開催時間 |
11時00分 - 18時00分
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休み |
日曜日,月曜日
日、月 |
入場料 |
無料 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
info@lokogallery.com
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イベントURL | |
情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒150-0032 東京都
渋谷区鶯谷町12-6 |
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最寄り駅 | 代官山 |
電話番号 | 03-6455-1376 |
LOKO GALLERYではこの度、平松麻による個展「脈脈」を開催いたします。
“ 描画が始まれば全てが何かの前兆となる
だからこそ 源まで遡る勇気も湧いてくる
脈脈と続く命綱を辿ればもっと潜れそうだ
体内に広がる景色は 私だけがとらえているものではないような気がしている ”
平松麻
そのとほりのこのけしき 穂村 弘
平松麻さんの絵を初めて見た時、独特の存在感に驚いた。描かれているものはシンプルだけど、周囲の空気まで濃厚にまとっているようで目が吸い寄せられる。美術の知識がない私にはわからないが、普通の静物画ではなく、いわゆる抽象画ともどこか印象が違っているようだ。失礼と知りつつ、思わず訊いてしまった。
「これは何ですか。というか、この世界はどこ?」
「心の中に実在するものを描いてるんです」
不思議な答えだった。心の中に実在するってどういうことだろう。現実にあるものはもちろん実在する。また、夢で見たものは夢の中の私にとっては確かに実在している。ただ、それは目が覚めると消えてしまう。でも、麻さんの世界は消えることがなく、心の中に永続するらしい。
「その世界は現実の街のように自由に歩き回ることはできないんです。だから、偶然、新しい景色が見つかると、あ、ここにこんなものがあったんだ、と自分でも驚きながら描いています」
ふと、宮澤賢治の有名な「心象スケツチ」という言葉を思い出した。賢治は『春と修羅』の序に「それらも畢竟こゝろのひとつの風物です/たゞたしかに記録されたこれらのけしきは/記録されたそのとほりのこのけしきで」と書いている。「そのとほりの心象スケツチ」「そのとほりのこのけしき」と実在性が繰り返し強調されているのだ。
未知の景色の一つ一つが、麻さんには「そのとほり」の具体として見えているらしいことに驚かされる。
「じゃあ、絵を描くことで自分だけの景色の地図が広がってゆくんですね」
「はい。ただ自分の景色とは何か。地図を増すのは向こうから導かれるのか。こっちから向かうことなのか。自分でもまだわからないんです」
奇妙な連想かもしれないが、私の頭には宇宙飛行士の姿が浮かんだ。彼等もまた、誰も見たことのない景色を求めて人類の地図を広げる使命を帯びている。麻さんの心の世界を自分も訪れてみたい、と思う。いや、本当は絵の前に立った瞬間に、その願いは叶っているのかもしれない。
穂村弘(ほむらひろし)
歌人。一九六二年札幌生。九〇年、第一歌集『シンジケート』でデビュー。短歌をはじめとして、エッセイ、評論、絵本、翻訳などを手がける。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』『ラインマーカーズ』『世界音痴』『水中翼船炎上中』『蛸足ノート』など。伊藤整文学賞、講談社エッセイ賞、若山牧水賞他を受賞。
EVENT 食事会 「綯う景(なうけい)」
12/1[金]、2[土]、3[日] 完全予約制
※ 詳細はLOKO GALLERYホームページをご参照ください。