「もったいなくて捨てられない。」という理由で溜め込んでしまったメモや落書きや本等の"紙"を紙漉きの技術を応用して、再生紙の塊を生み出している。長い時間をかけて幾層にも重ねると、有機的な曲線と無機質な質感が同居したふしぎな自然物の様に成る。またその塊を、屋外に持ち運びインスタレーションアートとして発表する事もある。朽ちていく物を残そうとする美学に強いインスピレーションを受けている為、退廃的な風合いのものが多い。もったいなくて捨てられない、ゴミなのか作品なのか、残せる場所か捨て場所を探して彷徨う。
幼い頃から、考えた事や落書きを「紙」に残す事で自身を理解しようと試みてきた。膨大な量に増え、保管しきれない程積み重なった。また、集めた「紙」は情報でしかなく、私の外郭でしかなかった。もっと自身の内面に向き合い、存在意義について思想を深める為に、集積した紙を全て、再生紙の層にしようと考えた。そうして時間の経過、制作の過程がそのまま表現されたような地層を思わせる物体を生み出した。その物体には偶発性と研ぎ澄まされた自己の感覚が表出していて、有機的な質感と無機質な退廃美が同居している存在となった。更に様々な場に持ち寄り、インスタレーションを用いて設置する事で「表現とは何か、作品とは何か」を問うている。「紙」を用いる事で人の手の温かみを残しつつも、メディアアートの時代におけるアナログ文化の化石として佇んでいる。
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