尾崎愛明展

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会 期
20120918日 -  20120930
開催時間
12時00分 - 19時00分
最終日17:00まで
休み
9/24(月)休廊
入場料
無料
作品の販売有無
販売有
この情報のお問合せ
050-7573-7890
イベントURL
情報提供者/投稿者
開催場所
Gallery KINGYO
住所
〒113-0022 東京都
文京区千駄木2-49-10
最寄り駅
千駄木
電話番号
050-7573-7890

詳細

参加クリエイター

展覧会内容

豊饒の海または津波

1994年、長年捜し求めていた菊の花びらの形をした、オリジナルな素粒子ともいうべきものを発見した。その集積が、森羅万象のそれぞれが放つエネルギー現象を、象徴的に表現出来ると確信して仕事をすすめてきた。それは例えば森や銀河や風や水を表してきた。

2008年、かねて用意してあった白い屏風に、その花びらの形をした素粒子を水に見立てて大きな波のうねりの絵を描いた。それは今迄の私の表現よりも装飾性と具象性の強いものになったが、大きな月と青い波と、その間を流れてゆく棺を模した立体を描き込んだ。月の波(葬送)と題した。私のその時の枕屏風という仕立てだ。

その屏風が完成したあと、150号のパネルを用意して、それが最後になるかも知れない大作の個展を目論んだ。「琳波」というタイトルを立て、全作品を波をモチーフにした個展にしようと計画した。それは装飾的だが、豊かなタブローが揃う個展をイメージしていた。

2009年8月、150号に生命の誕生するエネルギーに満ち、海の幸のあふれる荒々しい大波の絵を描きはじめた。画題を「豊饒の海」と決めた。この150号は、私にとって最後の大作になるだろうと覚悟していた。途中ガンの再発と肺炎という大病と、その後遺症のために仕事はたびたび中断し遅々としていたが、イメージは順調に実っていった。体力のおとろえとは逆に、150号の絵は思いどうりに、ゆっくりとすすんでいった。筆は逡巡することなく、その結果を自分のイメージが追いかけるような楽しい気分を経験していた。私には珍しく色彩にあふれたダイナミックな作品になっていった。それは今迄にない手ごたえを感じている毎日で、作品の完成は80パーセント見えてきていた。

2011年3月11日午後2時46分。そのとき私はアトリエにいて、完成が見えて来ていた150号のパネルにとりついていたが、いつもの慣で、その瞬間は、ゆれるのに身をまかせ、そのゆれのやむのを待つ気分でいた。ところが、いつもとは違うゆれの、ながさと激しさに、次第に不安がよぎり、それがいつまで続くのか、どうしたらいいのか判断もつかず、身も心も完全に無力の状態に陥っていた。そのうちに目の前の壁にくくりつけの本棚がゆさゆさと壁からはがれ落ちて、アトリエの床一面が本で埋めつくされてしまった。150号のパネルは重いためか、壁から動くことはなかったが。

それから連日、津波の言語に絶するテレビの映像を見せられる。

不思議なことが起こった。

私の150号の絵面は何も変わっていないのに、その日以来私に対してその表情が一変してしまった。豊かな冨を抱く豊饒の波という私の意図に関係なく、私の脳裏に打ち込まれたテレビの映像が、大波イコール津波、というイメージに変化させられ、私の絵が荒れ狂う津波の絵としか見えなくなってしまった。画面は作者の私をうらぎって、オブジェクトとしての強さ、すなわちレアリティーを持つダブルイメージを内包発散する重い絵になったように、どうしても見えてしまうのだ。

この世の無常が、絵の上にも同じように現れたのだが、他の人はどう感じるのだろうか。

2012年7月(79才)
尾崎愛明

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