鶴 友那 | 時の集積と追憶
会期: 2013-01-12 - 2013-02-09
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
油彩画
開催内容
鶴友那(つる・ゆうな)は1987年広島県生まれ、2012年佐賀大学大学院を修了、在学中は小木曽誠氏に師事し、その緻密な描画スキルを受け継ぎつつ、女性的な繊細さで儚く虚ろな世界を紡ぎ出し、多くの人の支持を得ました。
今展では大正という時代に着目し、文化の爛熟期の後にやってくる関東大震災は今の日本の状況に酷似し、同時に思想的な弾圧を伴いながらいずれ戦争への道を歩み始める状況は、最近の日中関係の中で不穏な空気さえ感じて、多くの類似点を見ることが出来ます。
そうした大正期の様式と女性を描くことで現代を見つめ直し、現代という多様な社会とただならぬ世界で、その生を透明感のある憂いを含んだ女性像として描き、高い写実性で表現されるさまざまなモチーフはそれぞれが瑞々しく静謐で、観る者の心に寄り添い、時代を予兆的に描き出しています。
私たちのギャラリーでは、2011年の鶴井美和との二人展に続く展示となり、 新作油彩16~17点展示する予定です。内省的で静寂な世界をご堪能いただければ幸いです。
遠い過去は現代を生きる私たちにとって歴史の一断片ではありますが、私たちは古い時代に思いを馳せることができます。それは、現在が時間の積み重なりとして過去と繋がったものであり、そこに通ずるものが流れているからでしょう。
大正期は、社会、経済、文化的に大いに発展した一方で、震災や恐慌、社会運動への弾圧などの負の局面も併せ持ち、時代がもたらした光と影が顕著に表れた時代です。さらに、西洋文化の流入は和洋折衷な華々しくも混沌とした新しい風潮を生みました。私はそこに、インターネットなど世界規模のコミュニケーションツールの普及により、多種多様な価値観が入り交じる現代と通ずる部分を感じます。
今展覧会は、以前から扱っている女性や花、植物、動物などをモチーフに、大正期の日本をテーマに描きました。遠い過去の光と影に現代を生きる私たちの姿を重ね合わせながら、様々なものを観て頂けたら幸いです。
2012 年 鶴友那