開催時間 |
11時00分 - 19時00分
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休み |
日・月・祝
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入場料 |
無料 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
Gallery MoMo Ryogoku
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒130-0014 東京都
墨田区亀沢1-7-15 |
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最寄り駅 | 両国 |
電話番号 | 03-3621-6813 |
GALLERY MoMo Ryogoku では9月8日(土)から10月13日(土)まで、村田朋泰の個展「Omen」を開催致します。
村田朋泰は1974年東京都生まれ、2000年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業制作「睡蓮の人」が、2002年第5回文化庁メディア芸術祭にてアニメーション部門最優秀賞を、その後も大学院卒業制作作品「朱の路」が第9回広島国際アニメーションフェスティバルで優秀賞を受賞しました。さらにMr.Children のPV により一躍知られるところとなり、現在もNHK の子供番組などで幅広い層から支持されるアニメーション作家として活躍しています。
2006年の目黒区美術館における個展ではパペットアニメをアートの水準に引き上げ、2008年の平塚市美術館でもインスタレーションと映像による展示は高く評価されました。また、今年3 月より初期の作品から最新作をまとめた「夢の記憶装置」が全国の映画館で上映されているほか、フランス・アヌシーで開催された『アヌシー国際アニメーション映画際』には映像作品と共に、インスタレーション作品も出展し好評を得ました。
村田は、2011年の東日本大震災と福島の原発事故を契機に、生と死に関する記憶の旅をテーマにした新しいシリーズの制作を始めました。このシリーズは、5つの物語で構成される予定で、今展覧会では、1作品目となる『翁舞 / 木ノ花ノ咲クヤ森』、2作目となる『天地』に続く、3作目『松が枝を結び』を上映いたします。このシリーズで、村田は、「祈り、記録、信仰」テーマとした物語を通して、日本の「無常観」を描ことしています。
『松が枝を結び』では、『天地』にも示唆的に登場した双子の女の子を軸に、過去と現在を行き来しながら物語が進んで行きます。村田が長年、制作で試みている「記憶装置」を体現するように、2011 年に起きた震災を思い起こさせる重要な作品となっています。多くの「予兆」が散りばめられ、初期作品より見られる「言葉ではないもの、言葉にできないこと、些細なこと、些細なもの」を人形の目の動きと手の仕草などで表現されており、作家自身の集大成のような作品となっています。
また、映像作品のキーワードの一つとなる「境目」をテーマにしたインスタレーション作品も展示する予定です。村田が描く繊細で美しい映像と、ミニチュアで表現する強いメッセージをご高覧いただければ幸いです。
作家コメント
この個展では、映像作品「松が枝を結び」とインスタレーション作品「White Forest of Omens」を展示する。映像作品「松が枝を結び」は、前作「翁舞 / 木ノ花ノ咲ヤ森」、「天地」に続くシリーズの三作目となり、震災をテーマにしている。
映像作品ではいくつかの前兆が重なり合うが、気づくものもあれば、気づかないものもある。目に見えるもの、そうでないものもある。
本編は、前兆が示唆した出来事の起きる前と起きた後、その「境」を描いている。
インスタレーション作品では、その「境」という漢字から着想を得て制作をした。
何年か前に夜の森の中で声だけを頼りに空間を感じるワークショップをおこなった。参加者は真っ暗な森の中を各々自由に移動しながら、誰かの名を呼ぶ。暗闇のどこからか呼ばれた人の返事が聞こえる。呼ばれた人はまた別の人の名を呼び、返事を待つ。移動距離が長くなるにつれ、だんだんと遠くなる声。やがて名前を呼んでも返事がなくなる。空間とそれに伴う共同体は少しずつ喪失していく。このような体験から「境」という漢字に「音」が含まれているのは、古代、音の届く限界が集落範囲と考えられていたのかもしれないと思った。
「境」は「鏡」という漢字にも共通した意味が含まれている。「鏡」の「竟」は〈さかい目〉を意味し、「明暗の境目を映し出す銅製のかがみ」の意だと漢和辞典にある。また、古来より日本人にとって現実世界と鏡の中の世界が左右逆転しているように見えることから「鏡の前にいる世界はこの世、鏡の中の世界はあの世」という解釈もある。
インスタレーション作品では、この森での経験を、ミニチュアの森を用いて再現しようと試みている。白い森に鎮座する小高い岩から僅かに拍子木の音が聞こえてくる。木々は音の響きに呼応し、大地に走る亀裂や生き物の軌跡を示す。鏡を境とし、実像と虚像をつなぐ作品を目指した。
また、映像作品中では、「陰陽」「現世と黄泉」「一卵性双生児」「断層と断層」といったモチーフで構成されている。これらのモチーフは、日本の日本人にとっての「感情、記憶、信仰」を表している。物語は断層同士がぶつかり合い巨大な力によって生まれる現象と、双子の女の子の心理的現象を同時に描いている。
作品の中で、スイッチをつけたり消したり、二枚の写真が重ねあったり、2つの岩の隙間に祠があったり、双子の勾玉が登場したり、見えるものと見えないものがあったりなど、二つの対になるものシーンを象徴的に織り交ぜ、日本列島と日本人のアイデンティティとの関係性を示唆することで、信仰の歴史を改めて認識し、移りゆく自然の豊かさと厳しさを受容し、自然を敬い、恩恵に与る「日本人」の姿の一端を表現している。
東日本大震災を新たな生命、新たな世代に受け継がれていく叙事詩として描くことをコンセプトとした作品となっている。
2011年に起きた東日本大震災と福島原発事故以降、「祈ること、信仰すること、記録すること」とはなにかをテーマに制作を続けてきた。古来より自然災害との関わりの中で、日本は自然のさまざまなものを注意深く観察し、神と見立てた。そこには常になんらかの前兆が含まれており、ある出来事を「境」に祈りは一層深い信仰となり、多様な文化を形成していった。今展では、映像作品とインスタレーション作品を通じて、「前兆」が示唆した出来事が起こる前後の「境」を描いている。
2018 年 村田朋泰