谷口 朋栄 展 「花が咲うように、どこまでも」
会期: 2013-04-26 - 2013-05-08
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
平面
開催内容
2013年4月26日(金)から5月8日(水)までの12日間、gallery nearにて、谷口 朋栄 展「花が咲うように、どこまでも」を開催いたします。
主に水彩やアクリルを用い、画面に溶け込むような淡く儚い質感で女性をモチーフに描く谷口は、特に近年、多くの公募展や、グループ展に積極的に出展し、様々な賞を受賞、また、個展も日本各所で頻繁に開催するなど、精力的に活動し、着実にその知名度を上げてまいりました。2012年には、New City Art Fair(台北)や神戸アートマルシェ(神戸)といった国内外のアートフェアにも出展するなど、各方面での評価は高く、今後を期待される作家であります。
谷口は、「女性」に内包される一般的なイメージを情緒的に解釈し、それらを「詩的な感情」として描くことをテーマに表現しており、使用素材を活かした「ぼかし」や「にじみ」を巧みに取り入れることで、その画面に託された「詩的な感情」は更に助長され、より幻想的で妖しい「女性」が浮かび上がります。じっとこちらを見つめる女性の瞳は、仏像の多くに見られる「半眼」のようにも見え、谷口が描く女性と対峙する時、その眼差しに全てを見透かされているような感覚さえ覚えます。「表情の部分に一瞬の感情の揺らぎを留められるよう制作している。」という作家自身の言葉にあるように、画面に表れる女性は、時に妖艶な大人の女性を映し、また、多感な思春期を過ごす少女の一瞬を切り取ったようでもあり、その確かな技術によって描かれる表情は、鑑賞者の心象によっても様々な表情を見せ始めます。情緒的に描くことで憂いを含んだようにも見える表情は、むしろ、これから如何様にも変化できる「希望」を含んだ表情として描いており、谷口が意図して表現する「詩的な感情」を、性差や年齢など関係なく感じる
ことができる画面を表出しております。
本展は、3月に東京で開催された個展「花が咲うように」(EARTH+GALLERY)で出展された作品を中心に、大作から小作品までを新たに再構成した展示となります。日本では、開花を女性の微笑みに例えたところから「咲」という字には「さく」と「わらう」という2つの意味が込められており、そのことに着目した谷口は、本展タイトル「花が咲うように、どこまでも」と、「咲く」をあえて「咲う(わらう)」としております。「儚くも力強い」といったイメージを抱きやすい「女性」と「花」を掛け合わせ、開催時期の暖かくもどこか切なく感じる空気感を表現することを本展のテーマとしております。
日本人にとって「春」という季節は、別れと出会い、不安と希望が交錯する複雑な心象をもたらしつつも、新生活や心機一転など、人生で新たな一歩を踏み出す季節であります。「これからプラスに向かっていく前段階の、どのような形にも変化していける意味を込めている。」という、谷口が女性の表情に込めた思いを、春という季節にリンクさせた本展は、よりポジティブなものとなることでしょう。画面に描かれた、これからの希望を含んだ女性の表情は、対峙する我々自身の映し鏡となり、中でも、これからまさに新しいスタートを切ろうとする者の背中を、そっと押すように「咲い」かけてくれるのではないでしょうか。
gallery near 延近 謙
[アーティストステートメント]
これまでカラーインクやアクリル絵の具等による「にじみ」や「ぼかし」によって生まれる柔らかさを用いて「女性」を描いてきた。
一般的に「女性」という型が内包するイメージとして、「妖しさ」・「耽美さ」・「儚さ」等が挙げられる。これらを再度、情緒的解釈をし直すことによって、目には見えない「詩的な感情」を目指して描いてきたのだ。描く際には、表情の部分に一瞬の感情の揺らぎを留められるよう制作している。その表情は比較的アンニュイで、どこか寂しげな表情をもつが、これらはマイナス的感情方向で描いているのではない。
どちらかといえば、これからプラスに向かっていく前段階の、これからどのような形にも変化していける意味を込めている。情緒的な面を表現する際、「女性の形」を借り描いてはいるが、「詩的な感情」を感じてもらいたいのは女性に限ったことではなく、女性男性双方に響き合う展示になればと思う。
そこで今回春に展示を行うにあたって、色々な種類の花が開花するイメージと様々な人間がこれから変化していく前段階のイメージを重ね合わせた展示にしたいと考えた。今展示において、タイトルを『花が咲うように、どこまでも』と題しているのにも、そこに起因する。
日本で「咲」という字は、開花を女性の微笑みにたとえたところから、「さく」の意に用いられたという説がある。「咲」の中には「わらう」と「さく」の二つの意味が込められており、そのふたつのイメージを儚くも力強い女性像にのせて描いていきたい。画面に溶け込む花と、凛とした眼差しをもつ表情とのコントラストを表現することで、春の暖かさと切なさを鑑賞者の心の中に響かせることを目指す。
谷口朋栄