開催時間 |
11時00分 - 19時00分
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休み |
日・月・祝
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入場料 |
無料 |
この情報のお問合せ |
YAMAMOTO GENDAI
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒140-0002 東京都
品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 3F |
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最寄り駅 | 天王洲アイル |
電話番号 | 03-6433-2988 |
ジューサーやドリルなどの家電を自由自在に組み合わせたサウンド・スカルプチャー『THE ROATORS (ザ・ローテーターズ)』シリーズや、タンスや自動車を用いた大型作品を制作することで知られる宇治野は、戦後に大量消費社会を迎えた日本と近代化、また自身が影響を受けて育ったアメリカやイギリスのロックンロール文化への純粋な憧れをアイロニカルに表現する作品を発表しながら、同時にパフォーマンスやライブなど多彩な活動を世界各地で精力的に行ってきました。
山本現代では3年ぶりとなる今回の個展では、90年代から始まった宇治野の活動全てを総括するような新作『PLYWOODY OZON-SO(プライウッディ御存荘)』を中心に、外来語の概念をカタカナに置き換えて受け入れ発展してきた “文化の接ぎ木”としての日本の現状をグラフィカルに表現した『日本シリーズ』からの新作『ファック』と『ヘル』を、床の間に見立てた会場入り口に展示いたします。また『日本シリーズ』誕生のきっかけとなった第1作目の『トゥエンティワンセンチュリー』を始め、その他の初期作品も交え、こんにちまでの宇治野の作品群を回顧展さながらに展示いたします。
その他近年のパフォーマンスから2014年にアサヒアートスクエアで行ったパフォーマンス「INERTIA(イナーシャ)」と、本年1月に行ったパフォーマンスの記録映像も上映し、宇治野の世界観の拡がりをご覧いただけるまたとない機会となります。
宇治野の現在までの作品は、その成り立ちから概ね5つのシリーズに分けることができます:
1)きらびやかに装飾された小型バイクのような形状で、身体に(男根を彷彿とさせるように)装着し演奏することのできるサウンド・スカルプチャー『LOVE ARM(ラブ・アーム)』
2)このサウンド・スカルプチャーを発展させ、電化製品や自動車、家具など世界中の人々が日常生活で身近に使っている大量生産品を再構成して制作する『THE ROTATORS(ザ・ローテーターズ)』シリーズ
3)機械によって制御された日用品が、まるで能のような動き(ダンス)をする『MACHINE THEATER(マシーン・シアター)』
4)外来語の新しい概念をカタカナという音に変容させ、受け入れてきたことをコンセプトに据えた『日本シリーズ』
5)日本の木造建築や美術品の梱包に使用されるベニヤ板(PLYWOOD)に隠喩と皮肉を込めた作品群『PLYWOOD CITY(プライウッド・シティ)』シリーズの5つです。
このいずれにも、高度経済成長の中で青春期を迎え影響を受けたロック・ミュージックやアメリカ文化への素直な憧れと、大正生まれの宇治野自身の両親の生活様式や美意識とのギャップを消化しようと試みる宇治野の考察が見て取れますが、それは作家個人の問題に留まらず、今日の世界で享受されているグローバリゼーションの恩恵と、高度経済成長や近代化など、20世紀以降の人類が抱えている問題が提示されています。
新作『PLYWOODY OZON-SO(プライウッディ御存荘)』は、宇治野が2004年に発表した『御存荘』を発展させた『PLYWOOD CITY』シリーズの新作です。初期型の『御存荘』は、障子の桟や縁側、竹など日本の伝統的な木造家屋を解体した不用品を再構築し、戦車の形状へ仕立てた大型の作品でした。20世紀を発展させた重工業=鉄、その塊であり最も男性的なイメージを持つ“戦車”を、女性をイメージさせる“家”で作る、というような “近代と日本”、 “男性性と女性性”をテーマにした作品でしたが、奇しくも2003年にイラク戦争が勃発したために、何度かヨーロッパで展示された際には、この世界的な文脈の中で “日本人”が制作した “戦車”として様々に解釈されていきました。
