三浦明範 ーvanitas vanitatum
会期: 2023-07-15 - 2023-08-13
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
平面
絵画
開催内容
武蔵野美術大学 美術館・図書館では、展覧会「三浦明範-vanitas vanitatum」を開催いたします。展覧会名にあるラテン語 "vanitas vanitatum"(ヴァニタス ヴァニタトゥム)は旧約聖書中の「伝道の書」に残された言葉で、「空の空」を意味します。現実の不条理に直面しながら、虚無感に屈することなく、既存の秩序さえも問い直した末に賢者が辿りついた言葉です。その言葉は、身近な事物を克明に観察、描くことで問題を提起し、答えを探しながら描き続けてきた画家・三浦明範の作品に重なります。
大型作品を中心に、油彩とテンペラによる彩色作品からシルバーポイントと墨によるモノクローム作品まで、28点を一望できる展観です。生きること、死ぬこと、日頃あえて考えることが少ないような事柄と向き合う絶好のチャンスとなるかもしれません。
【本展の見どころ】
■ 古今東西の画材を活かした表現
描画にはヨーロッパで鉛筆の登場以前に用いられていた金属尖筆、アジアの伝統的画材である墨、下地には北西ヨーロッパ産の白亜や中国原産のカオリン、さらにアルキド樹脂といった現代の材料も含め、画材の新たな使い方がみられます。画材や技術といった側面はあくまで手段でしかないとしながらも、それらを試行錯誤する楽しさは絵を描く動機の一つとなっています。
■ 大画面に繊細な描画
細やかに描き込まれた大型作品に、複製にはない画面の充実した素材感を確認できます。三浦はこれまで先人たちの作品をふまえ、画材の長所を引き出し、短所を補いながら絵画表現の可能性を広げてきました。画材の素材感を消す方向にあった西欧古典絵画の技法を応用し、平滑面に重ねられた画材が光によって豊かに表情を変える様子は、素材を積極的に押しだす日本の伝統絵画にも通じています。そこに描かれた内容をも含んで、目に見える部分で後世に伝わる価値を備えているといえます。
■ 問題提起する絵画
「絵を描くことは自分を見つめることでしかない」という、画家本人の思考を深めた作品でありながら、観る者それぞれが抱えてきた問題意識とつながり得る絵画群です。それは生死といった身近に潜む不思議に端を発した作品であることに由来しているのかもしれません。画面に満ちる光と底知れぬ黒、繰り返し描かれている事物を前に、どのような問いが想起されるでしょうか。私たちが、立ち止まり深く考えるような絵に出会うことになるでしょう。