開催時間 |
11時00分 - 20時00分
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クリエイター在廊 |
有
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入場料 |
無料 |
展覧会の撮影 |
可 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
075-221-5397
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イベントURL | |
情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒604-8005 京都府
京都市中京区三条通河原町東入ル恵比須町439-4 コーカビル |
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最寄り駅 | 京都市役所前 |
電話番号 | 075-221-5397 |
私の絵は静の瞬間を語っている。画布の前で心を空にして、瞑想するように浮かんでくるモチーフを表現するのだが、この時、空間を浮遊するさまざまな記憶が絵を描く出発点である。いまだ思い出されない多くの時間と話。見えないブラックホールのような日常が迫ってくる。渦巻のなかからつかみ出した日記のように、日常の破片が画布のなかで一つ二つと形をとりはじめる。絵のなかの無心な事物と風景はこうした省察から浮かび上がる心象の痕跡である。究極的に沈黙と平静を通じ て得ようとするものは結局「私は誰なのか」への探求であり、人間「実存」の問題を思惟することである。
Maditationシリーズは空間と事物への思惟から霊感を受けてはじまる。その過程で超越的な水平、雨のようにしみ込み、空気のように溶けていく、緩のようなものらが私の世界をノックする。それは深い海の下に広く広がっている沈黙の彫刻に出会うことである。その中で時間の質感と量感が、真昼の砂漠のような風景が一つずつ、二つずつと作業室を満たしていく。心臓に手をあてた時のように温かな血が渦巻く。
私の絵の造形性は単純さと反復にその基を置いているのだが、単純な形の線とさまざまな色は抽象的な感情を解きほぐすのに有用である。そしてその単純さから始まるウィットは見る人に共鳴を与える。また画布にしみこむように薄く反復する彩色は半透明な翼を透かし見るように内密なニュアンスを与える。今回の展示の作品は黄色や薄い灰色を地にした作品が多いのだが、これは薄い灰色と薄い黄色は他の色との関係において和合する力があるからである。またもう一つ、濃い墨色は深海の林のような喪失を浮かび上がらせるのでよく使用した。
作業をしていると巨大な氷のような朝の光がさしてくる。闇と明るさの明度が変わっていくとき、目をつぶればそれらがまぶたの下でゆらめく。その瞬間、昼と夜が、朝と夕方の青い霞みが同時に感じられる。さっきまでとは異なる空間にあるもののように平穏な空気が作業室に渦巻き、はじめて私は指を見つめる私の目に思いが行く。幹が白々とした冬の樹木たちが朝の光に沈んでいく。少しずつ足首をぬらし、体をぬらす絵以外には何も考えない生を祈る。
長かった、結目が形をなしていく感じである。