鴻池朋子展 「隱れマウンテン 逆登り」
会期: 2011-03-09 - 2011-04-09
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
トークイベント
レセプションパーティー
平面
開催内容
闇を掘り 地中の底に 山を見るやも
鴻池朋子展「隱れマウンテン逆登り」
『私は一番いいたいことをいつも隱している。 芸術はいつも言葉で語れないものを、その背後に隱している。 しかし今日も観客は作品の前に立ち、描かれた山を眺め、あの山の向こうには何があるのだろうかと想いを馳せる。 しかし作品と観客の間に立ちはだかる深い深いクレバスに、ただ一つ架けることのできる橋があるとすれば、それは作家の言葉でもなく、誰かの解説でもなくて、それは観客という見る人の体験によってのみ培った、そして、粘り強い直感力に裏づけされた、たったひとつの想像力なのだ。 隱れマウンテンの頂上は常に雲に覆われている。 そして今日も観客の孤独な想像力は 見えない山頂を目指し ひたすら登り続けるのである』
これは2008年春、鴻池がかつて中目黒にあったミヅマアートギャラリーが入る古いビルで行った個展「隱れマウンテン&ザ・ロッジ」のステイトメントの一部である。作品を道しるべとして、ビル入口から5階の屋上まで観客の想像力を挑発し、観客(見る人)という旅人を見えない山頂、異界へと"登山"させた独特な展覧会である。
そして下記は、今回の個展のために作家から新たに送られてきたテキストからの抜粋である。「隱れマウンテン 逆登り」というタイトルの類似から、過去の展覧会と何らかの関係を持つものと想定されるが、現時点でその内容について作家からは何も語られず、制作も非公開で進められている。
見る人よ 何を見ている 目の前に 見えるものがあるからといって それが見る ではない それは ただ目に映る反映にすぎない 見る とは 外界との交渉であり 対象に参入し 霊的な交通をする方法である 見ることによって 対象は発見され 自然はざわめきたつ そして 見ることができて ようやく人は つくることをはじめた 見る人よ 喚起せよ 本来さらし場であったはずの展覧会場は 今日 絵を見せても 首はさらされず 作者を見えない貴賓席に擁護し 最終的に批判を免れる構造をつくりだしている そういった芸術の卑怯を 唯一あっけらかんと指摘できるのは 描く人ではなく 観客という見る人である 純粋な批判に対象をさらすことができるのは その時代 その日常を 淡々と生き抜く観客だけ 見る人よ 喚起せよ 見る人は 作り手の意図を超え 見るべきものを見つけだし 今まで誰も気づかなかった水脈を探りあて 荒野さえ変化させる 見る人よ これ以上 自己表現という数々の私小説モノローグを続けさせてはだめ 芸術はあくまでもダイアログでなければならない
以上、全テキストと作品内容については、今後その詳細を明らかにしてゆく予定である。