企画展「Timeless Code現代⇔江戸」

開催概要

会期
2027年01月30日 〜 2027年06月06日
会場
福田美術館 (京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16)
参加クリエイター
奈良美智 / 草間彌生 / 西村有 / 加藤泉 / 伊藤若冲 / 池大雅 / 円山應擧 / 長澤蘆雪 / 白隠慧鶴
ジャンル
アート
タグ
日本画、現代アート、立体

開催内容

江戸絵画の名作と現代作家による作品約70点が異色の競演

 2019年10月に開館した福田美術館では、これまで近世や近代の日本画を中心に、誰もがアートに親しめるような展覧会を企画してきました。一方で近年、日本人の現代アーティストの活動が世界で高く評価され、世界中に強い影響を与えてきました。先般、惜しまれつつこの世を去った草間彌生(1929-2026)をはじめ、奈良美智(1959-)らの足跡をたどる大規模な回顧展も国内外で増えています。

 そこで当館においても、近世から現代に至る日本美術の流れをたどり、その変遷の一端に触れる機会を創出するべく、2023年から日本人アーティストによる現代アートの蒐集を開始しました。2025年11月には、「現代アートコレクション第1弾」として、世界的に高い評価を受けているアーティストである奈良美智と加藤泉(1969-)の立体作品2作品を庭園内に設置しました。

 本展が焦点を当てるのは、「現代」と「江戸時代」、それぞれを代表する作家たちです。
会場では、時代の先駆者として世界を魅了し続けた草間彌生や、奈良美智、加藤泉ら海外でも活躍する現代アーティストの作品と、伊藤若冲(1716-1800)、池大雅(1723-1776)、円山応挙(1733-1795)ら江戸時代の巨匠の作品を比較できるように展示。時代や社会という枠組みを超えて共通する、創作に対する信念や表現方法を浮き彫りにします。

 さらに、夫婦で世界へと活躍の場を広げ、大きな注目を集めている西村有(1982-)と今井麗(1982-)の作品も紹介します。
現代アートと江戸絵画。およそ200年の時を超えて出会う作家たちが展示室で共鳴します。


[展示構成]
第1章 内なる象(かたち) 奈良美智⇔江戸
時空を超えて表される奈良美智と池大雅の精神世界

 第1章では、奈良美智が愛知県立芸術大学大学院に在学中だった27歳から40代前半の作品を中心に展示します。また、奈良美智の作品と江戸時代の画家・池大雅や長沢芦雪の作品と相対して見せる試みも見どころです。
 奈良美智《UKIYO》は、江戸時代の浮世絵を背景や借景にして少女などのキャラクターを描き加えた、1999年制作の代表的な版画・コピー作品です。本展では《UKIYO》シリーズから9点を展示します。また、2002年に制作されたアクリル画《真夜中のネコ型ロボット》(藤子プロ)は、美術館での展示機会が大変少ない、貴重な作品です。

 奈良美智が描く人物には特定のモデルがなく、「すべて自画像のようなもの」だと述べています。彼は学生時代の欧州旅行や1988から1999年のドイツ滞在を経て、言葉の通じない環境で自己の内面を深く見つめ直しました。一方、江戸時代の池大雅も、三度の富士登山や全国を遊歴した経験を持つ画家です。大雅にとっての旅は、「万巻の書を読み、万里の路を行く」という文人画の理念を日本で体現する、真摯な精神の研鑽でした。両者は国や時代こそ違えど、旅うを己の表現の拠って立つ場所だったと考えられます。
「キャンバスは鏡のようなもので、そこに写る自分をなぞっていく」と語る奈良の自画像。そして、実際の自然に触れた経験と高い学識から、独自の境地を完成させた大雅の山水図は、いずれも時空を超えて画面の上に立ち現れた、作家自身の精神そのものに他なりません。

