開催時間 |
13時00分 - 19時00分
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休み |
日・月・祝
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この情報のお問合せ |
FARO- Kagurazaka
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情報提供者/投稿者 |
住所 |
〒162-0828 東京都
新宿区袋町5番地1 FARO Kagurazaka 1F |
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最寄り駅 | 神楽坂 |
電話番号 | 090-6427-3827 |
大学で美術と服飾を学んだ寺本は、様々な時代と地域の服飾がもつ機能性と文化背景の表象としての装飾性を接続させ、それを纏う人々の暮らしを描きながら、服飾と人々の生活との関係性を見つめてきました。
当初は服飾への興味から始まった制作活動ですが、近年関心は衣服を纏う人間の営みそのものへと移りつつあります。近代化していく社会の中で今なお残り続ける固有の地域・服飾文化の取材を通じて得たイメージにフィクションを織り交ぜながら昇華させることで、わたしたちの生活に通底する普遍性を描き出します。
沖縄で開催された「やんばるアートフェスティバル2018-2019」で展示した作品に、新作を加える今回の展示では、沖縄での滞在制作などを通じて寺本が見出した“島”に暮らす人々の姿を、これまであまり描いてこなかった背景の描写や、淡い色彩での着彩などを用いて描いています。
寺本愛コメント:
ここ数年、⽇本各地の特有の地域⽂化や服飾、そしてそれを纏う⼈々から着想を得て制作している。実在する(した)⼈々を起点として制作を始めるが、その⼟地特有のものの表象として終わらせるのではなく、現代を⽣きる私たちにも通じる⼈間の普遍性を⾒出そうとしている。
作品制作を⾒据えて特定の場所を訪ねたことはない。たいていの場合、なんとなく興味の赴くままに旅⾏してみたら、ふと⼼惹かれる事象に出会い、帰ってからあらためてその⼟地について調べ始める、という順序だ。
それがすぐに制作につながる場合もあれば、数年後に急に閃くこともある。単に楽しい旅⾏の思い出として過ぎていくことがほとんどだけれど。
今回は先にテーマとなる⼟地が確定していた。沖縄である。去年の暮れから年明けまで沖縄北部で開催された「やんばるアートフェスティバル」に出展することになり、滞在制作の機会もいただけた。とはいえ短い期間なので、メインの作品群は東京で⽤意しなくてはいけない。沖縄はそれまで⼆度訪れたことがあるが、楽しい旅⾏の思い出が浮かぶだけで、制作の起点を⾒つけることができなかった (いま思えば、何も考えていなかった)ので、あらためて沖縄について調べるところから今回の制作は始まった。
しかし、会期が迫りつつある10⽉頃になってもなかなか描き進められない。沖縄の辿って来た歴史の複雑さを前にして、どう向き合えばいいのかわからなかった。何よりも、「内地」「本⼟」「⼤和」「東京」に⽣まれ育った⾃分が、これまでなんと能天気に沖縄に接していたんだろうと、そのことがショックだった。南の温暖な気候、独特な島料理、ちょっとエキゾチックな雰囲気を、無邪気に享受していた。様々な問題の当事者であるはずなのに。
同時に、これまで⽇本各地のセンシティブな⽂化をモチーフにしてきた⾃分の姿勢もはたして正しかったのか、表層だけを⾯⽩がって消費していたのではないかと罪悪感のようなものを感じ、⾝動きがとれなくなっていた。
⾏き詰まっていたとき、沖縄の戦前の写真を掲載するウェブサイトにたどり着いた。そこに掲載されていたのは戦争の気配が感じられない、いたって穏やかで、鮮やかな⽇常の⾵景だった。獲った⿂を両⼿に掲げて笑う漁師、デパートのようなモダンな店で買い物をする⼥性。とある南⽅の島の⽇常。
80年以上前の写真だが、まるでいまそこに存在しているかのようにはっきりと⽣活のにおいがする。モノクロームの向こうの鮮やかな景⾊が⾒える。
漠然としていた沖縄が、初めて熱を持って感じられた。
⼈間はそれぞれの⼟地でそれぞれの⽣活を営んでいる。これまでも、これからも。起床、⾷事、労働、遊興、就寝…⽣活という普遍性。
注意深く、ひとりひとりに思いを馳せる。その⼟地で⽣きるその⼈は⾃分であったかもしれない。
そう思えるような姿を描きたい。
オープニングパーティー 2月23日(土)16:00 - 18:00