イサム・ノグチと長谷川三郎 -変わるものと変わらざるもの

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会 期
20190112日 -  20190324
開催時間
10時00分 - 18時00分
入館は17時30分まで
※2019年3月2日(土)は20時30分まで(入館は20時00分まで)
休み
木(2019年3月21日(祝)は開館)、3月22日(金)
入場料
有料
一般1500円(1400円)、大学・高校生900円(800円)、中学生600円(500円)、小学生以下無料、65歳以上(要証明書)1400円
※( )内は20名以上の団体料金(要事前予約) ※前売り(販売期間2018年11月12日~2019年1月11日 一般1300円、大学・高校生700円、中学生400円 ※毎週土曜日は高校生以下無料(要生徒手帳、学生証) ※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料 ※観覧当日に限り本展の観覧券で「横浜美術館コレクション展」も観覧可 ※その他の割引料金については別途お問い合わせください。
展覧会の撮影
不可
作品の販売有無
展示のみ
この情報のお問合せ
横浜美術館
情報提供者/投稿者
開催場所
横浜美術館
住所
〒220-0012 神奈川県
横浜市西区みなとみらい3-4-1
最寄り駅
みなとみらい
電話番号
045-221-0300

詳細

参加クリエイター

展覧会内容

1950年代、日本美再発見

日米の血を受け継ぎ、洋の東西を越えた世界的視野から芸術を再び人々の生活の中に根付かせようとした彫刻家イサム・ノグチ(1904-1988)と、画家として戦前日本の抽象美術をリードする一方、理論家として西洋近代美術の潮流と古い日本の芸術文化に通じ、両者の共通項を抽象芸術に見出した長谷川三郎(1906-1957)。1950年5月、19年ぶりにこ日本の土を踏んだノグチと、かねてよリ彼の作品に注目し、文通をも企図して対話を待ちわびていた長谷川は運命的に出会い、芸術家としての互いの関心事とビジョンが驚くほどよく似ていることを知り強く共鳴します。

爾来ふたりは固い友情で結ばれ、長谷川はノグチにとって建築、庭園、書、絵画、考古遺物、茶道、禅、俳句など、有形無形の日本の古い文化遺産への無二の案内役となり、ノグチが日本の美の本質を理解する上で重要な役割を果たしました。一方、ノグチは対話を通して長谷川の制作意欲を奮い立たせ、長谷川が墨や拓本、木版を用いてそれまでにない創作の地平を切り開くきっかけを与えました。

本展は、このふたりの芸術家の交友に焦点を当て、彼らが何を見、何を考え、何を目指したのかを、ふたりが共に歩んだ1950年代を中心に、ノグチ作品約50点、長谷川作品約70点を通して明らかにしようとするものです。
※会期中、一部作品の展示替えがあります。

古い東洋と新しい西洋の統合
-ノグチと長谷川がともに目指したもの

ノグチと長谷川が出会った1950年当時、連合国軍による占領は5年目を迎え、日本はいまだ困難な戦後復興の途上にありました。1947年に施行された日本国憲法の下で、貧しくとも、平和な文化国家を目指して、独立と国際社会への復帰が待望された時期でもあります。美術界でも新たな国際交流への期待が高まり、そこに来日した日系アメリカ人の彫刻家イサム・ノグチは大歓迎を受けました。ノグチは画家猪熊弦一郎や建築家丹下健三、デザイナー剣持勇ら、重要な美術家や建築家と出会いますが、長谷川三郎の存在は特別に大きな意義を持っています。

ノグチと長谷川、ふたりの芸術家が共有した目標は、「古い東洋と新しい西洋の統合」といえるでしょう。伝統とモダン、固有のものと外からの影響、それらのバランスをこれからの美術の中にいかに実現していくか。この課題意識が、彼らの作品を特微づけています。

1954年に渡米した長谷川は、日本文化ブームに沸くニューヨークで歓迎され、墨による抽象画の制作や展覧会活動と並行して茶の湯を実践し、道教や禅を講じ、フランツ・クラインをはじめとするアメリカの抽象画家たちと交友しました。一時帰国を経て1955年以降サンフランシスコに移住した長谷川は、カリフォルニア美術工芸大学とアメリカ東洋文化研究所での講義を通して、ビート・ジェネレーションと呼ばれる作家や若い芸術家たちに大きな影響を与えました。本展では、日本国内に所蔵される長谷川の1950年代の代表作に加え、多くは日本未公開の、滞米中に制作された作品が多数出品されます。また、1950年代にノグチがアメリカと日本を往復しながら制作した陶、石、アルミニウム、鋳鉄、鐘青銅、バルサ材による彫刻、数々の「あかり」などの作品には、ノグチが長谷川とともに日本で見た古い文化遺産や、長谷川との対話を通して深めた禅や東洋思想への理解が本質となって現れていると言えます。小さな陶の《顔皿》から等身大を超えるアルミ板の《雪舟》、哲学的なタイトルをもつバルサ材の《死すべき運命》、そして高さ2.6mの石彫《庭の要素》まで、素材も規模も様々な作品群は、スタイルや表層的な日本趣昧とは異次元の、時代や文化の違いを超えた世界美術に向けたノグチの挑戦といえるでしょう。今日わたしたちが抱くノグチ芸術のイメージの基本はこの時期に形作られたといっても過言ではありません。

