開催時間 |
13時00分 - 19時00分
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休み |
日・月
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入場料 |
無料 |
この情報のお問合せ |
The White
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒101-0064 東京都
千代田区猿楽町2−2−1 #202 |
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最寄り駅 | 神保町 |
電話番号 | - |
小川浩子は大学で彫刻を専攻し卒業後は立体作品を発表していきますが、アトリエとして転居した借家の井戸で、呼び水の体験をしたことから作風が位相反転したかのように、事物の両極性を意識した現象学的考察に変容していきます。 The Whiteでは「分光法」「分子時計」と水を使用しゆっくりと流動する実験的な展示を2年連続で発表し、3回目となる本展では、ガストン・バシュラールが「空間の詩学」の中で展開する” 地形分析 "をタイトルとして引用し、小川のうちでひろがる内密存在の地形図をこれまでの展示で使用した松脂と松煙墨を主原料に空間構成されます。
| ステートメント |
「 地形分析 」
能舞台をはじめて鑑賞した時、能の不可解な様相がこころに残りしだいに潜在化していった。鏡板に描かれる松の物性を調べてみると、松脂の広範囲な応用性を識ってすぐに作品の主原料として使用を試みた。2013年に発表した作品では、松脂が道具と弦楽器と両方の弓の機能に必要とすることに着目し、その両義性をテーマとした作品を発表したのがこの取り組みのはじまりである。 そして昨年に、自宅から数分の博物館で白亜紀前期の樹脂中に閉じ込められた虫入り琥珀をみる機会があった。寄生蜂の形骸は長い年月を経てひとりの人間に掘りおこされ、新種として、採取された土地の名と採取した人物名が入るチョウシア・ヤマダイという名を付与されて、新たな生となって展示されていた。それはまるで埋もれていた点に橋がかかり、結ばれて線となるかのように。過去と現在を結ぶ線の距離が長いほどその境界は曖昧になり過去が別世界のように感じるのに対し、たとえ形骸のみとしても時差がなくなることは感情移入が起こり身近に感じることができる。また、能が此岸と彼岸を結ぶ舞台でもあるように、時差をなくす営為はこの先に続いていく線としてとても重要なことのようにも思えた。
ある時、鏡板に描かれる松は生えてはおらず、鏡に映りこんだ松の幻影にすぎないと聞いた。こちら側の世界をうつす大きな鏡だという。自己を投影しなければ物語りを理解することができない。舞台を鑑賞しながらも、主人公の意識にある背景をうちに投射し、映像に変換していく、二重の視点が同時に必要となる。
わたしはこの内在的な空間に想像力で映像を投影するかのような作劇法と、これまでの展示で使用した物質の力を借りながら、自身のうちで自由にひろがり繋がっていく継続的な地形図の展開を試みる。それは制作のために滞在した土地の歴史や記憶、不定期に赴く旅での経験すべてが収斂されたものであり、あるいは、失われた土地を取り戻すための測量地図のようなものになるかもしれない。