遠距離現在 Universal / Remote
会期: 2024-03-06 - 2024-06-03
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
現代アート
開催内容
コロナ禍の日常生活の中で私たちが感じるようになった、ソーシャル・ディスタンシングによる緊張感、医療不足、より不安定となった雇用など、社会/経済全般における諸問題は、決して今に始まったことではありません。むしろ、ウイルスと同様に、パンデミックという状況によってよりはっきりと明るみに出た、世界各地の人々が同時に共有する問題と言えるでしょう。人、資本、情報が世界規模で移動する20世紀後半以降のこれまでの社会は、2010年代より本格化したスマートデバイスの普及とともに、オーバーツーリズム、生産コストと環境負担の途上国への転嫁、情報格差など、それぞれのグローバルな移動に伴う問題を抱えたまま2020年を迎えました。そして、同じく国境のないパンデミックの発生により、人の移動には不意のストップがかかったものの、資本と情報の移動が止まる気配はありません。かえって、資本や情報の本当の姿が、垣間見えているようにも思えます。豊かさと貧しさ。強さと弱さ。私たちの世界のいびつな姿はますます露骨に、あらわになるようです。
展覧会タイトル「遠距離現在」は、ソーシャル・ディスタンシングや非対面コミュニケーションといったコロナ禍社会の条件はもちろんのこと、資本と情報が世界規模で移動する今世紀の状況をふまえたものでもあります。展示予定作品の多くは2020年以前のものですが、監視システムの過剰や精密なテクノロジーのもたらす滑稽さ、また人間の深い孤独を感じさせる作品群は、今の時代、あるいはこれからのポストコロナ時代の世界と真摯に向き合っているようにも見えます。本展は、全世界(Pan-[全..., 汎... の意])の規模と、非対面の遠隔(Remote)という二つの視点から、グローバル資本主義やデジタル化社会といった現代アートにおける従来のテーマを新たに捉えなおすものです。1.「Pan- の規模で拡大し続ける社会」、2.「リモート化する個人」の構成からなる本展では、このような社会的条件が形成されてきた今世紀の社会の在り方について取り組んできた作家の作品をご紹介します。
展示構成
1. 「Pan-」の規模で拡大し続ける社会
感染を防ぎ、人流を抑制するための国家権力の強化と監視システムの容認という問題は、それなりの成果を上げながらも、同時にポストコロナ社会の大きな課題として残りました。人々は、かつて経験しなかったほどの、国家の力と国民の自由のバランス感覚を試されているとも言えます。しかし資本と情報の移動は、それと関係なく加速を続け、人々を煽り続けるでしょう。近年のデジタル通貨導入の動きや、ブロックチェーンを基盤とする NFT(非代替性トークン)経済の過熱もまた、遠隔でも社会が機能し、拡大し続けるための仕組みでもあります。このような資本と情報の問題意識に着眼した作品をとりあげます。
2. 「リモート」化する個人
コロナ禍の間もこのグローバル社会は世界規模で拡大を続けます。しかし不思議なことに、逆説的に、個人のリモート化は進行してしまいます。オンラインで個人と個人が結びつき、家を出ずして国境をまたぐことは、もはや当たり前のことになっています。コロナ禍がリモート化を加速しましたが、今後も一層、地理的な距離感は消滅していくでしょう。縁もない、見ることも実際に赴くことも ない世界へ向けて黙々と労働する姿は、どこか孤独で、底抜けの寂しさを感じさせます。それは、人間の心に大きな影響を与えるのではないでしょうか。「非接触」を前提に「遠隔化」される個人の働き方と居住について考えます。
出品作家
井田大介 Daisuke Ida
徐冰( シュ・ビン ) Xu Bing
トレヴァー・パグレン Trevor Paglen
ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ + ヒト・シュタイエル+ミロス・トラキロヴィチ Giorgi Gago Gagoshidze+Hito Steyerl+Miloš Trakilović
地主麻衣子 Maiko Jinushi
ティナ・エングホフ Tina Enghoff
チャ・ジェミン Jeamin Cha
エヴァン・ロス Evan Roth
木浦奈津子 Natsuko Kiura