企画展「愛のカタチ ー幻の春画≪稚児草紙≫公開ー」
開催概要
- 会期
- 2026年09月19日 〜 2027年01月17日
- 会場
- 福田美術館 (京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16)
- ジャンル
- アート
- タグ
- 日本画
開催内容
愛と欲望、人が人を求める切実な感情ー画家たちはそれを「春画」という形で描き出しました。
平安時代にはすでに存在していたと考えられています。本展で初めて一般公開される《稚児草紙》は、14世紀初めに制作された稚児と僧侶らとの親密な関係を詞書と共に記した絵巻で、模写や書籍等を通じて実在することだけが知られていた、幻の春画とされています。
また、ここ嵐山ゆかりの作品でもある、男女の営みを描いた日本最古の春画の一つである《小柴垣草紙》を江戸時代の絵師・谷文晁(たにぶんちょう)が模した巻物も併せて展示します。さらに、月岡雪鼎(つきおかせってい)らが手掛けた肉筆による春画の数々や、葛飾北斎が70代の頃に制作した春画としては最晩年の作品《浪千鳥》など、12点の春画の傑作に加え、上村松園や鏑木清方らが描いた「愛」にまつわる作品も展示します。鎌倉時代から画家が描き続けてきた「愛のかたち」の豊かさ、奥深さを体感できる機会です。
前期:9月19日(土)~11月17日(火)
後期:11月18日(水)~2027年1月17日(日)
第1章 描かれた愛のカタチ
身を焦がす慕情、引き裂かれる苦悩、母と子の絆、身分を超えた愛——物語が紡いできた愛の情景。それは、画家たちにとって尽きることのない着想の源泉となってきました。なかでも世界最古の長編小説『源氏物語』は、貴族たちの恋愛と人間の業を綴った傑作として後世の画家たちを惹きつけています。また、浄瑠璃や小説などの物語における恋愛を主題とした作品も、数多く残されてきました。一方、愛と美が交錯する特別な世界であった江戸の遊里では、遊女たちが最先端の装いや髪型で時代の流行を生み出す存在となり、その姿は美人画として描かれました。華やかな装い、優美で凛とした表情の陰に潜む儚さや内に秘めた情念が、見る者の想像をかきたてます。
第1章では、「愛」をテーマにした絵画31点※を展示し、人々の切々たる情愛のカタチを紹介します。
※展示替えあり
第2章 幻の春画《稚児草紙》公開
人が愛を交わす姿を描いた春画は、平安時代にはすでに存在していたと考えられています。中国から伝来した医学書(房中術[性行為の技法]を記した書物)の挿絵などを契機として作られた初期の春画は「性の手引書」あるいは貴族階級の愛玩物という性格が強いものでした。鎌倉時代には、高名な絵師の手による絵と、洗練された詞(ことば)が混ざり合う、芸術性の高い作品が制作され、江戸時代になると、庶民にも広く親しまれるようになりました。明治以降の近代化の中で一時期「わいせつ」と見なされましたが、欧米では高い評価を受け、2013年から2014年にかけて大英博物館で開催された春画展は、大きな話題となりました。中でも江戸時代以前の春画である《小柴垣草紙》《稚児草紙》《袋法師絵巻》は三大性愛絵巻として歴史的にも貴重な作品として知られています。
第3章 葛飾北斎の春画《浪千鳥(なみちどり)》
19世紀を代表する浮世絵師・葛飾北斎の作品は国際的に評価が高く、北斎は世界で最も有名な日本人の1人とも言われています。代表作として《冨嶽三十六景》や《北斎漫画》などが著名ですが、大胆な構図と優れた画力で他と一線を画す春画も多く残したことでも知られています。
北斎が70代で制作した《浪千鳥》は、彼の春画における代表作という枠を超え、江戸時代の春画の中でも最高峰に位置付けられる作品です。本作は全部で12図で構成されており、北斎が描いた下絵の輪郭線となる主版(おもはん)に手作業で濃い彩色を施し、さらに背景には雲母(うんも)の粉を使った雲母摺り(きらずり)を用いて光沢を加えています。《浪千鳥》では、恋人、夫婦、遊女と客、親子など様々な組み合わせの男女の身体が画面いっぱいに大きく描かれており、同じ時期に制作された春画に多く見られる障子や襖などの調度品の描き込みもなく、のぞき込む他の人間や犬猫も入る余地もありません。余計な要素をすべて削ぎ落とすことで、北斎は男女の情交を際立たせました。晩年になってもなお衰えることない北斎の画技を紹介します。