光を集め、色を放つ ―建築を彩る多田美波の造形―
会期: 2023-10-07 - 2024-03-26
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
造形
開催内容
INAXライブミュージアムでは、10月7日(土)~2024年3月26日(火)まで、企画展「光を集め、色を放つ ―建築を彩る多田美波の造形―」を開催します。
1960年代より頭角を現し、長く第一線で活躍した多田美波(1924-2014)。彫刻家として名を馳せた多田は、独立した立体造形のみならず、500もの作品をさまざまな建築空間につくりあげています。「帝国ホテル 東京」の色彩豊かな光壁、「リーガロイヤルホテル(大阪)」の光造形、「新宿住友ビル」の吹抜天井造形など、反射や透過といった「光」の性質を取り入れた独自の表現で空間を新たな次元へと導こうとしました。そのために、アルミニウム、ステンレス、アクリル、ガラスなど当時の新素材に技術を掛け合わせ、大胆に発想し、緻密に考え抜くことで、優美で二つとない世界を実現させていたのです。
生誕百年を2024年に控え、本展では、多田美波が多くのエネルギーを注いだ建築空間に関わる作品に焦点を当てます。数ある中から上記3作品を含む21作品について、作品写真のほか、今回初公開となるスケッチ、模型、色見本、素材サンプルなど制作プロセスの一端を語る資料で紹介。空間を意識し、細部までこだわり抜いた多田美波の造形の魅力と源流を探ります。
[本展の構成/見どころ ]
本展の会場は大きく2つに分けて構成します。前半の空間では、今回取り上げる作品について、完成当時の臨場感あふれる空間写真で作品のダイナミックさと精緻さを紹介します。後半では、作品を「多彩なる調和」「静と動の創出」「光の連鎖」という、それぞれがもつ特徴を3つのフレーズに分けて展示します。作品ごとに、制作に関わる実物資料や制作過程の写真などを完成写真パネルとともに展示し、多田が目指した作品のディテールに迫ります。
【イントロダクション】・大画面でご覧いただく作品写真のスライドショー
完成当時の建築空間における作品写真を壁面に投影し大画面でご覧いただきます。
【多彩なる調和】 5作品の写真パネルと制作に関わる実物資料を展示
複雑な色の重なりが調和をもたらすーこの特徴を代表するのが「帝国ホテル 東京」や「東京芸術劇場」の光壁です。いずれも、素材として使われたガラスブロックのサンプルを展示し、色や形状が異なる様やガラス特有の光の効果が生まれる工夫などもご覧いただきます。「春日井市庁舎」(愛知)からは、製作会社とともに研究を重ねるほどこだわったラスター釉の陶板レリーフのサンプルを、また「聖徳大学」(千葉)からはアルミ製の緞帳(どんちょう)の煌めくパーツを展示。建築空間の一部を構成する作品写真と間近に見るディテールを見比べながら、作品の魅力に触れていただきます。
【静と動の創出】 7作品の写真パネルと制作に関わる実物資料を展示
視覚的に動きを感じる、生きている立体をつくろうとした多田。ここでは、空間に馴染む静けさとともに、錯覚による動きを感じさせる作品を紹介します。「新宿住友ビル」にある三角柱の吹き抜け空間につくられた「光屋根」(吹抜天井造形)は三角形の多面体で構成され、いくつも模型をつくりながら形が決められました。写真7は天井から光が降り注ぎ、万華鏡のような様。その他、昼夜二つの顔をもつ「銀座Leeビル」のファサードデザインは、もはや建築家の仕事ともいえる作品です。
【光の連鎖】 7作品の写真パネルと制作に関わる実物資料を展示
ガラスや金属の内に潜む光源は、反射し、連なり、見えない分子の集まりである空間に方向性と形をつくりだします。ここでは主に照明の機能をもつ作品とその制作過程の一部を紹介します。「リーガロイヤルホテル(大阪)」の《瑞雲》(写真3)は日本庭園をイメージしたラウンジのためにつくられた光造形で、雲のイメージを小さなガラスの集合体で表現しました。また「紀尾井ホール」(東京)のホールを飾るシャンデリアは多田が雪の結晶を表現したものです。781枚のガラスがいくつも重なり合っています。ドローイング、ガラスのパーツ、模型などの展示から、光の反射効果を引き出す工夫などが見て取れます。