イサム・ノグチ Isamu NOGUCHI (1904-1988)

彫刻家イサム・ノグチは1904年11月17日、ロサンゼルスに生まれる。父は詩人の野□米次郎、母はアメリカ人作家・教師のレオニー・ギルモア。幼少期を東京、茅ケ崎、横浜で過ごし、1918年13歳で単身渡米。長じてニューヨークのコロンビア大学医学部進学課程に通いながら彫刻を学び、1924年「イサム・ノグチ」として彫刻に専念することを決意。27年パリに留学し、半年間彫刻家ブランクーシの助手として働く。1929年よリニューヨークを拠点に、肖像彫刻の制作で生計を立てながら、公園の設計、公共彫刻や舞台美術などを手がける。1931年には13年ぶりに来日し、京都や奈良を訪れる。埴輪を見るほか、陶芸家宇野仁松(にんまつ)のもとで作陶する。太平洋戦争が始まると、アリゾナ州の日系人強制収容所(ボストン戦時強制収容センター)に志願して入所し、所内の公園やレクリエーション施設のデザインに取り組んだ。
1950年に19年ぶりに来日し、丹下健三、瀧口修造、長谷川三郎ら、日本の建築家や前衛芸術家と交流。とくに長谷川とは京都、奈良、伊勢などを旅し、日本の伝統美や東洋思想に関する考察を深める。1951年、丹下健三と広島の平和記念公園建設現場を訪ね、平和大橋の欄干(1952年竣工)、原爆犠牲者のための慰霊施設(実現せず)をデザイン。同年、岐阜の提灯工場を訪ね、「あかり」のデザインを始める。
また、長谷川に画家フランツ・クラインを紹介し、長谷川渡米のきっかけを作った。1957年に長谷川が没するまで絵いたふたりの交友は、その後のノグチの展開を方向づけたといっても過言ではない。1988年ニューヨークで逝去(享年84)。

長谷川三郎 Saburo HASEGAWA (1906-1957)

画家長谷川三郎は1906年山口県豊浦郡(現・下関市)に生まれる。青年期を芦屋で過ごし、甲南高等学校在学中には小出楢重(こいでらなしげ))の下に通い油彩画を学ぶ。東京帝国大学に進学し、美術史を専攻。卒業論文では雪舟を論じた。
卒業後3年間パリに留学。帰国後は東京に居を構え、制作の傍ら美術雑誌にも寄稿を重ねた。1936年より抽象的作品を描きはじめ、「自由美術家協会」の創立にも関わる。日中戦争期から大戦終結にかけて、写真作品を手がけたほか、表現・言論統制が厳しくなると俳句、禅、茶道を研究。戦後1947年には「日本アヴァンギャルド美術家クラブ」を結成し、画家としての活動を再開した。
藤沢市辻堂への転居後ほどなく、1950年5月に来日したイサム・ノグチと会い意気投合する。ノグチと出かけた関西旅行によって、抽象芸術と日本の伝絵美の関係に対する長年の迷いが払拭された。まもなく油彩画の制作をやめ、拓本や水墨による表現へ移行。
1953年、アメリカ抽象美術家協会より「第18回アメリカ抽象美術展」への日本の抽象作家作品の出品招請を受け、「日本アブストラクト・アート・クラブ」を設立した。その代表として1954年に渡米し、約10ヵ月滞在。帰国後は東京国立近代美術館での「日米抽象美術展」(1955年)の企画に携わる。同年9月にはカリフオルニアで教鞭を執るため再渡米した。同地での活躍にも関わらず病に倒れ、1957年3月に客死(享年50)。

【本展のみどころ】

1950年代、日本美再発見
1950年5月、連合国軍による占領末期の東京でイサム・ノグチと長谷川三郎は出会いました。「古い東洋と新しい西洋」を結び付けようとしていたふたりはすぐさま意気投合し、日本美の本質を見極めるべく、京都、大阪、奈良、伊勢を旅しました。
本展では、ふたりが出会った1950年代の作品を中心に据え、長谷川との旅のあとに制作されたノグチの陶や石の作品、長谷川の墨や拓本による絵画を通して、戦後の日本美術が進むべき道を切り拓こうとした彼らのヴィジョンに迫ります。

