佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在

《バイバイカモン》2010年

《バイバイカモン》2010年

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会 期
20211113日 -  20220130
開催時間
10時00分 - 18時00分
入場は17時30分まで
休み
月曜日
年末年始(2021年12月27日~2022年1月3日)、1月10日(月・祝)は開館、1月11日(火)休館
入場料
有料
一般900円、団体(20 名以上)700 円、高校生以下・70歳以上、障害者手帳などをお持ちの方と付き添いの方1名は無料
※学生証、年齢のわかる身分証明書が必要です。詳しくはお問合せください。
※一年間有効フリーパス → 「年間パス」2,000 円
※学生とシニアための特別割引デー「First Friday」 → 学生証をお持ちの方と 65 歳~ 69 歳の方は、毎月第一金曜日 (12 月 3 日、1 月 7 日 )100 円
作品の販売有無
展示のみ
この情報のお問合せ
水戸芸術館(代表) TEL:029-227-8111
情報提供者/投稿者
開催場所
水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所
〒310-0063 茨城県
水戸市五軒町1-6-8
最寄り駅
水戸
電話番号
029-227-8111

詳細

展覧会内容

佐藤雅晴は、ビデオカメラやスチルカメラで撮影した日常の風景をパソコン上でペンツールを用い、なぞるようにトレースしてアニメーション化する、「ロトスコープ」と呼ばれる技術によって映像作品を制作してきました。東京藝術大学大学院美術学科絵画専攻修了後、ドイツに渡り、国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーに研究生として在籍したのちドイツを拠点に活動、2010 年に帰国し茨城県取手市に居を構えます。その直後に上顎癌が発覚、以後、闘病生活を送りながら制作に励んでいましたが、2019 年 3 月、惜しまれつつも 45 歳で他界しました。彼の作品は、現代美術、映画、アニメ、メディア・アートの表現領域を越え、国内外で高い評価を得てきました。佐藤自らが撮影した身近な人々や身の回りの風景を忠実にトレースすることによって生み出される佐藤の作品には、現実と非現実が交錯する独自の世界観が描かれています。
生前、佐藤はトレースという行為について、描く対象を「自分の中に取り込む」ことだと語っていました。それは、自身の暮らす土地や目の前の光景への理解を深め、関係を結ぶ行為ととらえることもできます。一方、佐藤の作品を見る私たちは、実写とのわずかな差異から生じる違和感や、現実と非現実を行き来するような知覚のゆらぎをおぼえます。人それぞれに多様な感情や感覚を呼び起こす佐藤の作品は、見ることの奥深さと豊かさを与えてくれるものといえるでしょう。
本展では、1999 年に渡独し初めて制作した映像作品《I touch Dream #1》から、死の直前まで描き続けた「死神先生」シリーズまで、映像作品 26 点、平面作品 36 点の計 62 点を通じ、佐藤の画業を振り返ります。

[本展のポイント]

現存する佐藤の全映像作品を一堂に展示
本展では、現存する佐藤の全映像作品を一堂に展示します。1999 年にドイツに渡り、初めて制作した《I touch Dream #1》(1999 年)から、未完となった最後の映像作品《福島尾行》(2018 年)まで、全 26 作品が 60 以上のスクリーンとモニターで展示される、過去最大規模の回顧展となります。

未発表の映像作品《SM》(2015 年)を初公開
本展では、未発表であった《SM》を初めて展示します。同作品は、頭部のない下着一枚の男性が自身の首をつかみ、それを襖に打ちつける光景が延々と繰り返されます。この男性の姿からは、《東京尾行》(2015-2016 年)制作のさなかにあった佐藤が感じていたであろう、ままならぬ自身の身体へのもどかしさ、制作への焦燥感を感じ取ることができます。一方、《SM》と同じ年に制作された《3 月》では、ひとつの画面上にいくつものシーンがマンガのようにコマ割りされ、それぞれのコマに描かれた風景が別々の時間軸を動き、時計の針は 2 時 46 分を永遠にまわり続けます。佐藤が過ごした 2015 年の 3 月の静かな一日が描かれたかのような、細やかな映像作品です。
この 2 作品が制作された 2015 年、佐藤は翌年に控えた原美術館での個展「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴-東京尾行」において発表する、新作《東京尾行》の制作に取り組んでいた最中の夏に上顎癌が再発し、緊急手術を受けました。

「死神先生」の部屋
佐藤は 2018 年 9 月に余命宣告を受けたのち、病状の進行に伴う視力の低下などにより映像作品の制作が困難になりましたが、その手を止めることなく、アクリル絵具による平面作品の制作に精力的に取り組みました。外出もままならず、老朽化による取り壊しが予定された自宅で静かに過ごす時間のなか、ふと目にとまった親しみのある光景―そんな瞬間を切り取り、パネル上に原寸大の絵としてトレースし制作されたのが、全 10 点からなる「死神先生」シリーズです。
本展では、佐藤が最後に過ごした自宅を再現するかのように、当館現代美術ギャラリーの独立する展示室 9 にて展示します。

