ルーヴル美術館展 愛を描く

ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》1777-1778年頃パリ、ルーヴル美術館 Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Michel Urtado /distributed by AMF-DNPartcom

ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》1777-1778年頃パリ、ルーヴル美術館 Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Michel Urtado /distributed by AMF-DNPartcom

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会 期
20230301日 -  20230612
開催時間
10時00分 - 18時00分
毎週金・土曜日は20時00分まで
※入場は閉館の30分前まで
休み
火曜日
※ただし3/21(火・祝)・5/2(火)は開館、3/22(水)は休館
入場料
有料
一般2100円、大学生1400円、高校生1000円、中学生以下は入場無料
※障害者手帳をご持参の方(付添の方 1名含む)は入場無料 ※2023年3月18日(土)~ 31日(金)は高校生無料観覧日(要学生証提示) ※混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入します。詳細は展覧会 HPのチケット情報をご覧ください
作品の販売有無
展示のみ
この情報のお問合せ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
情報提供者/投稿者
開催場所
国立新美術館
住所
〒106-8558 東京都
港区六本木7-22-2
最寄り駅
乃木坂
電話番号
050-5541-8600(ハローダイヤル)

詳細

展覧会内容

人間の根源的な感情である「愛」は、古代以来、西洋美術の根幹をなすテーマの一つでした。ギリシア・ローマ神話を題材とする神話画、現実の人間の日常生活を描く風俗画には、特別な誰かに恋焦がれる神々・人々の情熱や欲望、官能的な悦び、あるいは苦悩や悲しみが、様々なかたちで描かれています。一方、宗教画においては、神が人間に注ぐ無償の愛、そして人間が神に寄せる愛が、聖家族、キリストの磔刑、聖人の殉教といった主題を介して、象徴的に表されています。
 本展では、西洋社会における様々な愛の概念が絵画芸術にどのように描出されてきたのか、ルーヴル美術館の膨大なコレクションから精選された74点の絵画を通して浮き彫りにします。16世紀から19世紀半ばまで、西洋各国の主要画家の名画によって愛の表現の諸相をひもとく、かつてない趣向の展覧会です。ぜひご期待ください。

[展示構成]
プロローグ 愛の発明
ヨーロッパ世界の文化には、古代ギリシア・ローマとキリスト教という大きな二つの源流をたどることができます。ルネサンス以降の西洋の画家たちは、一方では古代神話、他方では聖書や聖人伝から題材を得ながら、愛という複雑な感情をさまざまなかたちで絵画に表現してきました。本展の扉を開くこのセクションでは、これら二つの文化における愛の始まりの象徴的な表現を紹介します。
 ギリシアの哲学者たちは愛の概念をいくつかに分類しました。その一つがエロス(性愛・恋愛)です。この愛を司る神は、ギリシア神話ではエロス、ローマ神話ではキューピッド、または愛を意味するアモル(Amor)の名で呼ばれ、誰かに恋焦がれる感情は、この愛の神が射た矢が心臓に当たった時に生まれると考えられました。フランソワ・ブーシェの《アモルの標的》には、まさに愛の誕生の瞬間が描き出されています。
 旧約聖書によれば、神は最初の人間アダムを作ったのち、アダムのあばら骨から最初の女性エバを作り、二人を夫婦にしました。聖書の物語では、アダムとエバの結びつきはなによりも子孫繁栄のためであり、愛という言葉で説明されてはいません。けれども、ピーテル・ファン・デル・ウェルフの作品《善悪の知識の木のそばのアダムとエバ》に見られるような、調和に満ちたアダムとエバの姿には、キリスト教の道徳観に則した夫婦の愛の絆が感じられます。

第 1 章 愛の神のもとに――古代神話における欲望を描く
ギリシア・ローマ神話の愛は、愛する者の身も心も全て所有したいという強烈な欲望と一体となっています。本章では、このような欲望に突き動かされる神々や人間の愛の表現を、大きな物語を追うような形で紹介していきます。
 神話では、愛の神の矢で射られた者は、その直後に目にした人物に恋心を抱きます。つまり、見ることによって、愛̶̶欲望がかき立てられるのです。神々や人間が、意中の相手の無防備な寝姿を一方的に眺める場面を描いた神話画には、「眼差し」を通した欲望の表現を見いだすことができるでしょう。ヴァトーの《ニンフとサテュロス》は、その好例です。
 神であれ人間であれ恋に落ちた者は、相手を手に入れようと行動しますが、絵画では、その際の戦略が性別によって描き分けられています。男性の場合は身体の強さ̶̶暴力を利用します。神話画に頻出するのは、セバスティアーノ・コンカの作品《オレイテュイアを掠奪するボアレス》のように、男性が目当ての女性を追いかけたり、力ずくで連れ去ったりする場面です。一方、女性の場合は、ドメニキーノの作品《リナルドとアルシーダ》のように、外見の美しさや性的魅力、あるいは魔力や妖術を用いて男性を誘惑する物語がしばしば画題とされました。
 神話上の恋人たちの愛は、バッカスとアリアドネ、アモルとプシュケなど、結婚というハッピーエンドを迎えるものもあります。しかし、絵画に数多く描かれたのは、恋人たちの片方が思わぬ事故で命を落とす、あるいは許されない恋に落ちた二人がどちらも死を選ぶといった、悲劇の結末でした。
 愛をテーマとする神話画には、物語場面ではなく、愛の神アモルをモチーフとした装飾的な絵画もあります。王侯貴族の宮殿や邸宅の室内装飾には、有翼の子どもの姿をした可愛らしいアモルたちがしばしば見いだされます。本章ではこうした作例も紹介します。

