幼少の頃、喘息を患っていた私は、普通校に通うことが難しく、全寮制の特殊学校で小学校生活を送っていました。 (※普通校が「普通」とも、特殊学校が「特殊」とも思いませんが、ここでは説明のため便宜上、使っています) 病気や障害、家庭環境などの問題を抱えた子供たちとの寄宿舎生活は、私に「多様であること」が当然なのだと教えてくれました。 私は作品を作るにあたり、多様な要素が織りなす「豊かで美しい世界」を描きたいと常々考えています。 それは幼少期に得た経験が基になっており、中年期後期の現在でも、世界がそうであって欲しいと思い続けているからです。 様々な問題を抱える中で我々がポジティブな気持ちで前へ進めるのは、「それでも世界は美しい」と思えるからだと思うのです。 世界は限りなく多層であり、私たちが「認識している」ものはそのほんの一部に過ぎません。 動物や植物などの種の数だけ、それらが捉える世界は存在します。人間ですら、 思想・信条・環境・権益などにより、いくつもの世界が存在します。我々が存在する世界は、 それらすべてが折り重なった多層構造であり、決して自身が見えている世界だけではないはずです。 自身が見えていない階層も含めて、「それでも世界は美しい」と思いたいのです。
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