藝の生態系 ― 種・育・華 ―

藝の生態系 ― 種・育・華 ―

開催概要

会期
2026年05月16日 〜 2026年06月07日
会場
YUGEN Gallery (東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル4F)
参加クリエイター
井川ゆきな / 高橋美衣 / 竹内まみ / 金子司 / 袁方洲 / 池上創
ジャンル
アート、クラフト

開催内容

本展は、「藝」という言葉の成り立ちに立ち返りながら、素材の扱い、工程の反復、表現への展開といった複数の側面から、技がどのように成立しているのかを捉え直す試みです。

-素材・工程・展開という三つの相-

「藝」はもともと、草木を植え育てる行為に由来し、素材を扱い、手を動かし、時間をかける中で成立する技を指す言葉です。

本展では、この背景をもとに、技の在り方を三つの相から捉えます。素材の性質がそのまま現れる状態、反復や工程の積み重ねによって精度が生まれる状態、そして技法や形式が別のかたちへと展開される状態です。

ただしこれらは段階(プロセス)ではありません。ひとつの作品の中で同時に起きている現象として扱います。

本展には、井川ゆきな(陶芸)、池上創(吹きガラス)、袁方洲(キルンワーク/立体ガラス)、金子司(萩焼)、高橋美衣(陶の立体造形)、竹内まみ(沖縄紅型染色)が参加いたします。

-素材がそのまま現れる「あらわな技|素」-

井川の陶芸は、単色の釉薬と丸みを帯びた造形によって、素材とフォルムの関係をそのまま表面化させます。装飾を抑えることで、形態の構造そのものが前面に現れます。

池上の吹きガラスにおいても、溶解したガラスの流動性と重力、手の動きが一致した瞬間に形が決まります。素材の状態と身体の操作が分離されることなく現れる点が特徴です。

-反復によって成立する「持続する技|熟」-

袁のキルンワーク(立体ガラス)は、焼成の温度や時間を調整しながら工程を繰り返すことで、技を熟成させていきます。反復(熟練)の中で培われた技術によって、作品ごとに異なる色彩や形態が精緻に制御されます。

池上の吹きガラスにおいても、一つの造形は数秒のうちに成立しますが、その背後には繰り返しの練習があります。瞬間の操作の積み重ねが技術の成熟へとつながり、造形の精度として現れます。

金子の丸皿における墨流し(施釉)は、同様の動作を繰り返す中でパターンが生成される構造を持っています。反復そのものが形態を成立させる条件となっています。

-伝統技法が現代のかたちへ展開される「開かれる技|展」-

竹内の紅型は、型染めと彩色の工程を基盤としながら、染色を単なる装飾にとどめず、図像を構成する手段として用いています。染色は絵画として展開され、異なる質の表現を生み出します。

高橋の作品では、デッサンを起点とした造形が重視されており、既視感のある線やフォルムによって構成されるかたちの佇まいが前面に現れます。形態そのものの趣が作品の印象を決定づける要素です。

金子のキノコをモチーフとした作品は、萩焼の技法を基盤としながら、親しみのある造形として再構成されています。可愛らしいフォルムの中に、日本的な自然観が反映され、現代的なかたちとして提示されています。

-位相の交差と循環としての「藝」-

これらの作品において、「素・熟・展」は独立した分類として存在するものではありません。ひとつの技の中に複数の位相が同時に含まれ、その重なりによって技は成立しています。

素材がそのまま現れる局面においても、その背後には反復によって蓄積された技術があり、工程の積み重ねによって生まれた形態は、同時に表現として開かれています。各位相は固定されることなく行き来しながら、相互に作用し続けています。

こうした関係は、一方向の段階ではなく、循環する構造として捉えられます。素材、工程、表現は互いに影響し合いながら繰り返し更新され、その中で「藝」はかたちづくられていきます。

本展は、この重なりと循環の中にある技のあり方を、「藝の生態系」として提示します。