開催時間 |
12時00分 - 19時00分
土日 11時00分~17時00分 |
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休み |
月曜日,火曜日
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入場料 |
無料 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
ARTFRONT GALLERY
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒150-0033 東京都
渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラス A 棟 |
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最寄り駅 | 代官山 |
電話番号 | 03-3476-4869 |
阪本トクロウは1975年山梨県生まれ。日常の風景を切り取り、静謐な世界を描くアーティストです。
時には余白を大きくとり、空や山、道路、送電線、信号機、公園の遊具といった風景を切り取ることで、人間の不在を強く意識させます。地図シリーズでは空からみた地上の様子がポジとネガの二色で彩られ、水面を描けばオールオーバーな画面に光琳波のようなモチーフが筆跡を残さずに出現する一方で、広重のような前景と後景からなる江戸期の浮世絵を連想させる構図も見出されます。
本展では、阪本が「間隙」や「隙間」を観察して制作したという最新作が一堂に会します。
目の前にある風景を正確に描くことにより、日常にある「からっぽ」な空気感を表現してきた阪本の新たな展開にご期待頂けますと幸いです。
また現在阪本は、2月28日まで武蔵野市立吉祥寺美術館でも個展「デイリーライブス」を開催しており、30点近くの作品をご覧いただくことができます。こちらも併せてご注目ください。
阪本トクロウとその時代 小金沢智
阪本トクロウが日本画を専攻した東京藝術大学の前身・東京美術学校では、明治という新時代、アーネスト・フェノロサと岡倉天心によって西洋と対抗できる日本国発の美術としての「日本画」創造が目指されていたわけだが、その当初の目的の「声高さ」と比べれば、阪本の描くモチーフはささやかだ。日本の近代化と不可分のものとして生まれた「美術」そして「日本画」は、かつて大義名分をほしいままにしていたが、おそらくそれはアジア・太平洋戦争期を頂点として敗戦後ゆるやかに失われていき、いまや当初の働きはそもそも求められていない。本展のタイトル「gap」は、「間隙」や「隙間」を観察して制作している阪本自身の態度をあらわすというが、そこには日本画をめぐる時代間の「gap」=「裂け目」も指摘ができるだろう。
かつての大義名分は失われ、「自己表現」としての美術が主張される昨今、阪本もまた学生時代はそれを求めて苦心したようだ。大学入学当初はバルテュスに傾倒し、同大卒業後入学した早見芸術学園造形研究所日本画塾のころは、徳岡神泉やマーク・ロスコーを好んでいたという。画面も、大学二年時からしばらくは、岩絵具を盛り上げゴツゴツとしたマチエールを作っていたと聞く。
けれども、表現するほどの自己などない。その諦めは、大学に身を置くなかで次第に形成された「日本画」「現代美術」「絵画」を一旦捨て、対象となるモチーフを色も形も変えずそのまま描く、すなわち、自身の内側から湧き出たものを表現するのではなく、外側の世界を発見して制作するというスタイルへと阪本を至らせる。エポックとなった2000 年の作品《daily life》は日本画のアイデンティティとも言われる岩絵具を素材としているが、当時の村上隆や千住博の仕事からアクリル絵具を使用することへの抵抗感が減り、以降、自身の視点から風景を観察・再構成し、アクリル絵具を主としてフラットな画面で描写する阪本の表現が確立されていく。『美術手帖』2000 年9 月号では、「風景新次元 スーパーフラット・ランドスケープ」と題した特集が組まれ、さながら21 世紀の新たな風景表現が探し求められていた。
なんでもないように見えるかもしれない阪本の描く風景の背景に、この日本の美術がたどってきた歴史と、現在の状況・環境に向き合い、描こうとする、作家の思考の反映が見つけられる。