百瀬恒彦写真展―無色有情
開催概要
開催内容
企画=荒川陽子(アラカワアートオフィス)
百瀬恒彦は、1947年長野県に生まれ、武蔵野美術大学商業デザイン科を卒業。在学中から現在に至るまで世界各地を旅行し、風景でありながら人間、生活に重きを置いた写真を撮り続けています。
これまでにマザー・テレサなど各界著名人の肖像写真や「刺青」をテーマに撮り、和紙にモノクロプリントして日本画の顔料で着彩した作品を制作するなど、独自の写真表現の世界を追及、展開してまいりました。
今回発表するのは、1990年に百瀬がモロッコを旅し、城壁の街フェズで撮ったモノクロ写真をバライタプリントした約20点の作品です。それらの写真10点をセットにしたポートフォリオ『無色有情』(限定部数12部)を刊行します。
古都フェズの旧市街は城壁に囲まれ、街には何百年も前からの生活が残っていました。そしてその街並や光、音、匂いのすべてが百瀬を強く惹きつけたのでした。「フェズの光景にピンとくるものがあった。それまでいろんな旅行をして異文化を見せてもらっていたんだけれど、その少し前からかな、世界じゅうが画一化されていくなかで何百年前からの生活が残っていた。それもいつなくなるかわからないと思って、記録のつもりで写真を撮った」
デジタルカメラが主流となっている現代、あえて昔と同じように暗室で印画紙にモノクロフィルムを焼きつける究極の手作業を行い百瀬が伝えようとしているのは、変わりゆく時代と風景の中で残すべき何か、残したい何か、残っているはずの大切な何か。
砂漠のまん中に超高層ビルが建ち並ぶ今、百瀬が選んだのは、城壁に守られたあの街のあの時。地球グローバル化という渦の勢いは止まりませんが、風景と人間の営みの中に流れ、20数年たった今もきっと変わらずそこにあるものを、写真を通して感じ思い出していただけることと思います。