枝史織展 眩暈の街-衣食住・委嘱獣・異色従-

開催概要

会期
2012年09月28日 〜 2012年10月13日
会場
Fuma Contemporary Tokyo | Bunkyo Art (東京都中央区入船1-3-9 長崎ビル9F)
参加クリエイター
枝史織
ジャンル
アート
タグ
レセプションパーティー、平面

開催内容

画像で見るより実物を見るほうがうんといい絵 ー 枝史織の個展に寄せて
                                       山下裕二

私が枝史織の作品を初めて見たのは、2011年6月4日、茅場町にあるGallery Suchiでのこと。まったく未知の作家で、案内ハガキの画像を見て、さほど期待したわけではなかった。だが、その日たまたま時間があったので、ギャラリーに立ち寄ったのだった。私の予見は、いい意味で大きく裏切られることとなる。絵の中のごく小さな人物は、きっとすさまじいデッサンの積み重ねによって煮詰められたものだろうし、驚くほど平滑なテクスチャーは、長い時間をかけた試行錯誤によって産み出されたものだろうと思った。ようするに、画像で見ただけではわからない、実物のほうがうんといい絵だと思ったのだった。絵には二種類ある。画像で見るほうがいい絵と、実物のほうがいい絵と。画像で見て、一見リアルに見えるものは、得てして実物を見てがっかりすることが多くて、私はそういう作家からの「売り込み」に辟易していたりもする。枝史織の作品は明らかに後者の代表格で、豆粒のような人物がなんだかよくわからない舞台装置の中に描かれた、ほとんどモノクロームの画面は、画像ではけっして味わえないタイプの絵だと思う。私は前回の個展を見た直後、『美術の窓』 誌上の連載「山下裕二の今月の隠し球」(2011年11、12月号)に「枝史織 想念を磨き上げたテクスチャー」としてとりあげた。
詳しくはそのバックナンバーを参照してほしいが、それから約一年が経って、枝史織は二度目の個展を開催することになった。今回は場所を変えて、入船のFuma Contemporary Tokyoでの開催となるという。このギャラリーのスペースはかなり広いから、彼女は渾身の大作を展示したいと思って場所を選んだのだろう。さて、新作はどうなるんだろうか、と思っていたら、さきほど、メールで画像が何点か送られてきた。「道」「公園」「露天風呂」「オープンカフェ」と題されている。他にもさらに何点かの新作があるという。そしてさらに、これらの作品が出来上がる過程で描いた夥しい数のエスキースも展示するという。パソコンのモニターで画像を見ながら、さらに熟成度が増した作品なんだろうと想像したが、メールの末尾には、「あまりにも意味不明なので、人様が見るという前提でもう少し描き直します」と記してあった。いや、意味不明でもいいじゃないか。画像で見るより実物を見るほうがうんといい絵なんだから、どうせ画像では伝わらないぞ、と返信した。この二度目の個展で、さらに磨き上げられた彼女の作品の実物と対面することを楽しみにしている。

枝史織展 眩暈の街-衣食住・委嘱獣・異色従-