戸田祥子/三枝愛「波を掴み、地と歩む手立て」

三枝愛 2021年 《庭のほつれ / I’m waiting for the time, when this field is open again》

三枝愛 2021年 《庭のほつれ / I’m waiting for the time, when this field is open again》

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会 期
20220115日 -  20220130
開催時間
13時00分 - 19時00分
休み
月曜日,火曜日,水曜日,木曜日,金曜日,祝日
入場料
無料
この情報のお問合せ
あをば荘
情報提供者/投稿者
開催場所
あをば荘
住所
〒131-0044 東京都
墨田区文花1-12-12
最寄り駅
小村井
電話番号
080-5093-1603

詳細

参加クリエイター

展覧会内容

戸田祥子の経歴は多様だ。初期のハプニングからソーシャリー・エンゲージド・アートに通ずるプロジェクト、映像や立体、それらを交えるインスタレーションやアート・コレクティヴと国内外で様々な展開がみられる。近年、彼女は遠く離れた地形やまったく異なる何かに自身のからだが例えられる、ということを距離や空間を超える回路として捉え制作している。そこでは子どもの手遊びやあやし方といった、彼女が日常的に振る舞う習俗的行為への関心もみられる。
一方、三枝愛は椎茸農家である生家とその土地をめぐる制作「庭のほつれ」を一貫して続けている。三枝の活動は、年月が進むに従って、保存のための技法の多様化や、彼女自身が交流してきた土地の歴史などを巻き込みつつ、多面多層的な展開を見せている。現時点でのその活動の全景によって、彼女が生まれ育った庭はより豊かな広がりをもち、それは今後も複雑な体系をかたちづくることだろう。
戸田と三枝とのインタビューを経て、興味深い点がある。戸田は、彼女自身が歩んできた土地土地とそこで直面する状況への関心に合わせて、様々な手段をこうじて作品を展開させてきた。そして今や彼女はささやかな日常に時空を超える、開けた回路を見出すまでにいたる。そこでは限定した立ち位置に自身が拘泥するのではなく、変化の波に身をさらしつつも、直面する状況からある特性をつかみ、それを手立てとする彼女の表現のあり方をみることができるだろう。
他方の三枝は、変化にさらされる生家の土地に対して自分がどうあるべきかということを念頭に、その一つの土地と歩みを共にしている。土地の変化自体が避けられないことだとして、彼女の眼差しに根付いた特有かつさまざまな記録の残し方は、その記録自体がネットワークを形成し、土地の一部へと結び直されて、土地とそこでの営みが抱える認識の固定化を改める手立てとなり続ける。
つまり2人の実践は自分自身や自分に関わるものに訪れる変化に対し、どう適応していくのかということについて共有している。そこにはひとりの存在や、ひとつの土地への価値観が安易に固定化されたり、不意もしくは不当に変化を余儀なくされたりすることへの抵抗がみてとれる。その抵抗のあり方は、時には状況の流れにまかせて漂いながらも身の振方を考え、時には留まりその場で必要なものを結び合わせてから進む、そのようなものである。変化が著しい現代では繊細で、未成熟なものほど黙して押し流され、そして省みられない。だからこそ彼女たちの実践は受け入れられない変化への抵抗の指標として捉えることができるだろう。

関連イベント

イベント情報:アーティストトークの公開
各会期の期間中に、参加作家と企画者のトークを収録、ウェブ上で公開。本展のテーマや展示に至るまでの経緯、そして各々が展示にどう向き合ったのか話し合います。詳細はあをば荘HPにて。

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