第2章 草間彌生⇔伊藤若冲
緻密な表現と反復の美から見出す、草間彌生と若冲の命の輝き

 草間彌生と伊藤若冲の絵画は、細部への異常なまでのこだわりと、モチーフを繰り返し描く反復の技法において深く共鳴しています。1929年に生まれた草間彌生は、1940年代後半から制作活動をスタートさせました。「赤や緑や黄の水玉模様は、地球のマルでも、太陽のマルでも、月のマルでも、何でもいい。形式や意味づけはどうでもいいのである。人体に水玉模様を描くことによって、その人は自己を消滅し、宇宙の自然に帰る、というのが私の主張なのである。」(草間彌生『無限の網』作品社、2002年)と語る草間は、同じモチーフの連続によって画面を埋め尽くしました。彼女の描く無数の水玉や網目は、無限に増殖しながら、個の境界を消し去るゼロ空間を生み出しています。
第2章では、1950年代の初期作品から2010年代の作品まで、草間彌生の絵画作品5点を鳥や神獣を描いた若冲作品と対比させながら紹介します。(※出品作品・点数は変更される場合があります。)

 江戸時代に活躍した若冲もまた、庭の鶏を徹底的に観察し、その姿を繰り返し描き続けた絵師です。個々の羽毛は驚くほど緻密に描き込まれていながらも、鶏の姿全体として生き生きとした躍動感に満ちています。
 細部を極限まで突き詰める両者の姿勢は、単なる写実や装飾の域をはるかに超えるものです。二人が紡ぎ出す画面は、部分と全体の境界を溶かし、命の輝きを私たちに見せてくれます。

第3章 加藤泉⇔江戸
加藤泉の初公開作品にも注目。心の揺らぎを生み出す「カタチ」

 美術における「形」は、見る人の感情を理屈抜きに揺さぶる力を持っています。
加藤泉はどこかミステリアスな「人がた」の絵画を生み出してきました。その独自の造形を前にするとき、そこに広がるのは、言葉では捉えきれない世界です。観る者は、相反する「不気味さ」と「懐かしさ」が入り混じる、本能的な感情の揺らぎを体験することになるでしょう。

 第3章では、加藤泉の立体作品5点、本展で初公開予定の作品1点を含む平面作品10点を展示します。立体作品では、加藤がコロナ禍で制作を進めたヴィンテージのプラモデルと木彫などの「人がた」を合体させた立体作品シリーズ3点のほか、創業470周年を迎えた京友禅の老舗「千總」とコラボレーションして2024年に制作した着物《無題》などを紹介します。同作は、加藤によるスケッチをもとに、絞りや刺繍など京友禅で受け継がれてきた様々な技術を用いて制作された、タイムレスな魅力を感じさせる作品です。

 加藤泉の作品と共に展示するのは、江戸時代の禅僧で、日本臨済禅中興の祖とされる白隠慧鶴【はくいんえかく】(1685-1768)の作品です。白隠は、禅の教えを広めるために型破りでインパクトのある禅画や書を描き、民衆に教えを説きました。人間が抱える悩みや苦しみは、人によって全く異なります。見る人は自分の状況に当てはめて、自由なメッセージを受け取ることができるのです。
 両者が描く「カタチ」は、鑑賞者の精神へストレートに作用し、多様な心の揺らぎを生み出します。



第4章 響き合う二つの世界:西村有と今井麗
世界が注目する現代美術家の夫婦が織りなす、異なる二つの世界の共鳴

 第4章では、多摩美術大学の同級生であり、現在は夫婦として共に世界を舞台に活躍を続ける二人の現代美術家、西村有【にしむらゆう】(1982-)と今井麗【いまいうらら】(1982-)の作品を同時に展示します。

 日常の何気ない風景や人々の気配を、軽やかな筆致と重層的な色面で描き出す西村有。それに対し、食卓のトーストや果物、お気に入りのぬいぐるみなど、身近な静物たちを古典的な油彩技法と鮮烈な光の描写で捉える今井麗。表現手法や画風、選ぶモチーフは一見すると全く異なります。しかし、同じ時間を共有し、同じ時代を駆け抜けてきた二人の作品の間には、不思議な調和と、お互いへのリスペクトが満ちているようです。

 それぞれの歩みが交差し、響き合う二人の世界を紹介します。


前期:1月30日(土)~4月5日(月)
後期:4月6日(火)~6月6日(日)

企画展「Timeless Code現代⇔江戸」