関連イベント

■蓮沼昌宏ワークショップ「つくろう!クルクルアニメーション」 and DOMANI
 アニメーションの原理について学び、体験します。アニメーションの制作体験と展覧会の鑑賞を通じ、アニメーションの構造を理解し、また現代美術における表現の一形態としてのアニメーションの存在を認識させることにより、表現の多様性を知り、かつ自身でもその表現を用いることが可能であることを知る機会を創出します。
参加者が描いた絵がアニメーションとして動きだすまでの過程を体験し、最終的に当館にて上映会を実施します。

講師:蓮沼昌宏 《豊島》2018 年 撮影:椎木静寧
美術家、記録写真家。1981 年東京都生まれ。千葉県育ち。2005 年東京芸術大学油画専攻を卒業。2010 年東京芸術大学大学院美術解剖学研究室にて博士号を取得。テーマは自画像。2016 年文化庁海外派遣研修制度でフランクフルト・ドイツフィルムミュージアムにて研修。絵画、キノーラ(映画以前の動画技法)の手法を用いて制作。テーマに「新しい昔話」「鳩とのフィールドワーク」などがある。記録写真家として川俣正、PortB などのプロジェクト型作品を撮影している。現在、長野県を拠点に活動。
会場・日程:後日、当館ウェブサイトで発表します
主催:文化庁、公益財団法人水戸市芸術振興財団
文化庁新進芸術家海外研修制度と連動する DOMANI・明日展とのコラボレーション企画です。

■青山悟「世界にひとつだけの時計をつくろう!」
工業用ミシンで刺繍して絵を描き、近代化以降、変わり続けてきた人間性や労働の価値を問う作品を制作してきたアーティストの青山悟さんを講師に招き、刺繍や絵を描くワークショップを行います。学齢に応じて台紙に刺繍したり、絵を描いたり、身のまわりのものを貼りつけたりして世界に一つだけのオリジナルの時計を制作します。

講師:青山悟
現代美術家。1973 年東京生まれ。ロンドン・ゴールドスミスカレッジのテキスタイル学科を 1998 年に卒業、2001 年にシカゴ美術館附属美術大学で美術学修士号を取得し、現在は東京を拠点に活動。工業用ミシンを用い、近代化以降、変容し続ける人間性や労働の価値を問い続けながら、刺繍というメディアの枠を拡張させる作品を数々発表している。
またコロナ禍において、美術館などの公共文化施設でもその活動が制限される中、当館案内スタッフ(通称:ATM フェイス)との継続的なワークショップを実施、刺繍表現を通じてスタッフの創造性や思考を刺激し、個々人が対外的に創造的な発信をすることを後押しする活動をおこなっている。
会場・日程:後日、当館ウェブサイトで発表します

■すごろく鑑賞ガイド
ギャラリーをすごろくに見立てた本展の鑑賞ガイドを配布します。市民ボランティア 8 名が制作。子どもも大人も楽しめます。
編集長:林剛人丸(美術作家)

主催・協賛・後援

主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
助成:芸術文化振興基金
協賛:ソニーマーケティング株式会社
協力:公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団・大分県立美術館、株式会社ヤマハミュージックジャパン、株式会社川又楽器店、imura art gallery、KEN NAKAHASHI、Estate of Masaharu Sato、サントリーホールディングス株式会社
企画:井関悠 ( 水戸芸術館現代美術センター主任学芸員 )

平均:5.0 
レビューした人:1 人

評価サマリ

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    •  佐藤雅晴の作品には初期から物悲しい通奏低音がただよっている。佐藤は2019年3月に45歳で早世しているが、この寂寥感はどうしてもそのことと結びついてしまう。  水戸芸術館で開催された本展は彼の回顧展になっており、代表作のほとんどが一挙に見られた。その中で繊細なレトリックにも気がついた。例えば映像作品《バインド・ドライブ》。降りしきる雨の中、男女ふたりが止まった車の中にいる。男が運転席、女が助手席。男が悪魔で女が天使であるのはすぐ気づく。天使が妊婦なのもすぐわかる。ふたりの表情が所在なげな雰囲気を漂わせていることから、これから心中するのではと思わせる。ただ、ガソリンは残り少ない。演歌のデュエット曲が流れている車のラジカセは「リピート」を表示している。  佐藤の映像作品はほとんどが数分以下の短い動画のループだが、何度もリピートして見てしまう。実写映像をその一部あるいは全部を丁寧にトレースするロトスコープという技法で作られている。また、デジタル写真を丁寧にレタッチしたフォトデジタルペインティングの技法による作品もある。いずれも、作家 佐藤雅晴がコツコツと膨大な時間をかけ、丁寧に制作したであろうことが容易に想像できる。  繰り返される日常生活のように、一点一点ゆっくりと時間をかけ制作した彼は、人生をあまりに急ぎ過ぎたと思えてならない。

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