戸谷成雄 -現れる彫刻

開催概要

会期
2017年10月16日 〜 2017年11月11日
会場
武蔵野美術大学 美術館・図書館 (東京都小平市小川町1-736)
参加クリエイター
戸谷成雄
ジャンル
アート
タグ
彫刻

開催内容

このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館では、展覧会「戸谷成雄 ̶現れる彫刻」を開催します。

 彫刻家・戸谷成雄(とや しげお/ 1947年生まれ)は、「ポスト・ミニマリズム」や「もの派」といった現代美術の流れのなかで旧来の制度として解体された彫刻の再構築を試み、彫刻の本質とその可能性を提示してきました。1970年代に彫刻概念の再定義を試みたコンセプチャルな作品シリーズを発表した後、チェーンソーなどを使った木彫作品を中心に1984年から「森」シリーズ、1994年から「《境界》から」シリーズ、2000年頃から「ミニマルバロック」シリーズなどへとその試みを展開させていきました。1988年にヴェネチア・ビエンナーレに参加して以降、国際展へと発表の場を広げ、日本の現代彫刻を牽引する存在として高く評価されています。

 戸谷成雄の作品は、彫刻の定義やその構造を作品の骨組みとして提示しつつ、彼自身によって提示された概念である「表面」「境界」「関係」「影」「存在」といった問題を探究しています。このような問題系より発露する作品は、彫刻をその根源的成り立ちから考察したうえで作り出されたものだと言えます。見えるものと見えないもの、形のあるものと形のないもの、といった二つの領域のせめぎ合いのなかから、今まさに立ち現れてくる発現の瞬間を、「彫刻」としてその存在を保持しようとしています。

 本展では、戸谷成雄の彫刻を、このようなせめぎ合いのなかにあるものと捉えて、「現れる彫刻」をテーマに、近年の代表的な緊張感ある大型作品を中心に約20点を展示します。戸谷作品に伏流する彫刻への根源的な問い、彫刻の発現とその新たな可能性を探る展覧会となります。展示では、戸谷彫刻の原点となり今日まで通底する問題を内在する初個展作《POMPEII ‥ 79〈Part1〉》(1974年)を起点に、「表面」や「境界」といった戸谷が探求してきた問題と「視線」の問題が結びついた構造を示す《見られる扉Ⅱ》(1994年)や《《境界》からⅤ》(1997-98年)など、展示室全体を使い彫刻概念を装置化した大型作品を中心に展示します。さらに彫刻の成立と「影」の問題とがからまる《射影体》(2004年)、見えない領域への意識がより先鋭化されて表された《境界》からⅥ》(1998年)、《重層体Ⅰ》)(2010年)、《洞穴体III》(2010年)、《洞穴体Ⅴ》(2011年)など、「現れる彫刻」をテーマに存在感ある大型作品を展開します。

 戸谷に強い影響を与えた思想家の一人である吉本隆明は、『高村光太郎』に所載された「〈彫刻〉のわからなさ」のなかで、「像をつくることは、世界をつくることになる」と述べています。そして戸谷にとって彫刻とは、まさに世界の存在を、「現れる」というダイナミックな様相のもとに問うものであったと言えます。本展では戸谷彫刻の本質的な問題をテーマにしながら、それを作品の構造のなかに読み解き、戸谷成雄が作品のなかで思考してきた彫刻という存在を探っていきます。


見どころ

木材からチェーンソーによって彫り込まれた無数の襞が織りなす複雑で重層的な造形は、その削りくずを燃やした灰を混ぜたアクリル塗料を塗ることで、緊張感ある表情を生み出します。彫る行為によって素材である木を媒介に、そこに立ち現れるもの、その存在を示す触覚的な「表面」によって彫刻を認識あるいは成立させています。本展では、空間全体を彫刻化した大型作品を中心に展示します。彫刻の構造が概念的に示された大型彫刻は、形象化した戸谷成雄の思考の内部に入り込むような体感が可能となります。


戸谷成雄略歴

戸谷成雄(とや しげお)、彫刻家。1947年長野県に生まれる。1973年愛知県立芸術大学彫刻科卒業。1975年同大学院彫刻専攻修了。
 1974年の初個展で《POMPEII・・79》を発表、以来一貫して彫刻の原理とその構造を追求。彫刻概念の再定義を試みたコンセプチャルな作品シリーズの発表した後に、1984年から《森》シリーズ、1994年から《《境界》から》シリーズ、2000年前後頃から《ミニマルバロック》シリーズなどを展開。ポスト・ミニマリズム、もの派以降解体された「彫刻」の再構築と新たな可能性を探る。
 主な美術館での個展として1995年広島市現代美術館、2003年愛知県美術館、2006年宮崎県立美術館、2011年ヴァンジ彫刻庭園美術館ほか。シュウゴアーツやケンジタキギャラリーなど画廊での個展多数、継続的に新作を発表する。1988年「ヴェネチア・ビエンナーレ」、1990年「プライマル・スピリット 今日の造形精神」北米巡回、2000年「光州ビエンナーレ」、2012年「キエフ国際ビエンナーレ」などの国際展にも度々参加。日本の現代彫刻を代表する存在として評される。
 1988年朝倉文夫賞、1995年平櫛田中賞、2000年光州ビエンナーレアジア賞、2004年芸術選奨文部科学大臣賞、2015年中原悌二郎賞などを受賞。2009年には紫綬褒章を受章する。2006年武蔵野美術大学彫刻学科教授に着任、現在に至る

戸谷成雄  -現れる彫刻