開催時間 |
11時00分 - 18時00分
金曜20時00分まで |
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休み |
日・月・祝
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入場料 |
無料 |
作品の販売有無 |
販売有
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この情報のお問合せ |
YUKA TSURUNO
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒140-0002 東京都
品川区東品川1-33-10-3F |
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最寄り駅 | 天王洲アイル |
電話番号 | 03-5781-2525 |
ユカ・ツルノ・ギャラリーは松川朋奈と山谷佑介の二人展「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」を2020年6月20日から8月8日まで開催いたします。2016年の二人展「at home」以来、2回目となる本二人展では自身の表現に対する変化や社会が持つ不確かな眼差しを照射するような新作シリーズを発表します。
同世代の女性とのインタビュー重ねることで絵画の主題やモチーフを選んできた松川朋奈は、自身が年齢を重ねるにつれて同世代の「若い女性」であった彼女らが「妻」や「母親」といった今までとは異なる立場や社会的責任を持ち始めたことに気付きます。近年はとくに、親という重圧や社会的な偏見に押し潰されずに自身を愛する営みを思索し、母親と子どもの主題を多く描いたシリーズ「Love Yourself」を発表しています。そこから、ハイヒールによる靴擦れや化粧によって残された人間の内面や生活の痕跡のほかに、緩む肌や目尻の皺など年齢によって時間の痕跡が身体に刻まれ始めたことに直面するようになります。
新作では、ジョルジョ・サンドの小説『イシドラ』の主人公が、一人の女性として社会が作り出す地位や女性の美に対する眼差しから逃れ、鏡に映った老いていく姿を受け入れ始める表現に着想を得ており、時間の経過を伺わせる身体や、自身へと手向けられるかのように鏡面に映し出された花が描かれています。鏡は松川の過去作品においても日常の中で埋もれてしまった声と向き合う媒体として登場していましたが、年齢の経過や老いをも視野に入れた新作においては、社会が生み出す幻想や差別に惑わされることなく、鏡に映るありのままの姿を受け入れ、それを愛しむという意味が込められています。
文芸誌『新潮』に昨年10月号より連載されている磯部涼「令和元年のテロリズム」の写真を担当している山谷佑介は、川崎市登戸通り魔事件、元農水事務次官事件、京都アニメーション放火事件など令和になってから起きた事件の現場や加害者の育った街を磯部氏と一緒に歩きながら取材をしてきました。「平成の間、先送りにされてきた問題を露呈」*する事件と関連した場所の撮影をしながら、家族を持つ個人として身の回りの生活の撮影も継続してきた山谷は、加害者が見ていた風景と自身が日常的に見る風景の違いについて考えるようになりました。また、カメラを接続したドラムセットで演奏しながら自身も撮影被写体となるパフォーマンス「Doors」のEUツアーを終えた山谷は、それ以前に制作したコントラストの強い作品が持つ演出されたようなイメージへの違和感を持ち始めたと言います。
そういった経験から、今回の新作ではコントラストが抑えられ全体的にグレーがかった風景写真で構成されており、事件を追ったルポルタージュとして撮影された風景と、山谷自身が日常的に見ている風景を撮影したものが同列に並べられています。社会から見落とされてきた問題とともにそこに介在する視線によって生み出されせる自己と他者の問題が、極めてストレートでありながらも単調な雰囲気をもつ隣り合った日常の風景として表現されています。
4年前の「at home」では「家」に象徴される私的空間や日常生活に残された痕跡、人間の営みの不可視な側面に焦点を当てた二人は、ここ数年をかけて私生活や作品制作における変化と新たな気付きを受け入れながら制作活動をしてきました。「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」 はアメリカやカナダなどの国において車のサイドミラーに貼られた安全警告で、鏡にはまだ遠くに映って見えるものが実際には近くにあるということの注意を促したものです。この警告が鏡に貼られていることから、日常的には遠くにあると思っていたものが、本当はすぐそばにあるということを私たちは容易に忘れてしまいます。本展においては、そういった遠くに感じているものがいかに自分たちの身近にあったのかという距離感や社会や個人の視線を反射する日常を構成する風景など、各々の経験から導き出されます。
*磯部涼「令和元年のテロリズム 第一回 川崎殺傷事件から考える」『新潮』2019年10月号
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