フランシス・アリス展 GIBRALTAR FOCUS ジブラルタル海峡編
会期: 2013-06-29 - 2013-09-08
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
デッサン・ドローイング
映像・映画
写真
立体
平面
開催内容
フランシス・アリスのこれまでの足跡を概観した「MEXICO SURVEY メキシコ編」(2013年4月6日~6月9日)に引き続き、6月29日(土)から開催する「GIBRALTAR FOCUS ジブラルタル海峡編」では、ジブラルタル海峡によって隔てられたヨーロッパとアフリカ、二つの大陸を海を渡るこどもたちの列によってつなぐ、というプロジェクトを紹介します。本作は、アリスにとって近年最大のプロジェクトでありながらほとんど公開される機会のなかった話題作です。
近年のフランシス・アリスの問題意識を色濃く映し出す本プロジェクトを、映像、絵画、立体作品、写真、ドローイング等、多様な媒体を通してその全容を紹介します。
「この海峡は、現代がかかえている矛盾をみせるのに格好の場所と思われた。グローバル経済を推進しながら、一方で大陸をまたぐグローバルな人の流れを制限しなければならないという矛盾をね。」
「人の橋は完全じゃない。欠落をうめるのは見る者のイマジネーションだ。イマジネーションの作用だけが、行為をアートとし、詩を生み出し、瞬間に意味をもたせるんだ。」
―フランシス・アリス
メキシコ在住のアーティスト、フランシス・アリス(1959-)は、都市の中を歩きまわり、そこから見えてくる日常に潜む問題をとらえて、作家が街なかで行うアクションから数百人の参加者をともなった大規模なものまで、さまざまなプロジェクトを世界各地で行ってきました。そうした行為は、記録映像や写真、物語性をもった魅力的な絵画、ドローイングまで多様な形で展開していきます。
アリスは社会的、政治的問題をテーマとして扱いながらも、直接的ではなく、詩的で物語性に満ちた作品として提示します。たとえ特定地域の問題さえも、地域や文化を超えて誰もが共有できる普遍的な課題へと導くその卓越した表現力は、国際的に高く評価されてきました。
日本初個展となる本展は、二期にわたって初期作品から近作までアリス作品の全貌を明らかにするものです。「MEXICO SURVEY メキシコ編」(4/6-6/9)では、メキシコで制作した作品を中心に、アリスのこれまでの活動を概観しましたが、今回の「GIBRALTAR FOUCUS ジブルタル海峡編」では、作家にとって近年最大のプロジェクトである《川に着く前に橋を渡るな》を紹介します。
本プロジェクトは、2008年にヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡で実施されました。ジブラルタル海峡は、スペインとモロッコの間にわたる海峡です(下図参照)。もっとも狭いところでは幅14キロで、天気のいい日には対岸をはっきりと望むことができます。
ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸が近接する地理的条件から、これまで多くの人々がこの海峡を渡ってアフリカからヨーロッパへ密入国を試みてきましたが、その荒波は簡易なボートで渡ろうとする移民たちの行く手を幾度も阻んできました。このヨーロッパとアフリカを二つの世界に分断する象徴であるジブラルタル海峡で、アリスはスペインとモロッコに住むこどもたちと共に、両大陸に想像上の一つの橋を架けるプロジェクトを実施しました。
サンダルに帆を立てて作ったおもちゃの舟を手に持ったこどもたちが、スペインとモロッコ、それぞれの海岸から一列になって対岸に向かって泳いでいく。そして、水平線の彼方でこどもたちは出会い、一つの橋が立ち現れるというものでした。
グローバル化社会においてモノや情報が自由に国境を越えて行き交う一方で、人の移動はこれまで以上に管理されていく傾向にあります。この現代社会が抱える矛盾にアリスは疑問を投げかけます。
私たち日本人にとっても移民に対する対応はますます考えていかなくてはならない課題であり、ましてや、周辺諸国との領土問題が絶えない中で、二つの異なる文化に一本の橋を繋ぎ、対話の地平を切り開く本作品は非常に示唆に富んだものになるでしょう。