伊吹拓展「絵の声、色の夢」

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会 期
20110921日 -  20111009
開催時間
11時00分 - 19時00分
休み
最終日の展示は午後6時までとなります
月曜定休
この情報のお問合せ
ニュートロン東京
TEL&FAX 03-3402-3021
イベントURL
情報提供者/投稿者
開催場所
neutron tokyo
住所
〒107-0062 東京都
港区南青山2丁目17-14
最寄り駅
外苑前
電話番号
03-3402-3021

詳細

参加クリエイター

展覧会内容

同じ事を追い求め、繰り返し、螺旋階段を昇る様にちょっとづ つ高みに浮上しながら景色は変わる。
伊吹拓の見つめる世界はあらゆる事象を一点から観測し、自己 と他者の関わりもまた作品によって常に待たれている。
生ものとしての絵画は艶かしくも姿を横たえ、結界の貼られた 古代からの山の麓で伸び伸びと育まれ、やがて完全には乾き切らぬうちに東京へと届けられる。まさに 産地直送の絵の声と、色の夢を伝えるために。

[開催者コメント]
 残暑まだ醒めやらぬ九月初旬、私は伊吹拓が期間限定で制作を行っているという、京都府の南部・木津川市の鹿背山(かせやま)の麓まで馳せ参じた。彼に会う時は事務所やギャラリーだけとは限らない。長年にわたり彼が交流をもつイタリアン・レストランでランチを食べながら(彼の絵を見ながら)…という機会も年に一度くらいのペースで訪れるし、第一子誕生の暁に自宅兼アトリエにお邪魔したこともある。彼は関西近郊の様々な展覧会や知る人ぞ知るアートイベントにも良く顔を出し、必然的にそういった所で出くわす事も珍しく無い。いつも風来坊のように澄ました顔でふらりと現れる彼の佇まいは、風の匂いを嗅ぎ分け、空気の湿度を感じ、気の赴くままに旅をする異邦人のようでもある。事実、彼には土着の雰囲気といったものがあまり無い。

 そんな彼が描く絵もまた、常に風のように動き、その印象は鑑賞者の心の中で定着することは無い。無論物質的には絵具はやがて固まり、一つの絵として画面に定着しているのだが、彼の絵と対峙する時、その場所や季節、環境、誰と一緒だったか、時間は急いでいたか・そうでなかったか、等によって全く異なる印象を持ち得る絵画だと言えよう。少し皮肉っぽく言わせてもらえれば、彼は決して自分がこう言いたいんですよ、という返答を出さない。鑑賞者が絵の前に佇む様子を傍から眺め、何か話しかければ応じ、何も言わなければ無言で引き返す。技術的な質問には答えても、イメージそのものの在り様や作家の狙いなどと言った質問には、返す刀で質問を投げかける。「あなたはこの絵に何を見出しますか?」と。それは意地悪な様で、彼の絵画制作の根源を成すたった一つの問いかけでもあることを、知って頂きたい。

 私も随分付き合いが長くなって来たが、彼の展覧会を企画したり、絵を見る機会がある毎に彼の描く「何か」を考えてきたが、未だ答えは導き出せていない。だがこの度、鹿背山の町工場跡地で彼が思う存分大きな画面を広げて描いている様を見たとき、少しだが新しい発見が訪れた。おそらくだが、彼の絵はどんな場所に行こうと直接的な変化は表わさない。だから私がその時に見た絵も、それまでに見て来たものと何が違うかと言われてもあまり「これ」というものは無い。実際に彼はずっと或る一つのテーマを描き続けていると言うのだから、変化しよう(させよう)というモチベーションは大きくないのかも知れない。だが私が思ったのは、画面の表層の変化ではなく、画面に描かれなかった事象のことであった。彼がまだ駆け出しの頃、画面にはおよそ密度の濃い・噎せ返るような空間が奥行きを深く意識して描かれていたものだが、やがて次第に絵の密度は和らぎ、時にうっすらと消えそうなほどにさえ拡散し、スタイルは勢い一辺倒ではなく柔軟に、洗練されてきた。そんな彼の絵に、私がどうしても「これは無くても良いんじゃないかな」と感じていた何かちょっとした事(小さな何か)が常にあったのだが、ふと気付けばそれらがすーっと消えていたように見えたのである。おそらくそれはモチーフや線、色、構図と言った画面構成要素の有無ではなく、彼の内面的な成長と、広々としたスペースを(一時的にとはいえ)手に入れた開放感によるものかも知れないし、それ以外にも理由はあるだろう。だが現時点で私が得た手応えは、おそらく期間限定ではなく彼のこれからの制作にずっと示されるものであり、つまりは彼は(彼の絵は)同じことをしていながらずっと成長し続け、彼自身が本質を見出すことに近づきつつあることの証明でもある。

 この絵は何を描いているのか、は永遠の謎でも良いではないか。鑑賞者と絵の出会いの多くは一期一会であり、それぞれは絶えず流動的に移ろい、変化する。だから一瞬の邂逅はお互いが生み出す奇跡の瞬間であり、人間が歳を重ねるように、絵も生まれる度に姿形を変えていくのだから、同じ瞬間は二度と起こすことは出来ない。願わくば次はもっと素晴らしい、幸福な瞬間が訪れるのを期待するのみである。私が彼の絵を見続ける理由はそんな所にあるのかな、と分かった様な気になり、しかし一方では死ぬまで確信できないであろうことを知っている。それはまるで、淡い恋心を抱く相手の気持ちを推し量る様であり、エクスタシーの瞬間に訪れる迷いの様でもあり、自分自身を何者かを見出せないもどかしさの様でもある。

                                                                gallery neutron 石橋圭吾

[作家ステートメント]

「絵の声 、色の夢」

現在、自宅アトリエでの制作と平行して、木津川市・鹿背山というところに通って制作をしている。
結界をくぐり入るその地域には、静かで強い地の力がある。
鳥の声に呼応して、画面にはどんな震えがこもるのだろう。
硯のうえの墨をするようにゆっくりと絵の具を溶きながら、この色自体が辿り着く場所はどこなんだろうと思いを巡らせる。

絵を描くことは、真剣勝負なんだと改めて感じさせられる。

伊吹 拓

関連情報

初日21日(水)の18:00-20:00迄、会場にて作家を交えてのオープニングパーティー開催(無料)。

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