北斎の富士 冨嶽三十六景と富嶽百景

開催概要

会期
2016年01月02日 〜 2016年02月14日
会場
広島県立美術館 (広島県広島市中区上幟町2-22)
ジャンル
アート
タグ
日本画、版画

開催内容

葛飾北斎(1760-1849)は、90歳で没するまでの約70年にわたり、常に新たな様式に挑戦し続けた画家です。北斎の名を不動にしたのは、全作品に富士をあしらい、名所絵(風景画)というジャンルが確立されたきっかけとも言われる『冨嶽三十六景』の存在です。また、その刊行後には、風景ばかりでなく故事説話も取り入れ、確かな描画力を示した『富嶽百景』を完成させています。本展では、この二大連作『冨嶽三十六景』、『富嶽百景』全148点に関連作品などを加えた159点を紹介します。北斎芸術の真骨頂をご覧ください。


 稀代の絵師・葛飾北斎(1760-1849)の代表作『冨嶽三十六景』。本シリーズでは、眺める場所や季節、天候によって見え方が多彩に変貌する富士の姿が描かれています。高層建築というものが無かった当時、江戸の至る所から見えるその泰然と屹立した富士の相貌に、人々は強い親近感を覚えていました。

 『冨嶽三十六景』のうちの1点《諸人登山(もろびととざん)》には、富士山への信仰心を持つ人々が集まり、集団で富士に登拝する「富士講」の様子が描かれていると云われています。この『冨嶽三十六景』が生まれた時代は、泰平の世が続いた江戸後期。五街道や宿場町の整備が進み、花見や名所めぐりなど、庶民はより四季折々の行楽を楽しむようになりました。江戸の町で流行したこの「富士講」も単純に信仰心だけに依るものではなく、富士への登山が行楽として楽しまれていたことを示しています。

 版元の西村永寿堂は、そうした時代の潮流も鑑みて、北斎に富士の連作を描くよう依頼。西洋から輸入されたばかりのベロ藍(=プルシアンブルー)という顔料を用いることで、清々しい青色が印象的な『冨嶽三十六景』という名作が生まれました。
他方、錦絵である「三十六景」の完成後に冊子本として制作された『富嶽百景』では、墨の濃淡を見事に使い分け、富士誕生の神話的場面から始まり、花鳥画から故事人物画まで、様々な趣向をこらした富士の姿が表現されています。

 なお、北斎は若い頃から高い評価を得ていたにも関わらず、『富嶽百景』の初編跋文(ばつぶん)のなかで自作について「七十年前画く所(=70歳以前に描いたもの)は実に取に足ものなし」と述べています。本展では、『冨嶽三十六景』と『富嶽百景』という、齢70を越えた円熟期の北斎による二大連作を一挙まとめて展示するという珍しい趣向となっています。唯一無二の北斎の不二、ぜひその眼でご覧ください。

北斎の富士 冨嶽三十六景と富嶽百景