井口通太郎展
開催概要
開催内容
精神的な深みの強さ
地色の赤に薄く溶いたアイボリーブラックを何度も塗り返し重ねていく・・・・・・と、ある瞬間、赤が消えてふっと黒くなる。
黒の禍々しさが後退して、そこにふっくらと上品な黒が生まれる。その黒のフォルムはあきらかに巨大な臀部や豊満な乳房をイメージさせる。黒の淵に見え隠れする赤は、いささかストイックなエロチックと女性の生命のエネルギーを垣間見せている。
マザー・コンプレックスを起因とする「Black series」は、血脈のおぞましさ、性の生臭さ、女という不可解、加えて子宮回帰の願望等々を孕みながら、長い道程の末、情緒も肉体も超えて、いま精神的な深みの強さを獲得しようとしている。
新作では、フォルムの存在と空間の関わりに如何なる明晰な答えを展開して見せるか、一徹者の尽きざる挑戦が楽しみだ。
美術評論家 中野 中