戦後日本版画の展開 照沼コレクションを中心に
会期: 2022-12-24 - 2023-02-05
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
平面
版画
絵画
開催内容
第二次世界大戦の終結は戦時下における自由の抑圧から人々を解放し、美術家たちは待ちかねたように活動を再開させていきます。そして、海外の新しい美術の潮流が日本に紹介されるようになると、国内の美術界は一挙に活気づき、1950年代には海外で開催される美術展にも多くの作家が出品をするようになります。その中で特に高い評価を受け受賞を重ねたのが版画作品でした。戦前の日本では美術の一ジャンルとして正当な評価を得ていたとは言えなかった版画が、世界を舞台に一躍脚光を浴びたのです。これにともない国内においても版画への関心が高まり、1960年代にかけて版画ブームともいうべき状況が生まれました。以降、多くの美術家が版画に取り組むようになり、製版技術の革新や、多様な版画技法を習得した作家の登場などにより、従来の版画の概念を超えるような作品が生み出されるようになっていったのです。
本展覧会では、県内のコレクター・照沼毅陽氏(1926-2021)より当館に寄贈された作品を中心に、戦後の日本版画の展開をたどりながらその魅力を紹介いたします。
[見どころ]
77作家・約200作品で戦後日本版画の展開をたどる、当館では初の企画
戦後版画の流れを紹介する企画展は当館として初めての機会となります。第二次世界大戦後、日本の版画は世界で評価され、同時代の美術の潮流を反映しながら多彩な表現が生み出されていきました。本展では戦後日本版画の展開をたどり、時代を彩った作家たちによる作品の数々をご紹介します。
照沼コレクションをはじめとする当館の版画作品収集の成果を公開
当館は2007年度以降、数回にわたり県内のコレクター・照沼毅陽氏から戦後日本版画を中心とした作品の寄贈を受け、2009年には「照沼コレクション展」として公開する機会を得ました。以降も照沼氏からは継続して作品をご寄贈いただき、その数は総計約600点、現在当館が所蔵する国内外の版画作品約1,900点の3分の1近くにおよびます。この寄贈によって当館の戦後日本版画作品は格段に充実し、所蔵する他の版画作品を組み合わせることでその流れをたどることが可能になったのです。
斎藤清・駒井哲郎・浜田知明・棟方志功など国際展で評価を得た作家の代表作を一堂に展示
戦後、日本人美術家たちが海外の国際美術展に進出する中で、最初に評価されたのは版画家たちであり、サンパウロ・ビエンナーレ、ヴェネツィア・ビエンナーレといった主要な国際展で受賞を重ねました。本展の前半では、斎藤清・駒井哲郎・浜田知明・棟方志功ら1950年代から60年代に国際舞台で活躍した作家を取り上げ、彼らの代表作をご紹介します。
清宮質文のアトリエ再現コーナー
木版画家・清宮質文(せいみやなおぶみ 1917-1991)の作品には、同じ版を用いながらも数種類のヴァリエーションが存在するものもあります。幾重もの摺りの工程を重ねた複雑かつ繊細な表現による詩情豊かな作品は、戦後の版画家たちのなかでも独自のものといえます。本展では照沼氏がコレクション形成の初期から買い求め、愛してやまなかった清宮版画の名品に加え、近年ご遺族から当館に寄贈いただいた清宮の遺品―机や道具類等―を紹介するコーナーを設けます。
版画と現代美術家の接点
1957年より開催された東京国際版画ビエンナーレは、海外版画の最新動向を紹介するとともに、新たな表現を模索する日本人版画家の台頭を促す場となりました。また1960年代後半より、版画家以外の美術家たちの中にも、現代美術の表現手段のひとつとして版画に取り組む作家が現れました。本展の後半では加納光於、靉嘔、野田哲也、李禹煥、井田照一ら、同ビエンナーレで受賞した作家による新しい傾向の版画作品を紹介します。