開催時間 |
12時00分 - 18時00分
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休み |
日曜日,月曜日,祝日
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入場料 |
無料 |
この情報のお問合せ |
ANOMALY
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒140-0002 東京都
品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F |
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最寄り駅 | 天王洲アイル |
電話番号 | 03-6433-2988 |
ANOMALYでは、2023年11月18日(土)より12月16日(土)まで、山本糾 個展「発光する場」を開催いたします。
1950年生まれの山本は、1974年に武蔵野美術大学商業デザイン科を卒業し、写真作品の発表と現代美術の撮影に携わってきました。1982年に発表した《Bottles》シリーズ以降、現在まで一貫して「水」を撮影対象の中心に置き、制作を行ってきたことで知られています。本展では《波動場》や《豊稔池ダム》をはじめとする最新作に加え、記念碑的作品《Bottles》や代表作《考える水》などを交えた構成となり、山本の現在の仕事とこれまでの仕事を一度にご覧いただける、またとない機会となっております。
山本は水のことを、地上にあって宇宙の理を可視化するものだと語ります。確かに、山本が撮影する水は、重力、引力、浮力などのメタファーとして度々登場し、その巨大な宇宙の運動は写真の大きさに縮減し提示されています。「縮減」のことをレヴィ・ストロースは著書『野生の思考』の中で「認識過程の転倒」と言い、続けて「原寸大の物ないし人間を認識しようとする場合とは逆に、縮減模型では全体の認識が部分の認識に先立つ」と述べています。山本はかつてカタログでこの発言に触れ写真における認識との一致を語っています。
山本は近年、長年使用してきたフィルムカメラに別れを告げ、デジタルカメラへと制作の伴侶を変えました。その理由を作家は、「フィルムだと写真が目的になるが、デジタルだと手段になる」と言います。まるで”画家宣言”のようでもあるこの発言ですが、当然、電子情報で像を獲得できるデジタルカメラは、前者と比較して画面規格の自由度が上がり、編集も容易となり、より作家の目指すイメージに近づけていくことができます。山本の発言は、「目の前のありのままを映す」のではなく、更にその先へと意識が向いていることを暗示しています。
「縮減による現象の提示」といった、かつての山本の仕事は大きく姿を変えたのでしょうか。
今夏、Gallery MAZEKOZEで発表された《波動場》。海面の波を、望遠レンズを使い一部ずつ撮影し、それらを繋げることで一つの作品としたこの仕事からは、確かに作家のイメージする作品像への手段として、カメラが使用されていることが分かる一方、作家のイメージを拒み続ける波という現象の姿が、結果的には作品の主眼として現れています。われわれが作品から受ける強烈な印象は、他でもなく現象としての水の姿そのものでしょう。
「クローズ・アップによって空間はひろがり、高速度撮影によって運動が幅をひろげた。物を拡大するということは、単に「これまで」ぼんやりと見えていたものを明確にするということだけではない。むしろ物質のまったく新しい構造をあらわにするのである。同様に、高速度撮影も、単にみんなが知っている運動のモチーフをあらわにするだけではない。この既知のモチーフのなかに未知のモチーフを発見させるのである。(中略)こうしてカメラに向かって語りかける自然は、肉眼に向かって語りかける自然とは、別のものだ、ということがあきらかになる。意識に浸透された空間のかわりに無意識に浸透された空間があらわれることによって、自然の相が異なってくるのである。」
目の前のありのままよりも先へという山本の意識は、作家の自由な想像力を発露する場としてではなく、「水」による現象(物質)を「光」という物質(現象)で固定する場へと向いています。それはかつてフィルムカメラで行なっていた仕事の刷新ではなく、深化です。
肉体と地続きに広がる現実の世界と、それをありのままに見ることが決してできない人間。写真という虚像によって認識の外側に広がる無限の現象を発見した時、われわれは山本糾によって逆説的に現実を突きつけられるのです。
是非、お越しいただき、ご高覧いただければ幸いです。
「岩壁の突端から落下する水、渦巻きながら流れる水、岸壁に打ち寄せる波、天空に開かれた高山の山頂の水、ダムの放流口から放出される水。地上の水あるところは地球に働いている宇宙の力が可視化されているところです。これらの水と光が融解して発光するところ、そこが私の写真の場所です。」−山本糾
オープニングレセプション
2023年11月18日 (土) 17:00 – 19:00
*作家も在廊いたします。
トークイベント
日時:12.9(土)18:00-19:30
登壇者:山本糾、石田哲朗 (東京都写真美術館学芸員)