西村多美子写真展―憧景
開催概要
開催内容
1970年前後から、日本各地の風土と人々を撮影してきた西村多美子のヴィンテージプリントによる展覧会を開催します。 東京に生まれた西村は、幼少期からいつか行ってみたいと憧れを抱いていた北海道、東北、北陸へ季節を変えて幾度となく一人旅へ出ています。70年代前半の地方の土地の持つ独特な個性に新鮮さをおぼえ、その風土と人々に魅了され、シャッターを切っています。
本展は二会場同時開催となります。
第一会場のZEN FOTO GALLERYでは〈しきしま〉シリーズを、第二会場のときの忘れものでは〈憧景〉シリーズをご覧いただきます。
ときの忘れもので発表する『憧景』シリーズの全32点の写真は、すべて作家のもとに保管されていた撮影当時に焼かれたヴィンテージプリントです。
出品リストに記載した部数(1部または2部)は、当時制作されたヴィンテージの部数です。
これとは別に、後年に作家が焼いた「モダンプリント」があります。
展示しているヴィンテージプリントの価格は以下のとおりです(すべてシート、税込み)。
E-mail. info@tokinowasuremono.com
・全紙サイズ(出品番号1~12番) 126,000円 ※額代別
・四切サイズ(出品番号13~26番) 63,000円 ※額代別
・六切サイズ(出品番号27~32番) 42,000円 ※額代別
「憧景」 西村多美子
卒業後はアルバイトをしたり、雑誌の仕事をして原稿料が入ると、旅に出かけた。北国が圧倒的に多い。幼少時に父が出張先から送ってくれた絵葉書が数十枚あり、それを畳に並べてながめるのが好きだった。雪国の風景や祭りの様子は何度見ても飽きなかった。昭和29年消印の仙台の七夕の絵葉書だけが残っていて、他は今では散逸してしまった。
幼心にいつか行ってみたいと、憧れを持っていたせいで、北海道、東北、北陸へは季節を変え、何度も行った。海が好きで内陸へ行っても、必ず海に出るコースを考えた。海と山のある町、函館や小樽、北国でなくても神戸や横浜も好きな町だった。
'72年に函館を起点にして、八戸、久慈、盛岡、田老、宮古、釜石、気仙沼と三陸を南下した。田老では防潮堤に上り、海側と背後の家々をかわるがわる眺めた記憶がある。津波が防潮堤を越え、家々を破壊してしまう事など、想像さえできなかった。この旅は日数に拘束されず、気ままに歩いた。どこも陽が燦々とふりそそぎ、コントラストの強い写真が残っている。
一方、'75年の三陸は、秋雨前線の真っ只中で、濡れそぼって歩いた記憶が強い。このときは初めての個展「港町」の撮影で、気仙沼、大船渡、盛、釜石と北上し、遠野へも足を伸ばした。気仙沼・小鯖の船着場で遊ぶ少女たちの写真を展覧会のDMにした。つかの間の晴れ間に、子供たちが外に出て遊んでいた姿が目に浮かぶ。船着場で出会った少女たちは今、どうしているのだろうか。40代の女性になっているはずだ。
70年代前半、あの頃はどこへ行っても、その土地の持つ独特な個性が感じられて新鮮だった。若さのせいもあるだろうが、新幹線は東海道だけだったし、地方は都市に塗れることなく、確たる存在感を持っていたと思う。
(西村多美子写真集『憧景』より抜粋)