企画展 うるしとともに― くらしのなかの漆芸美

象彦(八代 西村彦兵衛) 《扇面謡曲画蒔絵会席膳椀具》 大正時代・20世紀 泉屋博古館

象彦(八代 西村彦兵衛) 《扇面謡曲画蒔絵会席膳椀具》 大正時代・20世紀 泉屋博古館

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会 期
20240120日 -  20240225
開催時間
11時00分 - 18時00分
※金曜日は19時00分まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
休み
月曜日
2月12日(月・祝)は開館、翌2月13日(火)休館
入場料
有料
一般1,000円(800円)、高大生600円(500円)、中学生以下無料
※20名様以上の団体は( )内の割引料金 ※障がい者手帳ご呈示の方はご本人および同伴者1名まで無料
作品の販売有無
展示のみ
この情報のお問合せ
泉屋博古館東京
情報提供者/投稿者
開催場所
泉屋博古館東京
住所
〒106-0032 東京都
港区六本木1-5-1
最寄り駅
六本木一丁目
電話番号
050-5541-8600(ハローダイヤル)

詳細

展覧会内容

アジアの人々が見出した不思議な樹液、漆。ある時は天然の接着剤、またある時には表面に艶と光沢を与える塗料として活用されてきました。そして漆の特性を活かして、各地域の事情や美意識に応えた様々な漆芸技法が花開きました。東洋の人々のくらしのなかには、その技で生み出された多彩な漆芸品が深く根差しています。本展では、住友コレクションの漆芸品の数々を、用いられてきたシーンごとにひもとき、漆芸品を見るたのしみ、使うよろこびについてもう一度考えたいと思います。

また同時開催として、漆芸品と同じく私たちのくらしを彩ってきた陶磁器のなかから、近年当館へご寄贈いただいた瀬川コレクションの染付大皿を受贈後初めて公開します。大皿に表された斬新で大胆な意匠は、圧倒的な迫力で粋な青と白の世界へみなさまを誘います。

展覧会の構成
第一展示室
シーン1 宴のなかの漆芸美
今を生きる私たちにとって、漆と最も身近に接する機会は食事のときかもしれません。艶やかな漆器の塗り肌は食材の色味を引き立てます。さらに蒔絵などの華やかな装飾が、食卓に季節感や情趣を添えます。一方で、漆の塗膜によって油汚れなどは洗い流しやすくなりますから、やはり漆は実用にも優れた素材です。まずは「食事」を入り口に、うるしとくらしについて考え始めてみます。
当館が収蔵する住友コレクションは、江戸時代から続く大坂の商家・住友家が蒐集し、実際に用いてきたものです。本展示室では、住友家のハレの日の宴を彩った漆芸の食器・酒器をご紹介します。みなさまを料理でおもてなしすることはできませんが、客人をもてなそうとする主人の意を汲んで漆芸品を作り上げた人々の技をご堪能ください。

第二展示室
シーン2 茶会のなかの漆芸美 / シーン3 香りのなかの漆芸美
シーン4 檜舞台のうえの漆芸美
当館が収蔵する住友コレクションの大部分を形成したのは、15代住友家当主・住友吉左衞門友純(すみともきちざえもんともいと)〔1864~1926〕です。春翠(しゅんすい)という号をもち、上方を代表する近代数寄者のひとりでした。茶の湯や香に親しんだ春翠は、茶席や香席を彩る漆芸品を数多く集め、自身が開く会で使用するのを楽しみました。
また春翠は、古典芸能のうち能楽をとりわけ好み、生涯にわたって稽古に励みました。蒐集した能道具は今も残り、特に楽器の数々は美しい蒔絵で装飾されており、漆芸品としても見どころの多い作品ばかりです。

