From Life ― 写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展

ジュリア・マーガレット・キャメロン《ベアトリーチェ》1866年 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
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    会 期
    20160702日 -  20160919
    開催時間
    10時00分 - 18時00分
    金曜、第2水曜、会期最終週平日は20時00分まで
    ※入館は閉館の30分前まで
    休み
    月(但し、祝日の場合と9月12日は開館)
    入場料
    有料
    一般 1600円/ 高校生・大学生 1000円/小・中学生 500円 [アフター5女子割] 第2水曜17時以降/当日券・一般(女性のみ) 1000円
    ※他の割引との併用不可 ※利用の際は「女子割」での当日券ご購入の旨をお申し出下さい。 ※前売券 一般 1400円 ※大学生以下、ペア(一般)は前売券の設定はありません ※ペア券はチケットぴあでのみ販売します。
    作品の販売有無
    展示のみ
    この情報のお問合せ
    03-5777-8600(ハローダイヤル)
    イベントURL
    情報提供者/投稿者
    開催場所
    三菱一号館美術館
    住所
    〒100-0005 東京都
    千代田区丸の内2-6-2
    最寄り駅
    東京
    電話番号
    050-5541-8600(ハローダイヤル)

    詳細

    展覧会内容

     1863年末に初めてカメラを手にしたジュリア・マーガレット・キャメロン(1815-79)は、記録媒体にすぎなかった写真を、芸術の次元にまで引き上げようと試みた、写真史上重要な人物です。インドのカルカッタに生まれ、英国の上層中流階級で社交生活を謳歌していた彼女は、48歳にして独学で写真術を身につけ、精力的に制作活動を展開します。そして、生気あふれる人物表現や巨匠画家に倣った構図を追求するなかで辿りついたのは、意図的に焦点をぼかし、ネガに傷をつけ、手作業の痕跡をあえて残す、といった革新的な手法でした。
     本展は、キャメロンの生誕200年を記念し、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が企画した世界6カ国を回る国際巡回展であり、日本初の回顧展です。キャメロン絶頂期の極めて貴重な限定オリジナルプリント(ヴィンテージプリント)をはじめ、約150点の写真作品や書簡などの関連資料を通じて、キャメロンの制作意図を鮮やかに際立たせつつ、彼女が切り拓いた新たな芸術表現の地平を展覧します。

    本展企画者マルタ・ワイス氏より、展覧会開催に向けて
    ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 写真部門学芸員
    マルタ・ワイス
    2015年11月30日

    1.今回、この展示の開催を企画されたのは何故でしょうか。
    2015年はキャメロンの生誕200周年という記念の年です。また、彼女の存命中に唯一美術館で開催された展覧会である、1865年のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(当時のサウス・ケンジントン博物館)での企画展から数えて150年目にあたります。くわえてヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、キャメロンから直接入手受領した作品群を所蔵しています。それは現代におけるキャメロンの最も重要なコレクションと言うことができ、そのなかには、250点以上の写真と、サウス・ケンジントン博物館の初代館長ヘンリー・コウルに宛てた書簡5点が含まれているのです。

    2.ジュリア・マーガレット・キャメロンの写真が、今もなお、現代の私たちの関心を集めているのは何故だと思われますか?
    キャメロンの写真は、彼女の生きた時代を映し出していますが、これと同時に、驚くほどモダンでもあります。ますますデジタル画像の欠点がなくなっていくこの時代において、明らかに手で作ったことがわかる写真を見るのは、新鮮なことです。キャメロンは写真のなかに制作過程の跡 ―染みやひっかき傷、渦など― を残しています。そうした痕跡は、作品制作におけるキャメロンの存在や役割を、観る人の心の中に思い起こさせるのです。

    3.写真史におけるキャメロンの作品の重要性や独自性についてお話しいただけますか?
    キャメロンはクローズアップという手法の先駆者でした。意図的にピントをぼかした状態で撮影した、最初の写真家でもあります。当時の写真家は、彼女の型破りなテクニックを厳しく批判しましたが、なかには、彼女の写真を芸術作品として高く評価し、レンブラントやラファエロの絵画になぞらえた評論家もいました。キャメロンの没後まもなく、多くの写真家たちが、彼女の作品に特徴的なソフトフォーカスの表現を採り入れ始めます。20世紀に入り、キャメロンは、その大写しの肖像写真がもつモダニティによって、有名になったのです。

