アイムヒア プロジェクト|渡辺 篤 修復のモニュメント
会期: 2020-02-21 - 2020-03-15
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
レセプション
立体
開催内容
「アイムヒア プロジェクト」は、現代美術作家、渡辺篤氏によって2018年発足した、孤立者に伴走する形で、その存在や声を社会に向けて発信するプロジェクトです。ひきこもり自らが撮影した部屋の写真を集めた写真集「I’m here project」は、その出版と展示で大きな反響を呼びました。今回のプログラムもその延長線上にあり、二題のプログラムを進行させます。
修復のモニュメント
ひきこもり4人が孤立に至った原因や生きづらさの事情について、渡辺篤(現代美術家/自身も同経験を持つ)と対話しながら、コンクリート製の記念碑を作るプロジェクト。碑を敢えて一旦ハンマーで破壊した後、陶芸の伝統的修復技法「金継ぎ」によって再構築する。見過ごされ、抑圧され続けてきた声の顕在化によって、新しい表現の形を模索する。
加害者と被害者の振り分けを越えて
会場に敷き詰めたコンクリートタイルは、困窮者支援やケアの名の下であっても自動的に発生し続ける加害性やそれに対する自己批判の必要性について観る者に突き付ける。我々は自己や社会をどの様に再構築できるのか。
会場の床に約160枚の自作コンクリートタイルを敷き詰める。来場者が壁面に飾られた平面作品を鑑賞しに近づくためにはタイルを踏み歩かなければならず、このタイルは高頻度に割れる仕組みとなっている。誰しもが無自覚に他者にとっての加害者になり得ることを表したこの仕掛けは、現在の社会には、たとえ困窮者の支援の現場にも、支援者の美徳の押し付けや暴力的支援が存在していることを告発する。また、壁面に展示された平面作品は踏み割られたタイルを修復したものである。壊れた物は完全にはもと通りには戻りはしない。けれど、それを受け入れながら取り返しがつかないものなど何ひとつ無いと信じることも可能だ。被害者意識の主張は時として特権になり、やがて自己を縛るとらわれ意識にもなる。
加害性を自覚しながらも他者に介入する「おせっかい」という概念について。また、完全に癒える事はない痛みを自覚しながらもそれを受け入れ自己修復を試みる「リカバリー」という概念について作品は鑑賞者と対話する。