アデル・アブデスメッド 個展 : Play it Again
会期: 2020-03-17 - 2020-06-07
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
オープニングレセプション
映像
ドローイング
絵画
開催内容
アデル・アブデスメッドは現在欧州を活動拠点としている重要な
フランスのアーティストです。1971 年アルジェリアに生まれ、リ
ヨンのボザールで学んだ頃からビデオ作品を発表し始め、日常に
潜む暴力や戦争の悲惨さなど私たちが生きる現代に鋭いメスを
入れる作品を多様なメディアで制作しています。これまでヴェネ
チア・ビエンナーレに4回選ばれ、2007 年にはネオンと有刺鉄線
を使ったミニマルな2つの作品でベネッセ賞を受賞しました。
日本では横浜トリエンナーレ(2001)、あいちトリエンナーレ
(2010) に参加し、奥能登国際芸術祭(2017)では主要作家と
して招かれました。廃駅に停車中の車両を光の棒が貫き、警
報機に現れる「ま・も・なく」の平仮名が始まりを予感させました。翌年の越後妻有アートトリエンナーレでは、使われ
なくなった納屋にLED 光がアクリル管を通して差し込み、竹林と連動した尺八の音が流れるなど音も使ったインスタレー
ション「ゴーストダンス」が注目されました。この3月に開幕するいちはらアート× ミックスでも、小湊鉄道五井駅の歩
道橋の下にピアノを吊り下げ、自動演奏で「カサブランカ」のワンシーンに出てくるジャズピアノが披露されます。”Play
it Again(もう一度聴かせて)”というタイトルが示すように、人間不在でありながら、この駅を出発する芸術祭の来訪
者を音楽で送り出す作品が企画されています。
アデルの作品は人間の根源的な苦しみや哀しみを現代的な素材を使って表現したものが多くみられます。過激な戦争の悲
惨さを直接的に社会に訴えた作品はCri (叫び、2012) では、ベトナム戦争の最中にアメリカ軍の空爆を逃れるために全
裸で走り来る女の子の写真を元に、その瞬間を象牙で凍結させました。アルジェリア独立戦争の政情不安の中で故郷に帰
れなくなり、たった一人でアートを作り続けることによって世の中と闘うことを余儀なくされた作家自身と重ね合わせて
いるようです。ビデオ作品では頻繁に動物が登場し、アラブの春を連想させる鶏が焼かれる作品、Printemps (春)(2013)
では動物愛護団体など様々な批判を受けましたが、三方の壁が映像で埋め尽くされ、観る人がその場から逃避できない、
逃げずに現状を直視するしかない、という極めて強いメッセージを発信しています。この作品以外にも様々な動物の生態
を人間のそれに重ね合わせながら生命が本来持っている残酷さや美しさを作品化しています。
今回の個展では、アート×ミックス出品作品のドローイングをはじめ、映像や絵画、マケット作品を発表。宗教的、性的、
政治的なタブーを打ち破り、社会問題や困難な状況に素手で立ち向かうアデル・アブデスメッドの軌跡を是非ご覧くださ
い。