[第一展示室]シャガールとマティス、 そしてテリアード/[第 2 展示室および彫刻室]―漂流と原形―江口 週 展
会期: 2012-09-22 - 2012-12-24
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
切絵・モビール
絵本
立体
彫刻
平面
近代アート
版画
開催内容
[第1展示室]
シャガールとマティス、そしてテリアード 20 世紀フランス版画と出版
20世紀を代表するフランスの画家シャガールとマティスは、ともに、色彩豊かな版画の作り手としても巨匠といえる作家です。その仕事を代表する版画作品とともに、彼らの版画出版を大きく支えた美術出版・編集者テリアードの仕事にも光を当てる展覧会です。
20世紀は社会の階級や生活スタイルが大きく変わり、「豊かな生活」を求める人が増えた時代でもあります。この変化を受けて、多くの人が美術作品を所有したいと望むようになります。そのニーズに応えるように、かつてないほどの隆盛を誇ったのが、多色刷りで質の高い版画集の出版でした。
1点ものの絵画を持つのと同じような気持ちで、人々が豪華な版画集を手に取るようになったのです。巨匠といわれる作家たちが、こぞって版画集の出版を行い、それが更に版画集の質を高めていきました。
この流れを最も強く支えたのが、美術本の出版を行い、編集者でもあったギリシア生まれの テリアード(本名 エフストラティオス・エレフテリアーデス 1897-1983)でした。シャガール、マティス、ジャコメッティ、ミロ、ピカソ、ルオーなど、巨匠といわれる作家たちと多くの仕事を一緒に手掛け、彼らの版画集や挿絵本の出版はもちろん、自らが編集する雑誌『ヴェルヴ』にも、彼らの作品を高品質のリトグラフ図版で紹介しました。テリアードが手掛けた美術本は、図版の再現性の質が非常に高く、作家との試行錯誤の精度も抜きん出ていました。その結果、単なる版画とも印刷ともつかない、高品質の美術本が生まれていったのです。
色彩豊かな絵画の巨匠として知られるシャガールやマティスも、テリアードの後押しによって豪華な版画集や本を出版した作家です。マルク・シャガール(1887-1985)は、ロシアに生まれパリで活躍しました。油彩・版画・壁画・ステンドグラスなど、シャガールの仕事は多岐にわたりますが、特に版画には 2000点を超える作品を残しており、自らも版画が重要なジャンルであったと語っています。シャガールの版画の代表作《ダフニスとクロエ》と《サーカス》は、どちらもテリアードによる出版です。色の再現にこだわったシャガールは、1 つの作品に 20ものリトグラフ版を用いました。アンリ・マティス(1869-1954)も、フランスで活躍した作家で、油彩・版画・ステンドグラス・切り紙絵と、多彩な仕事があります。一面に色を塗った紙を切り抜いた切り紙絵で原画を制作した《ジャズ》は、マティスにとって新境地を開いた作品でした。出版に際して印刷の再現性にこだわったマティスは、その印刷技法をテリアードと試行しつづけ、最終的にテリアードが提案したステンシル版で出版するまでに 3 年の時間を要しています。
[第2展示室/彫刻室]
―漂流と原形― 江口 週 展 彫刻/デッサン
クスなどを素材にした量塊感に溢れる木彫で知られる江口週(1932-)は、京都に生まれ、1956年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業後、1960年代初頭から注目されはじめました。その頃から現在まで、素材に隠された彫刻のかたちを、構築的空間への強靭な意志によって抽出し、簡潔でありながら複合的で豊かな彫刻世界を繰り広げています。一方、そのデッサンは、彫刻家が制作の初期段階で抱いた感情や着想を瞬間的にとどめており、その思考や創造の過程、あるいは完成した彫刻だけでは分からない作者の意図を見てとることができます。
本展では、1960年代に制作された作品と最新作を併せて展示し、そのデッサンと彫刻を通して、抽象彫刻の第一人者としての仕事の展開を再検証します。江口週の原初的で根源的な高いレベルの造形感覚をご堪能いただける展覧会です。旧作と新作、あるいは彫刻とデッサン、それぞれの作品世界が共鳴し、わたしたちに彫刻を見ることの歓びやゆっくりと作品空間と対話する貴重な時間をもたらしてくれることでしょう。