    4.この展示は日本で開かれる最初のキャメロン回顧展です。日本のファンに何かコメントをいただけますでしょうか。
    キャメロンは、極めて芸術性の高い、知的なグループに属していました。同時代の代表的な作家や芸術家、思想家の多くと親交を結んでいたのです。そのなかには、詩人のアルフレッド・テニスンや科学者のジョン・ハーシェル、チャールズ・ダーウィン、そして芸術家のジョージ・フレデリック・ウォッツなどがいました。彼女の慣習にとらわれない写真は、彼らの世界を垣間見させてくれます。また、髪を緩く垂らした女性たちを撮ったキャメロンの夢見るような写真は、その時代の美学を反映しているのです。ジュリア・マーガレット・キャメロンは、自身の作品を説明することにおいて控えめであったとは言えません。ヘンリー・コウル宛の書簡のなかでは、その写真が「コウルに歓喜の衝撃を与え」、「世界をあっと言わせる」ことを狙った、と記しています。間違いなく、キャメロンは、現代の日本の方々にも同じような衝撃を与えることを願っていただろうと思われます。

    第一章 最初の成功からサウス・ケンジントン博物館へ
    キャメロンが贈り物として娘夫婦からカメラを受け取ったとき、添えられていたのは次のような言葉でした。
    「フレッシュウォーターでひとり寂しいとき、写真をやってみたら楽しいでしょう。お母さん」。この時点からキャメロンは、「写真を芸術に高めたい」という大きな望みを胸に、情熱をもって制作活動に取り組みます。そして、わずか一年半後には、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の前身であるサウス・ケンジントン博物館に63点の作品が買い上げられ、公的な評価を確立するという快挙を成し遂げたのです。
    生涯を通じて追求する主題――「肖像」「聖母群」「絵画的効果をめざす幻想主題」――に彼女が出会ったのも、この頃のことです。

    第二章 痺れさせ驚嘆させる
    1865年夏に入手した二代目のカメラは、さらに大型のガラスネガに対応する機種であったため、キャメロンの制作活動に大きな転機をもたらしました。これ以降、彼女は、モデルの頭部を思い切ってクローズアップした、独特の肖像写真の表現を発展させます。こうした新たな作品群は、当時の主流であった、モデルの容貌や姿かたちを克明に写し取る写真ではありませんでしたが、不鮮明であるからこそ、観る側の感情に強く訴えかけてくる力をもっていました。この表現力こそ、彼女が追い求めたものにほかなりません。物語や寓意を表した「絵画的」な写真についても、キャメロンは、より大胆な表現を模索しはじめます。

    第三章 名声だけでなく富も
    写真制作を始めるまで、上層中流階級の夫人として社交に励んでいたキャメロン。その成果が、詩人アルフレッド・テニスンや天文学者ジョン・ハーシェルをはじめとする、当代一の著名人たちとの親交です。こうした友人を撮影するとき、キャメロンは、「外見的な特徴ばかりでなく内面の偉大さ」を記録しようと試みました。その一方で、家業であるセイロンのプランテーション事業が傾いた際には、積極的に展覧会活動を行い、代理店を通じて販売ルートを確保するなど、自身の作品で一家の経済的な安定を図ろうと奔走します。テニスンの物語詩『国王牧歌』のための挿絵写真を写真集として後日出版したことも、そうした努力の一環といえるでしょう。

    第四章 失敗は成功だった
    キャメロンは、通常であれば技術的な欠陥と見なされかねない不規則な出来映えを進んで採り入れて、独自の表現を発展させました。すなわち、ソフトフォーカスを多用し、ひっかいて傷をつけたネガを用いる一方で、複数のネガから一枚の写真を仕立てることを試みたのです。こうした手法は、当時としては異例であったため、作品の発表時には、アマチュアならではの未熟さの証であると批判されました。しかし、制作者の手の跡をあえて残す点などには、次世代の表現との共通性を見ることができます。技術の向上を常に課題としていたことは、画家ジョージ・フレデリック・ウォッツやサウス・ケンジントン博物館館長ヘンリー・コウルに助言を求めた事実からも読み取れます。
    今回、日本で初めての個展を当館で開催するにあたって、本展企画者のマルタ・ワイス氏は、あらたに二つの章を付け加えました。そのひとつは、同時代の写真にみられる二つの傾向、すなわち、記録媒体としての写真と芸術表現としての写真を紹介する章です。そして、もうひとつが、次世代以降の写真家たち――ピーター・ヘンリー・エマースン、アルフレッド・スティーグリッツ、サリー・マン――にキャメロンが及ぼした影響を考察する章です。双方を通じて、その活動の意義を浮かび上がらせることが、企画者の狙いです。

    主催・協賛・後援

    主催:三菱一号館美術館、 テレビ朝日、 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
    後援:ブリティッシュ・カウンシル
    協賛:大日本印刷、 資生堂
    運営協力:キュレイターズ

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