開催時間 |
11時00分 - 19時00分
*Art Week Tokyo 期間中のみ営業時間が変わります |
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休み |
月曜日,火曜日
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入場料 |
無料 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
NANZUKA UNDERGROUND
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒150-0001 東京都
渋谷区神宮前3丁目 30-10 |
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最寄り駅 | 原宿 |
電話番号 | 03-5422-3877 |
この度NANZUKAは、1985年生まれコロラド州オーロラ出身、ニューヨーク在住のアーティストIvy Haldeman(アイビー・ホールドマン)の国内初となる新作個展「On Human Form」をNANZUKA UNDERGROUNDにて開催いたします。本展は、NANZUKA UNDERGROUNDでの2024年最後の展覧会となります。
2008年にアメリカのアートスクールであるクーパー・ユニオンを卒業した後、過去10年以上にわたり絵画やマルチメディア彫刻の実践を続けており、これまでロサンゼルスのFrançois Ghebaly (2024, 2020)やニューヨークのTara Downs (2021, 2018)、上海のYuz Museum (2022) やCapsule Shanghai (2019)などでの個展のほか、ニューヨークのPetzel GalleryやHauser & Wirthなどでのグループ展にも参加するなど、アメリカ国内外で広く展覧会活動を行っています。
ホールドマンの作品には、人間のようにキャラクタライズされたアメリカの消費主義における身近な対象物—バナナ、ホットドッグ、スーツ、ハイヒール—が繰り返し登場します。これらの対象物は、アメリカを中心としたグローバルな消費主義と現代人のセルフイメージというふたつの社会学的・心理学的関心に基づいて選択されています。作品は、繊細な線が特徴のグラフィカルなスタイルで描かれており、全体のトーンは明るくシンプルでありながら、水彩画やインクのような透明感のある色彩やタッチがどこか非現実的な雰囲気を醸し出しています。
今回の展覧会では、ホールドマンによる15点の未発表の最新作品を展示いたします。主題である食べ物や既製服は、歴史的にもアンディ・ウォーホルやクレス・オルデンバーグなどによって、アメリカのポップアートの中で主題とされてきました。ホールドマンは、これらの主題を大衆文化のイメージの盗用としてわざとらしく描くのではなく、極めてクリーンに、現代の都市生活の喧騒から距離を置いて描きます。一方で、ホールドマンは「柔らかさ」を強調して描いています。たとえば、ふわふわしたクッションのような素材に見えるバナナやホットドッグ―しばしば性的なメタファーとしても用いられてきた―は、女性の身体を想起させる優美な曲線を持ち、ジェンダーの撹乱を起こしています。皮膚や生身の身体を思わせるこれらの対象物は、センシュアルでありながら、1960年代のポップアートに見られるような猥雑さは感じられません。
ホールドマンのキャリアは、2000年代半ば以降の、大量のポートレイトやセルフィーのイメージが氾濫する時代と合致しており、その作品もまた同時代的な状況に呼応しています。特に、2010年にサービスが開始され、今もなおメジャーなSNSとして隆盛しているInstagramの参照は必然的です。さらに今日、Covid-19の影響でZoomなどのオンラインミーティングツールが普及し、私たちはかつてないほどにカメラに写る自分自身を目にし、インターネット上に露出する機会が増える中で、他社との関わりやセルフイメージは急速に変化しています。ホールドマンの描くホットドッグは、「自分でそうであると思っている私」と「人からそうであると思われたい私」そして「他人がそうであると思っている私」という複数の自己像の間の不一致に対する戸惑いを表現しており、その気だるくぼんやりとした様子は現代人をアイロニカルに提示しているようにも感じられます。
ホールドマンの作品に登場する対象物は、フェミニズムの視座から古典的な美術の静物画やポートレイトにおける主題選択に脱構築を促す装置としても機能しています。たとえば、静物画において、果物、特に葡萄や桃などは「富」や「威厳」の象徴として描かれてきましたが、それらは「静物画」という名の通り、これらの対象物はそれら自身の感情や、人間や、その動き―女性が中心的に担ってきた家事労働を含む、人間の動き―との関係を喚起することはありません。一方で、ホールドマンが描くバナナは、グローバル化によってアメリカに流通している、比較的安価でもろい果物であり、その取り扱いや、食べるために皮を剥くという行為が人間の手と深く結びついています。ホールドマンは作品のサイズを小さくすることで、従来の静物画との対照性を戦略的に強調しています。
また、近年の現代アートの動向では、ニューヨークのアクティヴィスト集団 Guerrilla Girls(ゲリラ・ガールズ)がアングルの《グランド・オダリスク》を参照し、ニューヨークのメトロポリタン美術館で展示されているヌード絵画のほとんどは女性のヌードであり、女性が客体として強い存在感を示す一方で、アーティスト=主体としての存在感はほとんどないという事実に言及したことは記憶に新しいですが、ホールドマンもまた、カウチソファに横たわる西洋の裸婦像のモデルや日本の浮世絵の美人画のモデル姿を見て、彼女たちが優雅に休んでいるわけではなく、実際のところは画家のために労働しているということに気づいたことがきっかけで、ユーモラスな動きを展開する女性向けビジネススーツを描くようになったと語っています。
このような多角的な視点から、ホールドマンは現代を生きる人間の内面世界を探求しており、従来の美術の枠組みを超えて、爽やかに新しい視点を投げかけています。
本展「On Human Form」において私の描く対象は、それ自体では人間ではありませんが、人間でありたいと願っています。彼らは人間の形を求めているのです。それは、床を転がる煙草の細い筒であったり、マリリン・モンローのクラシックなボブヘアを思わせるバナナの皮の黄金色のカールであったりします。彼らは子どものように抱かれたいと思っている一方で、未来のスター候補の俳優たちのように風に吹かれたいとも思っています。彼らは背筋を伸ばして座ろうとしますが、誘惑の柔らかな曲線から逃れることができないのです。
(Ivy Haldeman)
本展を皆様にご高覧いただけますと幸いです。