菊谷達史 Indoor landscape
会期: 2017-10-27 - 2017-11-12
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
デジタル
油画
水彩
ドローイング
平面
開催内容
菊谷の近年の作品の特徴は日常風景という極めてローカルなモチーフを扱っているにもかかわらず、菊谷自身がいかに「画家的であるか」という態度に収束することにあるといえます。
油絵の画家でありつつも西欧的な立体感や装飾性を排し、日本的油絵を追求した児島善三郎のような筆致で描かれた風景。
日本の油絵の原点である高橋由一へのオマージュのシリーズ。
そして本展示のタイトルでもある「Indoor landscape」は神田日勝の「室内風景」の引用。
これらの作品はその中で自己表現をするといった類のものではなく、「画家」というものを演じるセルフパフォーマンスとしてみることができます。
しかし、菊谷のセルフパフォーマンスはグローバルに対抗するための手段として、またはグローバルなアートの市場において成功することを目的にローカリティを誇張する手段としてではなく、文人画的な発想、粗く言えば「画家であろうとする自分が描いたことに価値がある」という態度をより明確に示そうとしているためのものなのです。
本展示は北海道の農民として生きた神田日勝の代表作「室内風景」の引用とのこと。室内で座り込む神田の周りには新聞記事がびっしりと貼り巡らされています。この絵は、新聞などのメディア(媒介物)を通して北海道というローカルな地から世界をみている気になっていた神田が、「世界と対峙しているつもりであったが、もしかして自分と世界は全く関係がないのでは?」と不安を感じているかのように見えます。
この不安を表現するにあたって、高橋由一のように原点でもなく、児島善三郎のように権威でもない極めてローカルな画家を選んだところに、今の彼の心境を見て取ることができます。
Statement
あるふとした瞬間、唐突に出会った目が離せなくなったものをまずiPhoneで写真に収める。カメラロールに蓄積された写真を時折眺め、頭の中でGOと声がすれば絵に描く。画材は油絵、水彩、木炭、Photoshopなど本能的に選ぶ。その日の内に描く事もあれば、数年後描く事もある。収めた写真は僕の出くわした印象的な一場面であり情景である。シーンの標本をつくるように。時に見た通り、時に複数のイメージを混線させ、絵に描いて僕は目撃者から所有者になる。以上は大まかな僕の制作の過程である。
様々な態度と立場と目的で絵が量産されている今日は、かつてない程絵を描く人口が多い時代ではないだろうか。1世紀前の絵画を図版や画像や美術館で普通に観れるように、今を100年後から観られる日も必ず来るのだ。その頃は油絵は生産中止になっているかもしれない。アニメやVRが古典になっているかもしれない。その時今日の絵画は一体どう写るだろう?などと、考えてみても仕方のない事をついつい考えてしまう。例えば今、甲冑をモチーフには出来ても由一のようには描けない様に、その時その国その土地に生きていたからこそ、受ける事ができた衝撃や描く事ができた絵画というものは確実にある。それはきっと一つや二つではないはずだ。
では自分には一体何が描ける?僕が最近気掛かりなのはそればかりだ。
菊谷達史