ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ
会期: 2022-02-09 - 2022-03-27
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
平面
開催内容
フランス北東部、シャンパンの本場・シャンパーニュ地方の中心地ランスは、歴代フランス国王の戴冠式が行われたノートルダム大聖堂を擁する由緒ある地です。街の中心に建つランス美術館は、近代以降、シャンパン醸造や繊維産業によって財を成した地元の蒐集家からの作品寄贈を受けて発展し、特に同地の主要なシャンパン・メゾン、ポメリー社の経営者アンリ・ヴァニエ(1832-1907)が遺贈したコレクションをその中核としています。とりわけフランス近代風景画のコレクションが特筆され、19世紀の最も重要な風景画家の一人であるジャン=バティスト・カミーユ・コロー(1796-1875)の作品を27点、ルーヴル美術館に次ぐ規模で所蔵することでも知られています。
本展は、ランス美術館所蔵の珠玉の油彩画作品を中心に、版画・資料も合わせた約80点によって、約100年にわたる風景画の展開を一望する展覧会となります。
17世紀以降、フランスの風景画は神話や物語が伴う理想的風景として表現され、アトリエの中で合成・再構成された架空の自然が描かれました。しかしながら、19世紀半ばには、持ち運びが容易なチューブ入り絵具の発明によって、アトリエの外での制作が容易になります。鉄道網の発達も相まって、画家たちは様々な場所に赴いてリアルな風景に向き合い、明るい光の下で観取した自然の瑞々しさや力強さ、輝きを生き生きと表現するようになりました。
本展では、コローの師であるアシル=エトナ・ミシャロン(1796-1822)、ジャン=ヴィクトール・ベルタン(1767-1842)の理想化から写実へ向かう風景画を皮切りに、手つかずの自然のありのままの姿を捉えたギュスターヴ・クールベ(1819-1877)、田舎や郊外の田園風景に惹かれたバルビゾン派、旅の記憶に叙情を交えて描いたコローなど珠玉の作品を紹介します。そして、戸外制作の先駆者の一人であり、水と大気と光の変化を画面に定着しようとしたウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)から、風景を輝かしい色彩によって光そのものとして表現するにいたるクロード・モネ(1840-1926)ら印象派への道筋をたどります。
《みどころ》
名作《イタリアのダンス》を含むコロー16 点、一挙公開
けぶるような銀灰色の、叙情的な風景画が日本でも人気の高いジャン=バティスト・カミーユ・コロー(1796-1875)。ランス美術館が誇るコロー作品 27 点のうち、選りすぐりの名画16点が来日を果たしました。初期から晩年までバランスの良いセレクトによって画風の変遷を辿りながら、様々な土地への旅を通して生まれたコローの詩的情緒あふれる絵画世界をご覧いただく貴重な機会です。
「空の王者」ブーダン――光、水、大気の交響詩
ウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)は、ノルマンディー地方の港町ル・アーヴルで10代後半のクロード・モネ(1840-1926)に出会い、未来の巨匠を光あふれる戸外での制作に導いたことで知られています。空と雲、水の描写に優れたブーダンは海景画を多く描き、コローからは「空の王者」と称賛されました。本展ではブーダンに一章をさき、7点の優品により、海や港、船、浜辺のリゾートといった画家が得意としたモティーフによる作品をはじめ、やや珍しい動物画も紹介し、絶えず変化・流動する水の様相と、光と大気の繊細なニュアンスをとらえようとしたブーダンの魅力を余すところなくお伝えいたします。
「連作」前夜――モネの“兄弟作”を見比べる
本展には、茨城県近代美術館が所蔵するクロード・モネ(1840-1926)《ポール=ドモワの洞窟》(1886年)と同じ時期に同じ場所(ブルターニュ地方のベリール)を描いた《ベリールの岩礁》(1886年)が出品されます。これらは、モネが後に展開することになる、「積わら」や「ルーアン大聖堂」、「睡蓮」といった同じモティーフを、異なる季節や時間帯、気象条件のもと、様々に変化する光の効果を追究して何点も描く「連作」の試みにつながっていく重要な作品です。会場では、“兄弟作”ともいうべき《ポール=ドモワの洞窟》と《ベリールの岩礁》を並べてご紹介します。普段は水戸とランスという遠く離れた地にある2点を至近で見比べていただくと、光の表現や色彩、筆触や構図などの共通点や相違点など、大小様々な発見があることでしょう。