第三展示室
特集 漆芸の技法―彫漆・螺鈿・蒔絵
漆はウルシの木から取れる樹液です。この樹液は、ウルシの木が傷ついたとき、その傷を塞ぐためのいわば自己防衛として分泌されるものです。傷口にしっかりくっついて、堅く固まり、木内部へ水はもちろん酸・アルカリまで侵入を拒み、腐敗を防ぎます。この樹液に、東南アジアから東アジアにかけての人々は、接着剤や防腐のためのコーティング剤などとしての可能性を見出し、独特の樹液文化を形づくります。
さらに面白いのは、漆を単に有用な樹液として利用するので終わらせず、その特性を活かして美的世界を切り開いた点にこそあります。たとえば、一度固まると頑丈な塗膜をつくる漆は、刀による彫刻を可能としました〔彫漆〕。また、塗ってから固まるまで時間を要するという性質も重要でした。漆が硬化するまでの時間が、貝殻をつけたり〔螺鈿〕、金銀粉を蒔いたり〔蒔絵〕する余地になり、多彩な技法が編み出されます。そして何より人々を惹きつけたのは、つややかで美しい漆の塗り肌でしょう。

シーン5 書斎のなかの漆芸美 
誰もが夢見る自分だけの書斎。読書をしたり、思索に耽ったり、文章を綴ったり、絵を描いたり、楽器をつま弾いたり、そして友とおしゃべりしたり ―書斎での自適なくらしはいつの時代も憧れの的で、その憧れは中国の文人たちにまで遡ります。中国文人は、自らの書斎である文房を理想の空間にするためには、そこに備えるべき道具にも清らかな美しさが必要だと考えました。そこで、重宝されたのが漆芸の文房具です。文人たちの願いがこもる吉祥のモチーフを隅々まで表そうとして駆使された彫漆や螺鈿技法の細緻さには驚くばかりです。思わず、本当に実用の品だったのか、それとも鑑賞に特化した用途だったのか考えてしまいます。
一方で、蒔絵で華やかに彩られた日本の文房具には、四季の移ろいを感じさせる花鳥風月の意匠が多く見られます。また、物語の一場面を想像させる図案を表すことで、取材した物語世界の中から情趣を引き出す作品も見られます。季節を感じ取り、文学と美術に思い巡らせるのも、書斎での楽しみのひとつでしょう。

お別れに うるしと友に ―漆芸品を贈る
煌びやかで美しく、耐久性にも優れた漆芸品は、贈答の品としても喜ばれました。住友家でも、親しい人々に漆芸品を度々贈っており、なかでも海外からの客人には蒔絵で彩られた作品を友好の証としてプレゼントし、喜ばれています。まさに日本の工芸を代表する存在として漆芸品が海外へ渡っていった一例と言えるでしょう。
当たり前ではありますが、贈答した漆芸品はもう住友コレクションにはありません。ところが反対に、友人たちからプレゼントされた漆芸品は今も大切に残されています。本展の最後は、そうした交友の証として住友家にもたらされた漆芸品と、当主が娘に贈った雛祭りの会席膳で締めくくります。

第四展示室
受贈記念 「伊万里・染付大皿の美」
江戸時代後期、料理文化の隆盛とともに、料理を盛り付ける「うつわ」もより華やかになり、さまざまな文様が描かれた直径40cmを超える大皿が数多く生産されました。染付大皿が生み出されたのは肥前・有田。有田から伊万里の港へと運ばれた大皿は、日本の各都市へと流通し、往時の宴会の場を盛り上げました。
描かれるのは、獅子牡丹、竹に虎や松に鷹などの伝統的な意匠から、鯉滝登り、恵比寿に大黒、玉取龍などのめでたいもの、また、当時大流行していた浮世絵をもとに描かれたような図柄、さらには洒落を利かせたものまで多岐にわたります。絵付け職人たちの美意識が反映された、斬新で大胆な文様の大皿に目を見張ることでしょう。この度は、染付大皿に魅了され、生涯に渡り染付大皿を収集し続けた故・瀬川竹生氏の染付大皿コレクションを、受贈記念として特別に公開致します。染付大皿の美の世界をお楽しみください。

主催・協賛・後援

主催:公益財団法人泉屋博古館、日本経済新聞社
担当学芸員:竹嶋康平(泉屋博古館 学芸員 / うるしとともに) 森下愛子(泉屋博古館東京 主任学芸員 / 伊万里・染付大皿の美)

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