今展で発表する『PLYWOODY OZON-SO』は、竹の砲塔や縁側の素材はそのままに、美術梱包用のベニヤでできたクレートを屋根に持ち、サウンド・システムである『THE ROTATORS(ザ・ローテーターズ)』シリーズがコックピット部分に搭載されることで、ビートを奏でます。「内部は極小の茶室のような趣だが、家電製品とエレキギターを組み合わせた、ロックンロールの技術を引用したサウンド・システム用のアンプ/スピーカーが積み上がり、ヴォリュームを上げると改造車両のようにかなりうるさい。」と宇治野が言うように、未だ終わらぬ世界戦争と軋み続ける世界の中で、もの言わぬ戦車であった『御存荘』が「かなりうるさい」主張を始めます。その『PLYWOODY OZON-SO』を見つめるポップで眩しい『トゥエンティワンセンチュリー』の文字が、2016年の現在どのように映るのか、ぜひ会場にて皆様にご覧いただきたく存じます。
プライウッディ御存荘
宇治野宗輝
昨年2015年に、『THE BALLAD OF EXTENDED BACKYARD, THE HOUSE』という今までで最大サイズの、建築物を解体/再構成したような作品を発表した。この作品は、トタン板と合板がボルトで繋がった柱のないパネルハウスが、空中でトランスフォームする途中のような構造物で、私にとってその制作プロセスは、20世紀のモダン・デザインと、工業製品の組み合わせで出来たモダン・アーキテクチャーを再考するチャンスだった。
現在すべての建築物は工業製品を組み合わせて作られている。伝統的に日本の家は、紙と木と土で出来ていて、金属をあまり使わない。紙と木と土だけではなく、鉄も必要になったのが日本の近代だったのではないかというシンプルな発想で、2004年に、日本家屋の解体された材料を中心に家庭の不要品を再構成して『御存荘(おぞんそう)』という作品を発表した。日本家屋の形を残しつつ、全体は戦車の形に組み立てられている。近代=鉄、その鉄のシンボルであるマッチョな戦車を、今よりも社会的に成熟していなかったエコ/リサイクルの概念と合体させた、『ラヴ・アーム』と同様なユーモアとアイロニーを持った作品だ。だが、その制作過程にあった2003年、自衛隊がイラクに出発する事になり、その後、本作は多文化主義ブームの中ヨーロッパでいくつかの展覧会に参加し、ある種のメッセージ性を持った。タイトル『御存荘』とは、フロンによる破壊で当時から注目されていた“オゾン層”を漢字表記したものだ。
“荘”とは本邸以外の別邸の意味であるように、私の空想の中では、メインの邸宅が『THE HOUSE』とすると、庭に東屋として「御存荘」があるイメージだ。2003年に勃発したイラク戦争は現在の戦争へつながり、『THE BALLAD OF EXTENDED BACKYARD, THE HOUSE』(2015)の制作過程で『御存荘』(2004)を常に思い出した。
また、“住宅/都市”をモチーフにした私のもうひとつのシリーズに『プライウッド・シティ』シリーズがある。ベニ ヤ板(プライウッド)で作られた美術品輸送のための木箱を都市のビルディングに見立てて並べ、家電が音を出して動き、照明器具がそれに合わせて都市が生きているように点滅する、『ザ・ローテーターズ』システムを使ったサウンド・スカルプチャーだ。そもそもイメージの基は、東京郊外の住宅地に建設される、大手メーカー製の建て売り住宅の建設過程を観察していると、建設の過程でいっときベニヤ板の箱が並ぶ状態になる事だった。そしてそれを、見慣れた美術品輸送の木箱に重ね合わせた。高額な美術品が売り買いされるアートフェア会場で、観客がまるでゴジラが都市を歩き回るように私の作品『プライウッド・シティ』の建築物に見立てた木箱(美術館や輸送会社から譲り受けた、高額な作品が入れられていた、不要になったがっちりと作られた木箱)の隙間を回遊する事を想像して興奮した。日本人にとって、ベニヤ板は戦後、または震災の復興の際、または生活空間すべてにおいて、20世紀後半以降生きてゆく事と切り離せない。しかしヨーロッパで最初に発表した際、彼らにとって、家とは石でできている概念なので、『プライウッド・シティ』とは、なにかのメタファーか、なにかのモデルを表現しているものと思われた。現在までに、『PLYWOOD CITY』(2008 - 2010)、『VERTICAL PLYWOOD CITY』(2011)、『THE DISTRICT OF PLYWOOD CITY』(2012)を制作してきた。
今回2016年に発表する新作は、『プライウッド・シティ』シリーズのコンセプトと『御存荘』を合体させた『プライウッディ御存荘』、『プライウッド・シティ』シリーズの最新作だ。木製の日本家屋の濡れ縁を戦車の無限軌道、いわゆるキャタピラに見立てた構造と、竹製のキャノン砲、どこか日本家屋のたたずまいを残した構造はオリジナル『御存荘』どおりに、梱包用の木箱をそのまま使った、従来型より小型化されたボディに組み合わさり、『ザ・ローテーターズ』システムが木製のDIYコックピットに搭載される。内部は極小の茶室のような趣だが、家電製品とエレキギターを組み合わせた、ロックンロールの技術を引用したサウンド・システム用のアンプ/スピーカーが積み上がり、ヴォリュームを上げると改造車両のようにかなりうるさい。
オープニングレセプション:2016年3月5日(土) 18:00 – 20:00