏やかな下町の昼景色は遠景に荒川を臨む。一方漆黒の闇に覆われた夜の街は空襲の火粉と煙に覆われ、大木の精霊にも見える憤怒の形相をした横顔が立ち現れる。翌年、9.11の破壊を目の当たりにしたニューヨークに移り住み、以来この街を拠点にしている。彼が毎日朝9時には制作を開始するスタジオは、イースト・リバーを渡ったマンハッタンの対岸にある。コロナ禍で移動が叶わなかった時期を除いて、このスタジオが大岩の記憶と空想を繋ぐあらゆる創作の拠点となっている。
今回の一連の新作は、異なる時期に異なる場所を描いたこれまでの自作から場面を抜き出し、組み合わせ、改め新たな絵画に再構成した。時間軸と空間がつぎはぎされた自作絵画のコラージュは、そのまん中に曲がりくねった漆黒の川が縦断する。ある時間から別の時間へ、こちらの場所から向こうへ。最寄りの地下鉄の入口が開いていると思えば、もうお目にかかれない懐かしいラーメン屋台がたたずむ。《Bathtub Man》(2008年)から引用した湯に浸かるロボットは、人工知能も湯煙を愉しむユーモア混じりの情緒でもあり、描かれた時には存在していなかったはずの汚染水タンクと燃料棒を納めたプールを想起させる。そう、《戦争と平和》で時代を遡り描かれた戦禍の煙が、その後別の街を襲った津波の有様を予見していたように。
科学・技術の発達が理想の社会へ導くとは真逆に戦争へ走り出すのを目の当たりにしたシュールレアリストたちが、空想や夢、超現実世界のイメージを手に、狂気の現世から逸脱する実験を試み、暗喩に満ちた批判の手段とした。大岩は曖昧な記憶、確かに綴られることのない歴史、新たに起こる体験や惨事、こうした行きつ戻りつする時間と場所を柔らかな色彩に包んで描くという行為によって、個人史と社会史が線的な流れの中に収まっていくことに抗う。自作のリステイジングは、異なる時間と場所の奏でる多声の調べとも不協和音ともなって、渦巻き、澱み、堰を切る。
作家によれば、様々な作品に何回も出てきているラーメン屋台は「昭和」のモチーフ、白い透明な花か雲かわからないモチーフは、アメリカに来て描き始めた「Light Flowers」このほかにもホテルシリーズや、ツリーハウスシリーズがあったり、いろんなものが混ざって自分の世界が出来ていく――いろんなボキャブラリーを使って世界を構築していくという感じです。自分の古い絵をみるとその時の試行錯誤を思い出します。当時いろいろ考えてテクニックを編み出しました。その軌跡が今回新たな作品になっています。
描いた油彩画を光と3Dの技術を使って模型にしようとする試み。「ローテク」のペインティングと最新型の3Dデジタルペインティングという、全然違う技法を使って、その二つの世界を一緒にしようと思いつき、光に透過させて鑑賞する作品になるという。単に立体的なレリーフにするのではなくて、絵画の明暗が3Dの物質的な厚みとリンクしており、作品の底には自分が普段使っている絵具ののったパレットを使って小さな模型にした。その真ん中に自分が立って自分の絵画世界をみつめているイメージで、多様なメディアへの挑戦の証といえます。
河のある風景
新作と一緒に展示されるのは、河のある風景の近作です。
ブラジルに生まれ、サンパウロ大学で建築を勉強したあと1990年代は東京で建築とアートと両方の道を目指しながら働いていたオスカール。ニューヨークに拠点を移したあとも、様々なプロジェクトに参加しながら日本―アメリカーブラジルを旅しながら制作を続けています。いわば旅するアーティストです。そんな作家にとって、河は海につながり、世界につながっているという点でいくつかの河を描いてきました。第二室では《Sumida River》(墨田川)が展示されます。
戦後1950年代にブラジルに移住した自分の父親の影響もあり、船をよく描いているというオスカール。2019年の上海都市芸術季(SUSAS)では上海都市の歴史を鑑み、ガラスでできた船に植物を載せたものが緑の波の上を進んでいくという大がかりなパブリックアートを発表しました。建築・都市計画など幅広い分野とまたがるような大規模なアートを手掛け、注目を浴びています。
最近の活動から
オスカールは瀬戸内国際芸術祭の初回2010年以来男木島で制作活動を行い、壁画やだまし絵風のインスタレーションを発表してきました。昨夏見晴らしのよい男木島の高台に、紙管の構造で知られる建築家・坂茂が家屋を建てそのガラス窓と襖に作品を展開。遠くの瀬戸内海を往来する船の姿を借景として、巨大なタコをはじめとする海の生物たちを描きました。
巨大なタコのモチーフは2016年のアートフロントでの個展に出品された《Giant Octopus 2》にも描かれています。(2019年金沢21世紀美術館での個展《光をめざす旅》にも出品)鮮やかな油彩だけでなく、部分的に洋金箔を使って水面のきらめきを表現しています。今回、この作品は今年5月のTaipei Dangdai に出品予定です。
最近では台湾での展示が注目されています。
2022年夏、屏東市シーサイドギャラリーで台湾で初めての個展《The Dream of a Sleeping World》を開催。「Sleeping Dreams」、「Darkness and Light」、「Isolation」の3つのエリアに分かれた大規模な360度ぐるりと囲まれる形で、マーカーペンを使って球体の内面に幻想的な白と黒の空間を描きだしました。
アーティストトーク
日程:2023年4月21日(金) / 時間:18時~(18時から19時ごろまで、アーティストトーク/その後20時まで作品鑑賞可能)/ 会場:アートフロントギャラリー / ご予約制 ※定員に達した為、受付を終了させて頂きました。