吉田 花子 展

吉田 花子 展
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    会 期
    20200107日 -  20200118
    開催時間
    11時00分 - 19時00分
    最終日17時00分まで
    入場料
    無料
    展覧会の撮影
    作品の販売有無
    販売有
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    Gallery Q
    情報提供者/投稿者
    開催場所
    Gallery Q
    住所
    〒104-0061  東京都
    中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F
    最寄り駅
    銀座
    電話番号
    03-3535-2524

    詳細

    参加クリエイター

    展覧会内容

    吉田花子の世界         千足伸行 (成城大学大学名誉教授 広島県立県立美術館長)

     30歳をようやく過ぎたばかりの吉田花子の画家としての経歴は当然のことながらまだ浅い。しかも実質的に独学である。ただし、芸術家肌の父上と、デザイナーの母上ということで、家庭が吉田花子の最初のアトリエであったとも言えよう。それもあってか、20歳を過ぎた頃から早くもグループ展に参加し、2014年からは銀座のギャラリーQを拠点に個展も積極に開催し、ごく最近ではオープンしたばかりのトリー バーチ銀座店に縦が2メートルを超える掛軸状の大型の作品を展示するなど、若手としては最も注目されている画家のひとりと言っても過言ではない。

     吉田花子の画歴で注目されるのは、初めから抽象画家として出発していることである。カンディンスキーもモンドリアンも、その他の抽象画家も総じて具象から抽象へ、が一般的なパターンであった。 おそらく今も変らないが、吉田花子がいきなり抽象の世界に飛び込んだのは具象には必須の基礎的、基本的な部分を飛ばしてというより、吉田花子には生来的に抽象思考がしみ込んでいたからと見るべきだろう。

     吉田花子のもうひとつのこだわりは、インテリア=空間に溶け込むアートである。暮らしの中のアート、言えるが、ホテルやオフィス、ショップなどに溶け込むアート自体はすでにどこにでもあり、これ自体は新しいとは言えない.彼女の意識の中にあるのは「アート」として「聖化」、「聖別」されない万人に開かれたアートであろう。こうした思想、理念自体は19世紀後半のウイリアム・モリス、(今年が生誕200年の)ジョン・ラスキンなどによる「民衆の芸術」運動に遡るが、芸術、のあり方ではなく、《DEJAVU》シリーズその他、ここ数年間の吉田花子の作品について見ると独学がむしろ幸いしてか、過去の抽象にとらわれない自由闊達なフォルムと色彩のせめぎ合いから、画面には快い緊張感、エネルギーが充満しているように見える。

     トリー バーチ銀座店に展示した2点の作品について、作者自身は次のように述べている。「女性として生きるうえで、個人個人がかかえている悩みや不安などから全て解放され、希望が生まれる様子、女性の可能性を表現しています」。「ダイナミックな色彩構成と表現で、女性の持つ寛大さ、情熱、愛情など、女性が秘めている壮大な力強さを表現した作品です」。

     これらの作品と向き合った時、そこに作者がここで表明しているような女性特有の「悩み」や「不安」、あるいは「寛大さ、情熱、愛情」を感じとるかどうかは保証の限りでない。作者の言葉はそれなりに尊重される権利はあるが、しかしひとたび作者の手を離れた作品は、親元を離れた子のように独立し、いわばPublic Domain入りする。以後、作品を前にして何を感じ、読み取るかは個人にまかされる。つまり、作者の思いが伝わらない可能性は十分ある。これは抽象芸術の宿命のようなものであるが、「何を」描いたかにとらわれることなく、作品との自由な対話を楽しむという意味では抽象芸術がむしろ優っているとも言えよう。

    吉田花子が作品にこと寄せたメッセージ、意味が人々にそのまま伝わらないとしても、作品の価値がいささかもゆらぐものでないことは言うまでもない。最近の吉田さんは画材として和紙や古い布などを使い、大きな掛け軸のように仕上げるなど、日本の伝統を意識した野心的な作品も試みている。まだ若いだけに今後の展開は予想しがたいが、自分に語りかける現実、自然との接点を失う事なく、フレッシュな感性でさらなるヨシダ・ワールドを展開してくれることを期待してやまない。

    アプリオリの美学                  五十嵐 卓 (美術評論家)

     人間の才能にもいろいろある。アポステリオリ(後天的)に努力と経験から築く知識と技術。アプリオリ(先天的)に生まれながら所持する感性(センス)や品格など。 吉田は、美術家の父親、インテリアデザイナーの母親のもとに育ったことで、絵描きとしての素養はアプリオリに備わっていたのではないだろうか。

     吉田の作品は、周りの環境と自然に溶け込み、大らかな空気に包まれているように見る者に歓びと安らぎを与えてくれる。それらには、作家の「気負い」や「作為」というものはあまり感じられずナチュ ラルな印象を受けるのだ。吉田は、自分の作品を「心象風景」でなく、「心情風景」だという。「心象=意識に浮かんだ姿」ではなく、 「心情=心の中の思い」を描いているようだ。 ある場所や時間、人との出会いや記憶から抽象的イメージが生まれる。そのイメージを様々な素材と技法で、画面に素直に再現しているのである。

     大学在学中からこれまでの約10年間、吉田はいくつかのシリーズを制作してきた。2010-13年が「Secret Garden」(自分にしか見えない抽象イメージの記録)、2014-16年が「Face」(人間関係を描いた作品)、2015-2017年が「afterimage」(場所に残っていた気配、残像)、2016-19年が「DEJAVU」(記憶)である。 当初は作品にバイオモルフィック(生命形態的)フォルムがあったが、次第に直線的、幾何学的フォルムも入り組んでくる。画面を何層にも塗っては削る複雑なレイヤーの擦れの感興が魅力的である。時折、迸るドリッピングや潔い線描が画面に緊張感を与えている。フラットなフォルムがコラージュのように見えることもある。コンポジション(構図)は自由奔放ではあるが、絶妙なバランス感覚の着彩によって品位ある調和が保たれている。

     吉田は本展から「Situation」(場)という新シリーズを発表する。元号が変わり、吉田自身の環境も変化する節目だという。「Living with Art」をテーマに日常の暮らしを豊かにする作品を制作することには変わりはないが、「心情風景」の変化は感じられるであろう。

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