ノグチ、長谷川、ふたりの代表作と日本初公開作品を多数展示!
日本の国公立美術館が所蔵する長谷川の墨、版画、拓本による代表作が一堂に揃うほか、ノグチの石の代表作で、日本で制作され、アメリカで発表された後、長らく門外不出であった《庭の要素》(1958年)や、渡米後に制作された長谷川の知られざる墨画やフォトグラムなど、日本初公開作品を約40点紹介します。
絵画、彫刻、版画、写真、書など、約120点におよぶ作品を通して、ノグチと長谷川、ふたりの交友と創作の軌跡を辿ります。

※会期中、一部作品の展示替えがあります。
※イサム・ノグチ《庭の要素》(1958年)は、本展にさきがけて2018年11月後半より横浜美術館グランドギャラリーに展示される予定です。

日米共同開催。横浜会場限定作品も!
本展は、イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)と横浜美術館による共同企画展です。
出品作の大部分は横浜開催後、米国2館(ノグチ美術館[ニューヨーク]、アジア美術館[サンフランシスコ])に巡回されますが、当館ではこれまで関東地方で紹介される機会の少なかった長谷川三郎の日本の抽象美術のパイオニアとしての功績を代表する《蝶の軌跡》(1937年)をはじめとする抽象作品や写真などを独自に出品します。
また、近年公開されたノグチの《広島の死者のためのメモリアル》石膏モデル(1951-52年)、当館所蔵のノグチ作品もあわせて紹介します。

神奈川ゆかりの作家たち
ノグチは幼少期に母親と茅ケ崎に暮らし、1952年には北鎌倉にあった北大路魯山人の「田舎屋」に新妻山口淑子と暮らしながら制作に励みました。長谷川もまた、1949年より辻堂に暮らし、翌年にノグチと運命的な出会いを果たすことで、新たな抽象表現へと進んでいきました。ノグチは制作の合間を縫ってしばしば長谷川を訪ね、ともに鎌倉の円覚寺で座禅を組んだり、茅ケ崎海岸を歩いたりしながら交友を深めました。
1952年には神奈川県立鎌倉近代美術館(現・神奈川県立近代美術館)で日本の美術館におけるノグチの最初の個展が開催されました。これらは神奈川の美術史においても特筆すべきトピックといえるでしょう。

関連イベント

下記のほかにも、オープニングレクチャーや記念講演会などを予定しています。
※詳細は決まり次第、展覧会ウェブサイトにてご案内します。

■学芸員によるギャラリートーク
 日時:2019年2月1日(金)、2月15日(金)、3月15日(金)いずれも14:00~14:30
    3月2日(土)18:30~19:00
 会場:企画展展示室
 参加費:無料(事前申込不要、当日有効の本展観覧券が必要)

■ワークショップ
 「日本美とモダンの接点を求めて…展覧会鑑賞と作品制作を通じてノグチと長谷川の神髄に迫る」

 ノグチと長谷川は、「古い東洋と新しい西洋」を結びつけようとしました。本ワークショップでは、二人の交流の結果生まれた長谷川三郎の作品を取りあげ、その成り立ちを辿るとともに、長谷川が用いた拓本技法による作品制作を行ないます。
 日時:2019年2月17日(日)、24日(日)13:30~16:30
 講師:中村尚明(横浜美術館主任学芸員)、市民のアトリエエデュケーター
 会場:市民のアトリエ
 定員:15名(12歳以上、事前申込・抽選)
 参加費:6,500円(材料費込、観覧券付)
 申込方法:ウェブサイト申込みフォームまたは往復はがき
 申込締切:2019年1月28日(月)

■展覧会・ココがみどころ!

 横浜美術館のボランティアが展覧会の魅力をコンパクトに紹介します。
 日程:2019年2月以降の毎週火曜日と土曜日
 時間:いずれも11:00、13:30、14:30から15分程度
 会場:グランドギャラリー
 担当:横浜美術館ボランティア
 参加費:無料(事前申込不要)

主催・協賛・後援

主催:横浜美術館、イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)、神奈川新聞社、tvk(テレビ神奈川)
後援:アメリカ合衆国大使館
助成:テラ・アメリカ美術基金
協力:FMヨコハマ、首都高速道路株式会社、株式会社ニコン、株式会社ニコンイメージングジャパン、みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン

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