アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国

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会 期
20170111日 -  20170226
開催時間
10時00分 - 18時00分
特別展開催中の金・土曜日は20時00分まで
入場は閉館の30分前まで
休み
入場料
有料
一般 1400(1200)円、大学生1000(800) 円、65歳以上・高校生700(600) 円、中学生以下無料
※(  )内は20名以上の団体割引料金 ※前売券は一般・大学生のみ。 ※障がいのある方は各当日料金の半額(65 歳以上を除く)。その介護の方1名は無料。 ※割引を受けられる方は、証明できるものをご持参の上、会期中美術館窓口で観覧券をお買い求めください。 ※県美プレミアムの観覧には別途観覧料金が必要です(本展とあわせて観覧される場合には割引あり)。
展覧会の撮影
不可
作品の販売有無
展示のみ
この情報のお問合せ
兵庫県立美術館
情報提供者/投稿者
開催場所
兵庫県立美術館
住所
〒651-0073 兵庫県
神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 [HAT神戸内]
最寄り駅
岩屋
電話番号
078-262-1011

詳細

展覧会内容

 アウトサイダー・アート/アール・ブリュットを代表する伝説的芸術家アドルフ・ヴェルフリ(Adolf Wölfli 1864-1930) の日本初となる大規模な個展を開催します。スイスの首都ベルン近郊の貧しい家庭に生まれたヴェルフリは、1895年にヴァルダウ精神病院に収容され、そのまま66年の生涯を終えました。しかし、彼はそこで、『ゆりかごから墓場まで』、『地理と代数のノート』、『葬送行進曲』といった物語の数々をつむぎだしました。そうしたヴェルフリの作品は全45冊、25,000 ページという目もくらむようなボリュームで、ほかに例のない驚異的な表現で描き出される奇想天外な物語はひとびとを圧倒しました。

 アドルフ・ヴェルフリ財団の全面的な協力のもと、本展には最上級のヴェルフリ作品が一堂に会します。シュルレアリスムの画家たちをはじめとする多くの芸術家たちの注目を集め、現在では偉大な芸術家の一人として世界的な評価を得るヴェルフリの作品を“目撃” する絶好の機会です。どうぞお見逃しなく。

I. 初期の作品
ヴェルフリの診察記録によれば、彼がドローイングを描き始めたのは1899年とされる。最初期に描かれた作品は200点から300点程と考えられるが、そのうち現存するのは1904年以降のもので、わずか50点ほどである。さらの新聞用紙に鉛筆で描かれた単色のこれらの作品をヴェルフリは「楽曲」と呼び、そこに「アドルフ・ヴェルフリ、シャングナウの作曲家」と署名した。

II. ゆりかごから墓場まで
全9 冊、2,970ページにおよぶヴェルフリが最初に手がけた叙事詩。752点の絵画とともに語られるのは、主人公の少年ドゥフィ(アドルフの愛称)が、家族とともに世界をめぐる旅行記である。ここではヴェルフリの悲惨な子供時代がわくわくするような物語へと置き換えられている。「フォーゲリ」と呼ばれる小鳥のようなモチーフが初めて登場するが、これはヴェルフリの分身の保護者のような存在としてその後の作品にも度々に描かれるもので、隠れた空白を埋めていく性的なシンボルともみなされている。

III. 地理と代数のノート
本書は、ヴェルフリの死後に「聖アドルフの=巨大なる=創造」を成し遂げるための方法を実の甥であるルドルフに説くものである。「聖アドルフの資本財産」があれば、全宇宙を買い上げ、都市を形成し、すべてにおいて近代化を遂げることができるという。同時に、スイスは「聖アドルフの森」、海は「聖アドルフの海」、アフリカは「聖アドルフの南部」などと改称される。地球の乗っ取りに成功した暁には「巨大透明輸送機」に乗って宇宙へと漕ぎ出していく。

IV. 歌とダンスのノート
ヴェルフリは「聖アドルフの=巨大なる=創造」を祝福する楽曲として、7,000頁以上にわたる途方もない長さの行進曲、ポルカ、マズルカのシリーズを作曲した。曲は階名唱法(ドレミファ音階)で書かれている。それらを飾る作品としては、素描よりも雑誌の切り抜きのコラージュが多い。

V. 葬送行進曲
全16 冊、8,000頁を超える『葬送行進曲』はヴェルフリが自らに向けたレクイエムとも言われる。ここでは、抽象的かつ音声詩の形式による音やリズムが、物語にほとんどとって代わっている。ヴェルフリの創作の第五部にあたる本書は、1930年の彼の死により未完に終わった。

VI. ブロート・クンスト(「日銭稼ぎ」の作品)
ヴェルフリの精神科医ヴァルター・モルゲンターラーが「ブロート・クンスト(パンのための芸術)」と名付けたドローイングはおそらく1,000点以上描かれ、そのうちの750点が現存する。一部のコラージュを除き、多くはクレヨンで一枚ずつ独立したシートに描かれた。裏面には「聖アドルフの=巨大なる創造」の物語にまつわる記述がある。ヴェルフリ自身は「肖像画」と呼んだこれらのドローイングをクレヨンやタバコと交換し、さらに精神病院の職員や彼の創作を称賛しに訪れる人々に売っていた。制作依頼が増えると助手を雇うことさえあった。絵を売って得たお金はヴァルダウ精神病院の院長が管理し、必要なものを彼に買い与えていた。