第 2 章 キリスト教の神のもとに
キリスト教の愛のとらえ方のなかで非常に重要な位置を占めるのは、孝心をはじめとする親子愛です。そこには、愛する者を所有するというギリシア・ローマ神話の愛とは対照的に、愛する者のために自分を犠牲にする愛が見いだされます。「ローマの慈愛」や「放蕩息子」のテーマを扱った絵画には、このような犠牲的な愛の規範が描き出されています。
 16世紀、プロテスタントによる宗教改革は、聖人の絵画や彫刻を祈りに用いることを否定しましたが、巻き返しを図ったローマ・カトリック教会はこれらを肯定しました。この流れのなかで、聖母マリアと幼子イエスを中心に据えた「聖家族」の絵画は、教会のためだけでなく、個人の祈祷用としても盛んに描かれるようになります。人々はこうした作品に親子愛のモデルを見いだし、自分の家族を重ね合わせたことでしょう。
 「聖家族」がキリスト教の愛の穏やかな側面を担ったとすれば、「キリストの磔刑」すなわち「受難」のテーマは、その厳しい側面を受け持っています。父なる神は、人類を救うために、我が子イエスが十字架にかけられるという究極の犠牲を受け入れました。その意味で、磔刑の主題は人間に対する神の愛と結びつけられます。また、聖人たちの殉教を描いた絵画にも、神への愛のためなら苦痛も死も厭わないという犠牲の側面を見てとることができます。とはいえキリスト教の絵画であっても、聖人たちの「法悦」のように、性愛を感じさせるテーマもありました。深い信仰から忘我の境地に至り、愛する神と一体となる神秘体験をした聖人たちは、概して恍惚とした表情で描かれ、官能性を帯びています。本展ではマグダラのマリアを主題にした作例を紹介します。

第 3 章 人間のもとに――誘惑の時代
古代神話の愛の物語は西洋絵画の普遍的な主題であり続けましたが、その一方で、オランダでは17 世紀、フランスでは18世紀に入ると、現実世界に生きる人間たちの愛が盛んに描かれるようになります。
オランダの風俗画では、身分や年齢を問わず、さまざまな男女の人間味あふれる愛の諸相が描かれました。酒場で顔を寄せ合う庶民の男女、愛の売買を取引する若者と取り持ち女、小奇麗な室内でともに音楽を奏でる上流市民の恋人たち…。オランダの画家たちは、こうした場面をまるで現実の一コマを切り取ったかのように生き生きと描きつつ、象徴的な身振りやモチーフを駆使して、性愛をめぐる寓意を巧みにしのばせました。一見、愛とは無関係に見えるホーホストラーテンの《部屋履き》は、こうした暗示的な表現の妙味を堪能できる作品です。
 一方、18 世紀のフランスでは、ヴァトーが創始した絵画ジャンルであるフェット・ギャラント(雅なる宴)が流行し、自然のなかで上流階級の男女が会話やダンスをしながら、誘惑の駆け引きに興じる優雅な場面が人気となります。世紀後半には、ブーシェの《褐色の髪のオダリスク》のように、女性の性的魅力をあからさまに強調した絵画が、主として個人のコレクターのために盛んに描かれました。また、この時代のエロティシズムのアイコン的存在であるフラゴナールの《かんぬき》では、悦楽にも暴力にも通じうる性愛という、最も繊細で複雑なテーマに光が当てられています。
 他方で 18 世紀後半は、啓蒙思想の発展とブルジョワ階級の核家族化を受けて、結婚や家族に対する考え方が変化した時代でもありました。夫婦間の愛情や子どもへの思いやりといった感情の絆が尊重されるようになり、画家たちも、夫婦や家族の理想的関係を物語る肖像画や、結婚を主題とした絵画を制作しています。

第 4 章 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇
フランス革命の勃発(1789 年)を受けて身分制が解体されたフランス社会では、18 世紀末から19 世紀前半にかけて、結婚に際し、身分や家柄ではなく、愛情に基づく絆を重視する傾向が次第に強まっていきます。このような転換期に差しかかっていた18世紀末には、手つかずの自然のなかで純朴な若者たちが愛を育むという、ロマンティックな牧歌的恋愛物語が文学でも美術でも流行しました。新古典主義の画家フランソワ・ジェラールの傑作《アモルとプシュケ》では、美しい牧歌的風景のなかに配された、はかない思春期を思わせる恋人たちの姿に、無垢な愛に対する当時の関心を読みとることができます。
 成熟の途上にある思春期の若者特有の両性具有的な身体は、新古典主義の絵画のなかで、しばしば男性裸体の理想美の表現と結びつけられました。ギリシア・ローマ神話の男性同士の愛の物語に題材を得たクロード=マリー・デュビュッフの《アポロンとキュパリッソス》は、その好例です。
またこの作品には、ロマン主義の特徴である破滅的な愛のテーマが見いだされます。普遍性や理性よりも、個人の主観や感情を重視したロマン主義の芸術家たちは、ピュアで情熱的な愛で結ばれた恋人たちが不幸な結末を迎える文学作品̶̶古代神話、ダンテ、シェイクスピア、バイロン̶̶に着想を得て、悲劇の愛をドラマティックに描き出しました。ドラクロワの《アビドスの花嫁》やアリ・シェフェールの《ダンテとウェルギリウスの前に表れたフランチェスカ-ダ・リシニとパオロ・マラテスタの亡霊》には、その典型的な例を見てとることができます。

主催・協賛・後援

主催:国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、ニッポン放送
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
特別協賛:野村証券
協賛:大成建設、DNP大日本印刷
協力:日本航空、NX 日本通運、TOKYO MX、TOKYO FM
企画協力:NTVヨーロッパ

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