空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
会期: 2025-01-11 - 2025-03-23
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
絵画
平面
開催内容
ジャン=ミッシェル・フォロン(Jean-Michel Folon 1934-2005)は、20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとりです。ベルギーの巨匠マグリットの壁画に感銘を受け、美術の道に入ることを決意したフォロンは、21歳のころ、パリに渡ります。そして、作品を投稿したアメリカの有力誌『ザ・ニューヨーカー』『タイム』などで注目され、1960年代初頭にはそれらの表紙を飾るようになります。その後、グラフィック・デザインや版画、水彩画、文学作品の挿絵や舞台芸術など、多彩な才能を発揮し、世界各国で高く評価されました。
柔らかな色彩と軽やかなタッチで表現されたフォロンの作品は、見る人を想像の旅へ連れ出してくれます。そこに展開されるイメージは幻想的でありながらもどこか私たちの日常と繋がっており、世界の見方を変えてくれるようなユーモアとともに、環境破壊や人権など、現実に起きている問題への告発も潜んでいます。フォロンは、やさしく、そして厳しく、この世界と向き合うためのメッセージを残しているのです。
本展は、フォロンの初期のドローイングから水彩画、版画、ポスター、そして晩年の立体作品までを含めた約230点を紹介する、日本では30年ぶりの大回顧展です。フォロンの没後20年、そして彼が生前に設立したフォロン財団の25周年にあたるこの年に、今もなお豊かなメッセージを伝えてくれるフォロンの作品の魅力を、空想旅行をするような気分でめぐります。
[みどころ]
1.フォロン没後20年、日本では30年ぶりの大回顧展
フォロン没後20年、そして彼が生前に設立したフォロン財団25周年にあたる2025年、フォロンの作品の魅力を見つめ直す、日本では30年ぶりの大回顧展です。
2.空想旅行の気分でめぐる―リトル・ハット・マンとともに
フォロンが実際に使っていた名刺“FOLON: AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES(フォロン:空想旅行エージェンシー)”をきっかけに、空想の旅にでかけるような気分で、作品をめぐります。フォロンの作品にたびたび登場するリトル・ハット・マンを旅の道連れとして、フォロンのメッセージに耳を澄ませてみましょう。
3.線のユーモア
ベルギーからパリに渡ったフォロンは、毎日ドローイングを描いていたといいます。軽やかな線によって生み出されるユーモアたっぷりのイメージは、ありふれた日常に新しい気づきをもたらしてくれるでしょう。
4.色彩の魅力
フォロン作品の大きな魅力は、その美しい色彩にあります。グラデーションやにじみなどを巧みに使い、詩情あふれる美しい世界が生み出されます。
5.現代に響くメッセージ
作品の中に入っていきたくなるほど幻想的な世界。しかし細部をよく見てみると、現実に対する厳しい告発が潜んでいます。没後20年が経った今でも、フォロンの残したメッセージは、力強さを失うことなく、私たちに訴えかけてきます。
展示構成
プロローグ 旅のはじまり
フォロンが実際に使っていた名刺“FOLON: AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES(フォロン:空想旅行エージェンシー)”が今回の旅のチケット。旅の始まりを告げる本章では、初期のころから描いていたドローイングや写真、彫刻などを展示し、日常に新たな視点を与えてくれる、フォロン流の世界の見方を紹介します。
第1章 あっち・こっち・どっち?
フォロンの作品にたびたび登場する矢印。旅先では実に頼りになる道案内の矢印ですが、フォロンが描く矢印は、あちこちへと飛び出し、旅人を迷宮に迷い込ませてしまいます。矢印に翻弄される街や人間を描くことは、フォロンにとって自立したアーティストとして進んでいこうとする強い意志表明でもありました。矢印に惑わされながらも、なんとか矢印を見極め、旅人ひとりひとりで選び取ること、そこから、空想の旅の第一歩が始まるのです。
第2 章 なにが聴こえる?
「耳を澄ませば、世界が動いている音が聴こえてきます」。そう語るフォロンの耳に届いていたのは、どのような音だったのでしょうか。軽やかなタッチと柔らかな色づかいで描き出されるのは、この世界で起こるさまざまなできごと。よく見てみると、あまり穏やかな場面ではありません。フォロンが作品に込めたメッセージに耳を澄ませ
てみましょう。
第3 章 なにを話そう?
見る人が絵と対話することを望んでいたフォロン。世界の「いま」を広くダイレクトに手段として、フォロンは企業や公共団体などの依頼で手がけた600 以上ものポスターを、絵画作品と同じくらい大切にしていました。本章ではそうしたポスターや、アムネスティ・インターナショナルの依頼をうけて制作した『世界人権宣言』の挿絵原画などから、さまざまな作品で見る人に語りかけてきたフォロンの魅力を紹介します。
エピローグ つぎはどこへ行こう?
「私はいつも空を自由に飛んで、風や空と話してみたいと思っているのです」と語っていたフォロンは、かろやかに世界を飛び回り、旅先での経験を創作のエネルギーとしていました。この世界の厳しい現実を静かに告発しつつも、同時にその美しさを表そうとしたフォロン。本展の旅の終わりは、彼が愛してやまなかった海と水平線を描いた水彩画や、旅先でのスケッチブック、メール・アートなどで締めくくります。想像力という翼で、地平線や水平線を越えていくフォロンの作品は、人生という旅へこぎ出す希望を、私たちにもたらしてくれるでしょう。