アドルフ・ヴェルフリ Adolf Wölfli

(*)項目はヴェルフリの『短い自伝(Short Life Story)』または『ゆりかごから墓場まで』の記述に基づく。
1864年 2月29日、スイスの首都ベルン南西の街ボヴィルの貧しい家庭に七人兄弟の末っ子として生まれる。
1871年 7 歳 * 父親や兄弟と別れ、母と二人で暮らすようになる。
1872年 8 歳 * 父親が家を訪れ、母親に暴力をふるい金銭を奪っていく。この頃から契約児童(verdingkind)として厳しい労働環境に身をおくようになる。里親は年の初め開かれる市で決まり、一年ごとに変わることも珍しくなかった。
1873年 9 歳 母アンナが亡くなる。
1875年 11歳 父ヤコブが亡くなる。
1881年 17歳 * 一人の女性に恋をする。
1884年 20歳 * 兵役が始まる。ルツェルンで1886年まで訓練を受ける。
1887年 23歳 * 里親のもとでの労働生活にもどる。
1888年 24歳 * 一人の女性に恋をする。
1890年 26歳 少女二人に対する性的暴行未遂の罪で逮捕、2 年の禁固刑を受ける。
1895年 31歳 5 月12日、幼女に対する性的暴行未遂の罪で逮捕される。ベルン近郊の街ヴァルダウにあるヴァルダウ精神病院での精神鑑定の結果、統合失調症と診断される。医師の求めに応じ『短い自伝(Short Life Story)』執筆。6月3日、ヴァルダウ精神病院に入院。
1899年 35歳 自発的に絵を描きはじめる。
1904年 40歳 現存する最も古い作品がこの年に描かれる。ヴェルフリは初期の単色の作品を「楽曲(musical compositions)」と呼んだ。
1907年 43歳 現存する最古の彩色された作品がこの年に描かれる。ヴァルター・モルゲンターラー(1882-1965)が精神科医としてヴァルダウ精神病院に着任する。モルゲンターラーは1919年まで同病院に勤める。
1908年 44歳 物語の要素を持つ作品の制作を始める。この種の作品は1930年にヴェルフリが亡くなるまで継続し、最終的に25,000ページに達した。『ゆりかごから墓場まで』の執筆を始める。同書はヴェルフリ自身の悲劇的な人生をり作品に「聖アドルフ2 世」と署名するようになる。現在「ブロート・クンスト(日銭稼ぎの作品)」として知られる、一枚ものの販売用作品の制作を始める。「ブロート・クンスト」の制作は生涯続いた。
1917年 53歳 『歌とダンスのノート』の執筆を始める。それは数千ページにおよぶ音声詩や歌、音階、コラージュなどで、「聖アドルフの=巨大なる=創造」を祝福するものである。
1919年 55歳 モルゲンターラーがヴァルダウ精神病院を去る。以後マリア・フォン・リース博士がヴェルフリの担当を務める。
1921年 57歳 モルゲンターラーがヴェルフリの生涯と作品を論じる『芸術家としてのある精神病患者(Ein Geisteskranker als Künstler)』を出版する。
1924年 60歳 『歌と行進のアルバム』の執筆を始める。階名唱法(ドレミファ音階)で表記され素描とコラージュで飾られた楽譜。
1928年 64歳 『葬送行進曲』の執筆を始める。全16 冊、8,404ページにおよぶ本書は自身へのレクイエムであり、未完に終わった。
1929年 65歳 嘔吐を繰り返すようになり、癌が疑われる。
1930年 66歳 3 月15 日、胃腸吻合術の手術を受ける。
11 月6 日、朝8 時10 分に逝去。死の4 日前にも『葬送行進曲』の完成を望んでいた。

関連イベント

■記念講演会 その1 「ヴェルフリ 妄想の大伽藍」
 講師:斎藤 環氏(精神科医・批評家)
 1月21日(土) 午後4 時から(約90 分)
 ミュージアムホール(定員250 名)
 聴講無料(要観覧券、当日午後1 時からホワイエで整理券を配布)

■記念講演会 その2 「アール・ブリュットとしてのヴェルフリ」 
 講師:服部 正氏(甲南大学文学部准教授・本展監修者)
 1月28日(土) 午後2 時から(約90 分)
 ミュージアムホール(定員250 名)
 聴講無料(要観覧券)

■学芸員によるギャラリートーク
 2月4日(土)、2月11日(土・祝)、2月18日(土)
 午後4 時から(約45 分)
 展覧会場にて(定員20名)
 聴講無料(会場入口に集合、要観覧券)

■ミュージアム・ボランティアによる解説会
 毎週日曜日 午前11 時から(約15 分)
 レクチャールーム(定員100 名)
 聴講無料

■おやこ解説会
 2月11日(土・祝) 午後1 時30 分から(約30 分)
 レクチャールーム(定員20 名)
 参加無料(要事前申込 こどものイベント係 電話078-262-0908)

主催・協賛・後援

主催:兵庫県立美術館、神戸新聞社、産経新聞社
企画協力:アドルフ・ヴェルフリ財団
後援:在日スイス大使館、公益財団法人 伊藤文化財団、兵庫県、兵庫県教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会、ラジオ大阪、サンケイリビング新聞社、サンケイスポーツ、夕刊フジ、サンテレビジョン、ラジオ関西
協賛:GREG C. K. LIU FOUNDATION 
協力:スイス インターナショナル エアーラインズ
企画監修:服部正(甲南大学文学部)

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