松本良太 展
会期: 2012-12-03 - 2012-12-08
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
平面
開催内容
[作家コメント]
直島のガソリンスタンドでの一場面。トラックの窓越しに雪が舞っていて、その日の空は厚く、重く、いかにも雪が降りそうだったのと、以前ガソリンスタンドの社長の息子と昔の直島は雪がよく降り、つららが張ったことについて話していたのが、ふと思いうかんだものだから、すっかりその気になって「初雪だ!」と言ったら、それは風に舞う葦の綿帽子だった。珍しく張り上げた声が冬の空に吸い込まれていったのだった。「そういえば、葦はイネ科の植物だから今頃種をつけるんだったっけかな」とぼんやりと考えながら、満タンになった灯油を荷台に載せ家路についた。
もし、直島が積雪5メートルでガソリンスタンドが跡形も無く雪で埋め尽くされ、一面白銀の世界になり、1年後ふと思い出して、そのできごとを伝えようと思っても、明日には雪はとけてしまうことがわかっていて、月並みな表現しか出てこないと思う。僕にとってはガソリンスタンドでの一瞬で平凡なできごとの方が大切で、同じような平凡なできごとと一緒に思い出しては反芻している。例えば世の中に無数にある平凡な事象を「できごと」とするならば、無数にあるできごとは空間中に充満していて、壁も人も音速で通り抜けることができて、もしかしたらあの時、冬の厚く重い空を支えていたのかもしれない。
なんてことを思ってしまった。