MAU M&L コレクション:絵画のアベセデール
会期: 2023-06-01 - 2023-07-02
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
彫刻
開催内容
当館は大学に属する美術館として、教育・研究に資することをひとつの目的としながら、半世紀以上にわたり活動を続けてきました。そのなかで集められた作品群、とりわけ約440点からなる絵画コレクションは、教員や卒業生、その影響関係にある作家によるものが多くを占め、本学の教育の幅広い射程を示すかのように、多彩な様相を見せています。
タイトルにある「アベセデール」は仏語でABCD、入門書という意味を併せ持ちます。本展は、入門書として絵画の本質を広範に拾い上げることはかないませんが、AはAtelier(アトリエ)、BはBalance(均衡)、CはCouleur(色彩)など、絵画を語り、思考するためのいくつものキーワードによって、当館のコレクションを紹介するものです。本学の教育における関係性、時代や技法といった大きな括りからは少しだけ離れて、ときに描かれた当初のコンテクストをいったん保留にしながらも、多様な視点のもとに作品を並置することは、あらためて個々の作品の姿を見つめ直すひとつのきっかけとなるでしょう。
あらかじめ定められたAからZの音素の連なりにその流れを委ねながら、作品と向き合うための視点、いわば思考の起点となるヴァリエーションを提示すること、それこそが本展の意図するところといえます。絵画を語るためのいくつもの糸口を探る試みが、コレクションの新たな魅力と、絵画の持つ豊かな世界を実感する機会となることに期待します。
展示構成
本展では、AからZまでの複数の項目のもと、約50点の作品を紹介いたします。項目には、「Couleur(色彩)」「Ligne(線)」「Main(手)」「Structure(構造)」「Terre(地面、土地)」「Vague(波)」など、絵画が内包する基礎的な要素からそうでないものまで、個々の作品と向き合い、考えるためのいくつもの視点を設定しました。細分化された項目の連続によって、展覧会全体を貫く堅固な物語を構築するのではなく、さまざまなイメージが空間に並置されることによってさまざまな語りが発生し、共存する場としての展覧会を組み立てます。
主な出品作品
日本の抽象絵画の先駆的存在である山口長男や村井正誠、1000点以上の作品が当館に収蔵されている柳瀬正夢の代表的な油彩画のほか、教授退任を期に寄贈をうけた近年の収蔵作品など、幅広い年代の作品が並びます。また油彩画に限らず、帝国美術学校で教鞭を執った服部有恒の日本画、ジャスパー・ジョーンズ、エリザベス・マーレイの版画、麻生三郎や毛利武彦の素描などもあわせて展示します。さまざまなキーワードのもと、大型の代表作だけでなく、これまで展示する機会の少なかった小品へも同様に光を当て、当館の多彩なコレクションをご紹介します。
加えて本展では、本学の前身である武蔵野美術学校の頃より長らく教員を務め、絵画教育に大きな功績を残した、三雲祥之助の作品を多く紹介します。没後、学内では彼の名を冠した奨学金制度が制定され、またその作品の大半は当館へと寄贈されました。本企画を通して、新鮮な眼差しで彼の作品を見つめ、その魅力を再発見する場となれば幸いです。
【出品作家(一部のみ記載・生年順)】
服部有恒(1890-1957)、柳瀬正夢(1900-1945)、三雲祥之助(1902-1982)、
山口長男(1902-1983)、村井正誠(1905-1999)、森芳雄(1908-1997)、
横地康国(1911-1990)、藤井令太郎(1913-1980)、麻生三郎(1913-2000)、
佐藤真一(1915-1982)、毛利武彦(1920-2010)、赤穴宏(1922-2009)、
松樹路人(1927-2017)、中川美智夫(1928-2008)、藤林叡三(1928-1996)、
ジャスパー・ジョーンズ(1930-)、エリザベス・マーレイ(1940-2007)ほか