東欧アニメーションの世界 -ポーランド・チェコ・クロアチア-
会期: 2015-05-23 - 2015-06-28
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
漫画・アニメーション
開催内容
チェコアニメだけじゃない!かわいい×こわい!?魅力的な東欧アニメーション
「魂」を意味するラテン語animaに由来するアニメーション。止まっているはずの絵や人形に命が宿り動き出す様は、多くの人々を魅了します。本展では、東欧3カ国のアニメーションにスポットを当て、アニメーションはもちろん原画などの貴重な資料によって、その魅力を紐解きます。一見するとかわいいキャラクターが伝える風刺や教訓、美しい画面の中に込められた孤独や不安、アヴァンギャルドな実験アニメーションによる挑戦など、作り手たちの表現は多様です。その多様性の一方、どの作品の奥にも東欧の歴史が通奏低音として流れているようです。戦争、政治体制の転換、グローバル化といった激動の中で生み出されたアニメーションは、時代を映す鏡として私たちに様々なことを伝えてくれるでしょう。
展覧会では個性的な都市とスタジオ、作り手が登場します。イジー・トゥルンカなど、人形アニメの伝統を誇るチェコの首都プラハと、カレル・ゼマンらが活躍した東部の都市ズリーン。第二次世界大戦後に新聞漫画家や画家が集いアニメーションを作り始めたクロアチアの首都ザグレブ。2度のアカデミー賞を獲得したアニメーション・スタジオ「セ・マ・フォル」の拠点、ポーランドの工業都市ウッチ。それぞれの個性と伝統あるアニメーションを伝えるべく、チェコとクロアチアの作品は上映に加えて撮影に使われた人形や原画を展示し、ポーランドの作品は最新のものを交えた作品上映を通してご紹介します。また、関連イベントとして地元・福岡のアニメーションもあわせて発信し、最前線で活躍するクリエイターの仕事から都市とアニメーションの関係を探ります。
■チェコ共和国
チェコのアニメーション草創期に広告アニメーションから実験的なアニメーションまで幅広く製作したカレル・ドダル(1900-1986)。ズリーンで『アリのフェルダ』(1944年)など人形アニメーションを撮ったヘルミーナ・ティールロヴァー(1900-1993)。コマ撮りと実写を組み合わせたSF長編映画で一世を風靡したカレル・ゼマン(1911-1989)。 戦前から挿絵や人形劇で活躍し、戦後まもなくアニメーション映画を手掛け、『チェコの古代伝説』(1952年)を始めとする人形アニメーションで国際的に高く評価されたイジー・トゥルンカ(1912-1969)。シュルレアリスムの表現としてのクレイ・アニメーションによって独自の世界観を築いたヤン・シュヴァンクマイエル(1934- )。日本でも人気の高いチェコアニメーションの魅力的な個性を、パペットや原画、映像や資料でご覧いただきます。
■クロアチア共和国
1956年にアニメーション・スタジオを設立したザグレブ・フィルム。そのグラフィック表現が特徴的な作品群から、アカデミー賞短編アニメーション部門で海外作品として初めて受賞したデュシャン・ヴコティチ(1927-1998)監督の『エアザッツ(代用品)』(1961年)、ボリス・コラール(1933-)監督の戦争の影に怯えて軍拡に進む国家を風刺した『ブーメラン』(1962年)、ネデリコ・ドラギッチ(1936-)監督の『トン・トン』(1972年)、2008年からザグレブ・フィルムの芸術監督を務めるクレシミル・ズィモニチ(1956-)監督の『アルバム』(1983年)などを紹介します。日本では大きく紹介される機会が少なかったクロアチアの作品群について、映像はもとより、原画、セル画、ストーリーボード、背景画などを通して多角的に迫ります。
■ポーランド共和国
セ・マ・フォルは、ポーランド中央部、かつて繊維工業の中心地として知られ、今なお石畳とレンガの街並を残す街ウッチに1947年に設立されたヨーロッパで最も歴史のあるアニメーション・スタジオのひとつです。人形によるストップモーション・アニメーション制作を得意とし、これまでに850本を超える作品を生み出しました。ズビグニェフ・リプチンスキ(1949-)監督の『タンゴ』(1980年)とスージー・テンプルトン(1967-)監督の『ピーターと狼』(2006年)により、アカデミー賞短編アニメーション部門で2度の栄冠を得ています。近年は、自主企画のみならず欧米や日本を含む海外のアニメーションの制作にも活動の幅を広げています。1950年代から近年にかけての作品を、映像や資料を中心にご紹介します。